千葉北部酪農農業協同組合

信川 幸之助 さん

うちの組合では、まず乳質を安定させるため、各酪農家のエサのベースを組合指定のものにしてもらっています。輸入の穀物が入りますが、これは遺伝子組み替えをしていないもの。わざわざこのエサにすることで、各農家の方々には年間100万円近い負担にもなっているのですが、これを提案したとき、すべての農家の方に承諾をいただきました。安全な牛乳を作るのにいかに組合員が積極的かがわかりますよね。その他、酪農家の方々が自分で牧草を乳酸発酵させたエサなどを加えているところもあります。
組合員のやりがいとやる気は、乳質が良くなるほどに出る奨励金にも理由があります。まずある一定の基準をクリアし、その先でさらに細菌数が少ないなど良質の乳を生産するところに、出すのが奨励金。うちで作っている牛乳は、75度15秒という『高温短時間殺菌』をした牛乳だけです。もともとこの殺菌法は63度30分を改善したもので、実際飲んでみて一番生乳にちかいなというのが私の感想なのですが、こうした殺菌法で安全に飲める牛乳を作るには、なにより生乳の時点での質の良さが大切なんです。

9台のタンクで62軒の酪農家を毎日回っていますが、新鮮さも牛乳の美味しさ。早いと朝の5時に集められた生乳が工場に届いて、検査をして6時ごろ受け入れ。製造に入り、午前中には製品化されます。当日には出荷できない決まりになっているので、出荷・販売は翌日。でも他のメーカーさんよりも新鮮なものが学校、病院などを中心に皆さんの手元に届きますよ。都内のデパートにも週に何度か入れていますが、今までそういう販売方法をしてこなかったので、市販のルート開拓は今後の課題ですね。

ノンホモのビン牛乳を始めたのは97年から。他の牛乳との差別化を目的としたもので、とにかく最高のものです。一番乳質のいい酪農家を回って集めた生乳だけを使っていて、値段は確かに通常のうちで出しているものより格段に高い。牛乳って、安いものだという認識が皆さんの中に出来上がってしまっていますよね。スーパーなどでは大手メーカーのものが「どうしてこんなに安く出せるの?」と私達でもびっくりしてしまうくらいの値段で売られていることがあります。ですから、消費者の方々には、「どうしてこんなに値段が違うの?」と言われることもあります。でも、ノンホモならではの“クリームライン”がしっかり出て、さらっとしているのに甘みがあって、飲んでいただければわかる美味しさなんです。

とにかく健康な牛から採った安全で美味しい牛乳を、というのが願いです。生産者の顔が見える牛乳から、牛の顔が見える牛乳、そんな牛乳を目指しています。コンピュータ管理で牛一頭一頭の健康状態がわかるなどという進んだシステムを導入している農家もあります。工場のほうも、HACCPという、この規模の工場ではなかなかとることのない高基準の衛生基準をクリアし、認定されています。月3回の抜き打ち検査など、酪農家の方々にはきつい条件もありますが、最初に述べたようにやりがいを感じていただいているので、今後も乳質がどんどん上がるのでは・・・と工場でも期待しています。











HACCP
Hazard Analysis and Critical Controlは日本語で危害分析・重要管理点と訳されている食品の安全性を高める新しい考え方の食品衛生管理システムです。今までは主に最終製品の抜き取り検査(微生物の培養検査)が中心であったのを、HACCP方式では材料の入荷、加工、出荷の全工程において、あらかじめ決められた危害を防止するための重要管理事項を継続的に監視・記録して、異常が認められるとすぐに対策をとるので不良製品の出荷を未然に防ぐことができます。