パティスリー・トゥーストゥース
山本 和彦(ヤマモト カズヒコ)氏



'65年愛媛県生まれ。
高校卒業後、レストランに勤務。
その後、淡路島のホテルで仏料理など担当。
途中、トロワグロで1年間の修業を経て再度、
ホテルで製菓の担当になり、4年間勤務。
そして現在の店のスタッフになる。



神戸元町に山本さんの働くパティスリー・トゥーストゥースはあります。オープンして約一年という新しいお菓子屋さんはオレンジ色と樹の暖かみを活かしたおしゃれな雰囲気です。店内に入るとかわいくラッピングされた小さな焼き菓子や紅茶などが店いっぱいに並んでいます。中央にあるショウケースを覗くと細長くカットされた数種のタルト、粉糖のかかったガトーショコラなどシンプルなケーキが多く、ショウケースの上にはクロワッサンなどのパンもあります。お店の2階はカフェになっていてたくさんのお客さんで賑わっていました。


そんなおしゃれなお店で働く山本さんは意外にもとてもシャイで素朴な方でした。神戸にはこちらのお店で働くためにいらしたそうで「えらいとこに来てしもうた」というのが正直な感想だそうです。

「神戸というお菓子激戦区で新しいお店のシェフとしての苦労は多いけれども、他の店と同じにはならない、まだ他がやっていないことを見つけてトゥーストゥースだけのオリジナルを作っていきたい」と、お話ししてくださいました。たとえばご自身お薦めのタルト。カットの仕方、シンプルな見た目、そしてしっかりと焼き込まれた生地には山本さんんのこだわりが感じられます。

「しっかりと焼いた粉の美味しさ、焼けたお菓子の美味しさは見た目はぶこつだが、やっぱり飽きない。
人にプレゼントするためじゃなくて自分で食べるため、また毎日食べれるものとしてのお菓子作り」が山本さんのトゥーストゥースのお菓子に対するこだわりだそうです。デコレーションには確かに凝ったものはありませんがラッピングのデザインはとてもおしゃれでシンプルな中にもセンスを感じました。その辺の工夫も女性客のこころを掴んでいるのかもしれません。こういったパッケージのデザインはスタッフのみんなでアイディアを出し合って考えたのだそうです。



今までのご自身を「運が良かっただけ。」と謙虚な山本さん。「他のシェフの方と比べたら自分の作り方は独学的なところがたくさんある。」とも語ってくださいました。取材の間、つねに言葉少なく物静かな山本さんでしたが、取材を終え一旦工房に戻るとその穏やかな表情は一変し真剣な面持ちでケーキ作りに取り掛かっていらっしゃいました。

これからもこの工房から山本さん独自のアイディアで作り出された新しいお菓子がたくさん生まれることでしょう。とても楽しみです

取材日 1998年