パナデリアケーキ講習会 vol.19
(2003.10.25)

近藤 冬子先生と岩田 晴美シェフによる
ひとあし早く楽しむ
ベルギーのサンニコラ祭とクリスマス


大きな木彫りのスペキュロースの型、動物をかたどったブリキ製の焼き型がさりげなく飾られた
ラ・シュエットの教室。


「サンニコラというのは、悪い人に連れ去られた3人の子供を助けた聖人のことなんです」近藤 冬子先生がベルギーの伝統菓子"スペキュロース"の由来を説明する。
連れ去られた3人の子供は、なんと塩漬けにされ樽に入れられてしまう。それをかわいそうに思い助けたのが聖サンニコラ。細部まで丁寧に彫られた木彫りのスペキュロース型には、助けられた3人の子供のかわいい笑顔が見える。


それを祝う"サンニコラ祭"は日本ではあまり馴染みのない風習だが、ベルギーの子供たちにとって12月25日のクリスマスより大事な日。1年間良い子にしていれば聖サンニコラからご褒美のおもちゃがもらえるからだ。サンニコラ祭でおもちゃをもらい、クリスマスにはキリスト誕生をみんなで祝う。ベルギーの子供たちのクリスマスは楽しいことでいっぱい、そしてお菓子屋さんは大忙しの季節となる。


近藤 冬子先生は、そのベルギーの老舗 ヴィタメールなどで修業をされた方。楽しそうなサンニコラ祭にあやかり一足早いクリスマスを楽しもう、そして今が旬の秋の味覚まで堪能してしまおう、というのが今回の講習会だ。

まず近藤先生の栗と洋ナシを使ったアントルメのデモンストレーション。ヨーロッパからの帰国後は、フレンチレストランでのシェフ・パティシエールを務めていた近藤先生。そのプロ意識はデモでの説明やケーキの完成度など随所に見られ、教室内は小気味よい緊張感に包まれての進行となった。

今回のアントルメは、栗、洋ナシともにフレッシュなものを使っているのが特徴。まさに今店先に並んでいる旬の味覚である。ちょっと難しそう・・でも挑戦してみたい、そんなプロの技が盛り込まれたデモンストレーションとなった。

**レシピ** 
・スペキュロース
・ガトー・オー・マロンと洋梨の白ワイン煮アニス風味
・ショコラ ショー



そして迎えたランチタイム。前回のパティシエ コラボレーションに続き、今回はデザートと料理のコラボレーション。ご主人、岩田 晴美シェフがすぐ隣の厨房で準備してくださった料理をゆっくり頂き、その後デザートを楽しむという優雅なスタイルである。

岩田シェフは、アメリカンクラブ、日本大使館公邸付料理長を始め、"イルドフランス"、"パッション"などでシェフを務めた実力派シェフ。その腕前を、パナデリア会員12名のためにふるってくれるというのだから、ケーキ講習会にまさるとも劣らない幸せである。


〜お料理をご紹介すると


自家製スモークサーモンのサラダ

ゆっくりと桜のチップでスモークしたサーモンは、じっくりと染み込んだ燻製の香りが心地よく広がる。シェフこだわりのカナダ産サーモンは、程よくアブラが乗って旨みが強く、非常に存在感のある味わい。
秋の味覚、茸尽くしのポタージュ

数種の茸の旨みがぎゅっと凝縮された、濃厚なポタージュは、まさに秋の醍醐味と言える味わい。極細く刻まれたベーコンが全体の味を引き締めており、非常に味わい深い一品。
鹿フィレ肉、カシスのソースと共に

やわらかいフィレ肉は、当然のことながら火の通し方が絶妙。鹿の深みのある味わいが、カシスの酸味をほんのり効かせたソースでさらに引き立てられ、繊細ながら力強い美味しさ。雪をかぶったようなパセリ、ポテトのマッシュもしっかりとした美味しさ。
ショコラ・ショー

ここから近藤先生にバトンタッチ。苦味、甘味が程よく効いたショコラ・ショーは、ホッと幸せな気分になる寒い季節の贅沢。これからの季節、ぜひ覚えたい一品。
そして、アントルメ登場。

ガトー・オ・マロンと洋梨の白ワイン煮アニス風味

和栗がジェノワーズにもムースにも使われているので、香りと風味が非常によく、しっかりと"栗"を楽しめる。風味豊な生地は、そのままでも充分おいしいリッチなもの。ごく軽めのムース、ほんのりとアニスが香る自家製の洋ナシのコンポートのみずみずしさとの相性も素晴らしい。洗練されたプロの味ながら、女性らしいやさしさを感じるおいしさは近藤先生ならでは。コンポートの汁を煮詰めたとろみのあるゼリーを使ったデコレーションは手抜きのないプロの技。
サン・ニコラのスペキュロース

スパイスを使ったお菓子への認識を新たにする一品。シナモン、クローブ、ナツメグ、白コショウの4種のスパイスが非常にバランスがよく、風味が強いのに非常に食べやすい。カリッとした薄い部分と、ふっくらとやわらかい厚い部分、それぞれの食感が楽しく、ここを少し、あそこも少し・・・と止まらなくなる美味しさ。


パン・ド・コナのバゲットやワインも一緒にいただきながら、美味しいもの好き会員の会話も盛り上がり、実に優雅な午餐のひと時となった。

普段とは違う形式が「刺激になって面白かった」と言ってくださった、近藤先生と岩田シェフ。
ラ・シュエットとパナデリアの美味しいコラボレーションはこれからも続くかもしれない。