アン・トゥ・タン 磯部政利さん  

   


スパンダワー、サンライズ、ダークチェリーのデニッシュ・・・、商品を見てわかりましたか?そう、実はアンデルセンで修業をしていたんですよ。

実家が呉服屋で、自分も何か商売をしたいとずっと思っていました。初めは築地で魚屋をやっていたんです。でも客と1対1で向き合うでしょう?そういう接客が苦手で・・・。うまく顧客がつきませんでした。

パン屋は昔からなんとなくいいなあと思っていたのと、向き合うのが粉だから自分には向いているかもしれないと、思い立ったらいきなりリテイルベーカリーへ修業に出ていました。2件で7年働いたあと、青山アンデルセンへ入りました。児嶋さんをご存知ですか、あの方にはずいぶんお世話になりました。ここでは全てのポジションをまわり、結局5年間働きました。

その後友達と用賀で共同経営の店を1年ほどやり、現在に至ります。

この近くは昔はパン屋がたくさんありましたが、最近少なくなりましたね。
年齢層の広い地域なので、ハード系ばかりではだめなんですよ。
お年寄りにも食べやすい柔らかいパンをたくさん置くようにしています。
おかげで、今までパンは食べなかったお年寄りが「ここのがきっかけでパンも食べるようになった」と言ってくださったりもします。


オーガニックレーズンで起こした天然酵母のパンには、国産のはるゆたかブレンドを使います。この種は通常と違って毎回起こすので、酸味がでずに柔らかく仕上がるんです。それ以外の酵母には外麦を使っています。もっと酸味の強いパンも作ってほしいとリクエストはあるんですが、なかなか手がまわらなくて。

2年に1度、ノルマンディのサン・ローという町のパン屋へ行くんですが、そこは石臼・石窯と昔ながらの方法でパンを焼くんです。うちの石臼は臼とふるいの部分が、そこのミニ版なんです。
一度に挽ける量は限られていますが、天然酵母のパンの場合、ライ麦や全粒粉、そしてこの石臼挽きの粉を混ぜるとボリュームが増すんですよ。イーストの場合は逆ですが。



今開発中なのは、だったん蕎麦を入れた天然酵母のパン。普通の蕎麦よりルチンの量が多く健康にいいと聞いて。上についているのがだったん蕎麦の実です。まだ試作段階なんですがね。その他、あんぱん、クリームパン、サンライズ(メロンパン)には酒種と黒糖を使っています。

パンのほか、ブラウンスイス牛の牛乳やエシレバター、ジャムやパテの缶詰なども扱っています。エシレバターは安くたくさん手に入ったときはブリオッシュに入れたりもするんですよ。おいしいものはやっぱりよく味わうと全然違いますよね。

100円の柔らかいコッペパン、惣菜パンがよく売れるんですが、そういうお客さんにも食事パンのおいしさをわかってもらいですね。

取材日2003年6月5日


アントゥタン
東京都品川区東大井5-2-8
TEL 03-5479-1748

磯部さんの秘密