デリアさんの
「教えておじさん」
コーナー
−砂糖・バター・生クリーム編−

私の場合、お菓子やパンを作りたくなるのっていつも突然。作り始めてから材料がなかったなんてことが判明して、スーパーに走ったりとか。
でも最近材料、例えば、お砂糖にしてもいろんな種類があってよくわかんないのよね。
ちょっとパナおじさんに聞いてみよっ。


- sugar -
「おじさん、まずはお砂糖。これはお菓子作りに欠かせない素材だけど、何からできているの?」
「主に砂糖きびと砂糖大根を原料として製造されているんだよ。この二種類の原料から製造される砂糖はショ糖という甘味成分を主成分としていて、複雑な製造(精製)過程やショ糖の純度の違いからいろいろな種類の砂糖ができるんだ。」
「どんなお砂糖があるのかしら。」
「お菓子に使われる主な砂糖を表にしてみたよ。」

グラニュー糖
純白でサラサラとした結晶状。クセがなく、卵・バターなど他の素材の味を妨げず、扱いやすい。オールマイティに使われる。
極微粒グラニュー糖
普通のグラニュー糖の1/6という粒子で、水やバターなどに溶けやすい利点がある。バターケーキやクッキーなどに適。
上白糖
純白で粒子のキメが細かく、しっとりとして甘味にコクがある。風味の濃い焼き菓子に向く。吸湿性が高いので、生地がしっとりして濃い焼き色に仕上げることができる。
フロストシュガー
顆粒状の砂糖のこと。固まりにくく水に溶けやすいのが特徴。
粉糖
グラニュー糖をすり潰ぶしてパウダー状にしたもの。湿気で固まるのを防ぐため、コーンスターチを加えたものもある。溶けやすく混ざりやすいのでアイシングや水分の少ない生地に使う。また飾り用、生クリームを泡立てるときにも適している。
三温糖
上白糖とほぼ同じ製造過程で作られているが、精製度が低く、灰分などが多く含まれた薄茶色の砂糖。強い甘味と風味を生かし、カントリータイプのお菓子作りに。
カソナード
砂糖きびの搾り汁を煮詰めてショ糖を結晶化させた褐色の粗糖。あまり精製していないので特有の風味が残っている。リンゴを煮たり、カラメリゼなどに。
ブラウンシュガー
茶褐色でしっとり感がある。ミネラルが豊富で、強い甘みとコクがある。個性的な味を出したいときに使われる。
黒砂糖
サトウキビから作られる精製度の低い砂糖。コクのある甘みと独特の香ばしい風味が特徴。素朴な焼き菓子に。
和三盆
手作業で作られる伝統的な砂糖。結晶がとても微粒でなめらかなので、口当たりもよく独特な風味は和菓子の材料として用いられる。




- butter -
「それから、バターについても知りたいんだけど。無塩バターと有塩バターがあるでしょ。お菓子には無塩を使うのよね。」
「そう、お菓子作りには基本的に無塩バター。有塩バターには保存性を高めるために1〜2%の塩分が含まれている。パンに塗って食べるには、適度な塩気がパンの風味を引き立てるが、お菓子作りではその塩味がじゃまになってしまうんだ。だから生地に塩味を必要とするお菓子(バターケーキ、マドレーヌ、パイなど)の場合も、無塩バターを使用し、塩は別に計量するんだ。」
「なるほど!それから発酵バターっていうのもあるわよ。」
「よく知ってるね。発酵バターはクリームの段階で乳酸菌を加えて発酵させたもの。発酵バターは非発酵バターと比べて独特の風味とコクがあり、また加熱することでバター本来の香りとコクをより引き出せるので、焼き菓子に用いられることが多いんだ。但し、塩が入っていない分、保存性が低いので保存には注意が必要だよ。必ず5℃以下の低温で。なるべく早く使いきることをお薦めするが、長期保存する時は冷蔵よりも冷凍するほうがバターの品質を保つことができるんだ。匂いも大敵だよ。」
「あら、気をつけなきゃ。」
「発酵バターはフランスなどヨーロッパで大量に製造され、最近では日本でも入手しやすくなっているよ。国産のものも出回っているし。だが、一般に市販されているもので特に明記していないものは、ほとんどが非発酵有塩バターなので買うときはよく見てね。」
「はーい」
バターの製法
1.遠心分離
生乳に遠心力をかけて分離し乳脂肪の高いクリームに濃縮します。
2.殺菌
加熱殺菌します。
3.熟成
クリームを冷却し8〜12時間おき、乳脂肪の結晶を最も安定性の高い形に落ち着かせます。この段階で醗酵バターはクリームに乳酸菌を添加し醗酵を行います。
4.バター粒の形成
熟成させたクリームを激しく撹拌して乳脂肪を凝縮させてかたまり「バター粒」にします。
5.水洗い
分離した「バター粒」に冷水を加え、表面に付着している脂肪分以外の成分バターミルク(水、糖質、タンパク質などが主成分)を洗い流します。
6.練圧
集めた「バター粒」を充分に練り合わせ、なめらかなバターにします。なお有塩バターはこの段階で食塩を添加します。



- fresh cream -
「最後にもうひとつ、生クリームについても教えて。これもいろんなのがでてるけど...」
「生クリームは一般的な用語で法規上の名称は「クリーム」これは牛乳を遠心分離機にかけて乳脂肪を凝縮したもので、日本では乳脂肪18%以上、他の添加物の使用は認めないと規定されているんだ。」
「ホイップクリームもクリームなんでしょ。」
「いいや、これらは乳脂肪に乳化剤や安定剤が加えられたものやクリームに植物性脂肪を混ぜ合わせたコンパウンドクリーム、植物性油脂のみで作られた製品のことで、クリームではなく「乳等を主要原料とする食品」と表示されるんだ。」
「そうなんだ。今度から表示をよく見てみよう。」
「ホイップクリームは、生クリームに比べると風味や旨みの点でやや劣るものの、パサつきにくく、形がくずれにくいなどの特徴があるんだ。」
「用途によって使い分けるといいのね。それから、よく40%とかの表示があるけどあれは何なの?」
「乳脂肪率のことさ。生クリームはさっき言った遠心力のかけ方で濃度の違うクリームが製造できるんだ。製菓には35%から47%を使用するよ。」
「どの生クリームがどんなお菓子に適しているのかしら。」
「作る人の好みにもよるし、シェフ達はブレンドして使ったりもするんだが、47%の高脂肪のものはコクがあり、保形性があるので仕上げのデコレーション用に。42%、40%などはやや軽いタイプのクリームとなる。35%はムースやババロアによく使われるよ。」
「35%のクリームってあんまり見たことないけど。」
「去年、一般向けに35%純生クリームを発売した会社があるので話を聞きに行ってみようか。」
「うわぁ、楽しみ。」

タカナシ乳業
横浜のタカナシ乳業株式会社をおたずねしました。
会社はランドマークタワー近く、港が見わたせるビルの中にあり、とても明るい印象。商品事業部の大山さんにお会いしました。

タカナシ乳業は、日本で初めての低脂肪乳「ローファットミルク」や成分無調整で乳脂肪が4%以上もある「北海道4.0牛乳」、日本で最初の連続式低温殺菌システムを使った「低温殺菌牛乳」など時代の一歩先を行く製品を作り出してきましたが、昨年10月、一般向けに脂肪分35%の純生クリーム(200ml入り)を発売しました。
これは最近のイタリアンブームや健康、低脂肪化の波をうけての販売だったそうですが、家庭用で売られている生クリームは、脂肪分の高いものや植物性のホイップクリームが多かったので、まさに画期的!ですよね。今までパナデリアで取材したお菓子屋さんでも生クリームは脂肪分低めの傾向にありましたし。
大山さんによると、消費者に「立てづらい?ダレやすいのでは?」との不安があり、市場ではやや苦戦しているそうですが、きちんと泡立てればこのような心配は要らないようです。

タカナシのクリーム類は、この北海道純生クリーム35%、北海道純生クリーム47%、をはじめ、サワークリーム、クレームドゥーブル(いずれも200ml)が量販店にて購入できます。パナデリアを見ている方ならご存知、多くの職人さんが使っていた「特選北海道バター(無塩・450g)」は一部製菓材料店などで手に入ります。
タカナシの生クリーム、バターは、北海道4.0牛乳をベースに作られていて、この原乳は酪農王国である北海道根釧地区浜中町の良質なものだそうです。

「へー、お菓子に流行があるように、生クリームも時代が反映されるのね。ちょっと大げさかな。」
「いや、まったくその通りだよ。デリアさん。ところで素材についてはもう大丈夫かい?」
「ええ、パナおじさん。今回とっても勉強になったわ。どうもありがとう。」