昨年、サロン・ド・ショコラの時期にパリを訪れ、お菓子やパンを満喫したパナデリア。今年はノエルの支度で活気づく12月に、アルザスそしてパリへと向かうことになりました。
自然が豊かで素朴さが魅力のアルザス、そして全てに於いて洗練された都会のパリ。同じフランスといっても、雰囲気はまったくと言って良いほど異なるもの。その両方の魅力を、色々な形でお伝えしていこうと思います。まずは、アルザスとパリのノエルの様子をご紹介します!


CONTENTS

◆アルザスのノエル

  *ストラスブールのノエル
  *コルマールのノエル

◆パリのノエル






イエス・キリストの降誕(誕生)を祝うノエルは、クリスチャンの多いヨーロッパでは、1年の中でもっとも大切なイベント。薪の形をしたブッシュ・ド・ノエルや、キリストのお包(くる)みを意味するシュトーレン(Kriststollen)など、ノエルにまつわるお菓子もたくさんありますよね。


マンステールのパティスリー「ギルグ」のシュトーレン


そのヨーロッパの中でも、ボージュ山脈に抱かれたアルザス地方は、12月6日のサンニコラ祭が盛んで、フランスで一番ノエルが美しいと言われているところ。アルザス特有の木組みの建物には、花やヒイラギ、そして煙突に登ろうとするサンタクロースなど、思い思いのディスプレイがほどこされ、町全体が絵本の世界から抜け出てきたかのよう!パリとはまったくと言って良いほど違う、素朴で温かみのある魅力に溢れています。


ノエルに食べるパン・デピスは、小麦粉(ライ麦を混ぜることも)にアニス、丁字、シナモン、オレンジの皮などのスパイスとハチミツを加えて作る伝統的なお菓子。角の丸い長方形の薄いタイプを良く見かける

「メゾン・フェルベール」には正方形にカットしたパン・デピスのほか、こんなかわいらしい形も

パン・デピスの形は店によって様々。アルザスでサンニコラに食べるマナラ(子供の形をしたパン)の形も発見(ギルグ)

パン・デピスの生地にドライフルーツやナッツを入れたレキャリもポピュラーなお菓子。フルーティでおいしい

アルザスの代表的なノエルのお菓子ベラヴェッカは、生地に10倍ほどのドライフルーツを加えて棒状に焼き上げたもの。キリスト誕生時のお包みをイメージした形という説がある(ティエリー・ミュロップト)

パン・デピスを思わせる味わいのコンフィチュール“コンフィチュール・ド・ノエル”もこの季節だけの楽しみ



そして、家族や友人など親しい人にプレゼントを贈り合うのもヨーロッパの慣わし。そのため、アルザスでは12月になると村々にマルシェ・ド・ノエルがたち、オーナメントやお菓子を買う人、雰囲気を楽しむ家族、そして贈り物を探す人たちが溢れ、夜まで活気付きます。
星々の輝く空の下、スパイスの効いたヴァンショー(スパイスの効いたアルザスのホットワイン)を飲みながら、ノエルに思いを馳せれば、どんな人でもきっと幸せな気分になれるはず!もしかしたら、これこそイエス・キリストの贈り物なのかもしれません。
パナデリアがアルザスでたっぷりいただいた幸せを、皆様におすそ分けできますように!
Joyeux Noel !!


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アルザス地方の首府ストラスブールのシンボルともいえるのがストラスブール大聖堂。ゴシック様式の荘厳な建物は、建設に300年を要したというだけあり、歳月を経た重みと迫力を感じます。中にはカラクリ時計や美しいステンドグラスもあるため、毎日たくさんの人が訪れます。


見るものを圧倒する荘厳な佇まい

イル川に囲まれたストラスブールの美しい旧市街の街並みは、世界遺産にも認定されているほど



この大聖堂の広場いっぱいに広がっているのが、お目当てのマルシェ・ド・ノエル。並んでいるのは、いわゆる“屋台”なのですが、その雰囲気は日本のお祭りで見るようなものとはまったく別もの!三角屋根の小さな家型のブースが整然と並び、ここぞとばかりに凝ったディスプレイがほどこされていいます。そして、ブースの中に所狭しと置かれているのは、アルザスの代表的なお菓子“クグロフ”“ブレデラ”、サンタクロースや雪だるまのオーナメント、ヴァンショーにスパイスなどなど。子供だけでなく、大人でも思わず目を輝かせてしまうものばかり。


雪だるまとエンジェルの表情に思わず一目ぼれ。広場に面したショップで購入

コウノトリはアルザスのシンボル。ポテッとした姿とアンティーク風の色合いが素敵です





ところで、日本ではあまり馴染みのない“ブレデラ”は、小さなクッキーのこと。街には専門店もあり1年中口にすることができますが、星の型で抜いたものはこの時期だけの特別なもの。


スパイスを効かせた素朴な味わい。ブレデラの抜き型を扱う店もあります

アニスを入れたマカロンのような伝統的なものや、形が可愛らしいものなど、その味わいや食感は店によって様々ですが、パン・デ・ピスを思わせるシナモン風味のものが多いようでした。ちなみに、この時期、アルザスのほとんどの家庭ではパン・デ・ピスやブレデラ、そしてベラヴェッカなどのお菓子を作り、ノエルを迎える準備をするのだそうです。


こんなに可愛らしく飾られた店やレストランも。ディスプレイにセンスの良さを感じます


店いっぱいに並べられたオーナメント。素朴な表情に思わず心が和みます

さらに、広場を囲むようにして並ぶ店のショーウィンドウには、アルザスの作家Hansiの描く女の子のイラストがついたハガキや食器、それから様々なノエルのアイテムが飾られ、見ているだけで幸せな気持ちになってしまいます。
マルシェは日中から開催されていますが、ぜひおすすめしたいのが暗くなった頃。通りごとに異なるイルミネーションが輝き美しさを増した街は、まるで一夜限りの魔法の国のように。


ブルーやオレンジ、白の光が街を埋め尽くします

夜になると建物もライトアップされ、街中がノエル仕様に

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アルザス地方では各地の村にマルシェ・ド・ノエルがたちます。中でもボージュ山脈にほど近いコルマールの村は、のどかな雰囲気の中に木組みの建物の街並みがかわいらしく、本当におとぎの国のよう!ここほどサンタクロースが似合う場所はないかもしれません。
マルシェに向かって歩いていくと、美しい建物が建ち並ぶ通りが次々に現れ、時間が経つのも忘れて夢心地に。 “もう、ずっとここにいたい!”、そう思わせる魅力に満ちています。


おとぎ話の世界に迷い込んだかのよう!

ブーランジェリー「KREATZ」。まるでお菓子の家のようです。

パティスリー「JEAN」は上品なデコレーション

そして、コルマールのマルシェは食べ物を扱う店が多いのも魅力。「JEAN」「HELMSTETTER(エルムシュテッター)」など、街にはお菓子屋さんやパン屋さんも多く、中にはマルシェに出店するところもあるので、屋台とはいえ、職人の作るおいしいブレデラやクグロフを楽しむことが出来ます。


マルシェに到着!胸が高鳴ります

ブースいっぱいのオーナメント。どれにしようか、悩むところです

パン・デピス専門のブース。パン・デピス発祥の村“Geltwiller”のものもありました

おいしそうなクグロフにうっとり。チョコチップ入りの生地にシナモンシュガーをかけたものなども

こちらはブレデラ専門店。グラム売りで、気に入ったものを好きなだけを詰めてくれます

クレープ屋さんも登場。ヴァンショーとクレープを手にマルシェをそぞろ歩くのも良いですね

コルマールであの「PLARUS(プラリュ)」を発見!
ショコラはもちろん、ブレデラもありました


さらに、名物のプレッツェルやフォア・グラ、そして近郊のマンステールチーズなど、とにかく食べたいものがたくさん!マルシェも広いエリアで行われているので、あれもこれもと手を出していたら、満腹になってしまうので要注意です。

リースやツリーも色々。もちろん生の木を使っているので、本物感が違います

サンタクロースがお菓子をもらいに来ていました

マルシェ内にはかわいい仔ヤギの姿も。
ノエルの宗教的な意味を感じます


一休みしたい時におすすめなのが、パティスリー「エルムシュテッター」。サロン・ド・テがあるので、ケーキをいただくことができます。「エルムシュテッター」というと、クグロフが有名ですがベラヴェッカにも強い思い入れがあるそう。

「このベラヴェッカを作るのに、毎年1.5トンの洋ナシを使います。9,10月頃に完熟してない洋ナシを選び、薄くスライスして、オーブンで乾燥させておくんですよ。私の祖父の代には、プルーンのピューレも自分で作っていたんですが、今はなかなか難しくて」

と、シェフのエルムシュテッターさん。代々伝わるベラヴェッカの味を求めて、アルザスはもちろんドイツからもたくさんのお客さんが訪れていました。

「エルムシュテッター」はケーキやお菓子だけでなく、ハード系のパンも充実

ドライフルーツたっぷりのベラヴェッカ。チーズなどとも合いそうです

みんなノエルを前に上機嫌!


それから、コルマールでぜひ行って欲しいのがプティット・フランス(PETITE FRANCE)。緩やかに流れるイル川沿いに、木組みや切妻など、この地方独特の様式の家々が並ぶ様子は美しいの一言。中世の頃には革なめし職人や漁師、粉屋などが暮らしており、その面影が今も残されているのだそうです。

プティット・フランスの眺め。
写真では現せないほど美しく、心を打たれる景観でした


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パリのノエルの見所は、なんと言っても豪華なイルミネーション!太陽が沈み、あたりが暗くなるとエッフェル塔は光の衣装をまとい、街は輝き始めます。

シャンゼリゼ通り。昼の喧騒が消え、どこまでも続く光は幻想的

名所ともなっているシャンゼリゼは光に埋め尽くされ、まるで星々の瞬く大河のよう!夜の寒さにも関わらず、この季節だけの贅沢な楽しみを求めてたくさんの人が集まっていました。また、ラファイエットなどのデパートも、この時期はノエルの準備やプレゼントを買い求める人で大賑わい。まるでステンドグラスのように無数の光が建物をおおう姿が見るものを圧倒します。



デパート「ラファイエット」のイルミネーション。
光の強さが変わると、眩いほどの美しさ


パリでもマルシェ・ド・ノエルを発見!



そして、当然ながらパティスリーのウィンドウウォッチングも楽しみのひとつ。

「ジェラール・ミュロ」の2号店を飾るマカロンのツリー

「アルノー・ラエール」のショコラのツリー。
プレゼントされたら幸せですよね!


パンの老舗「ポワラーヌ」。シックだけれど手の込んだデコレーション。
ノエル仕様のカンパーニュも


ケーキからたくさんの唇が!?食べるのに勇気が入りそうです(フォション)



日本では丸やドームなど様々な形のクリスマスケーキが登場しますが、パリでは伝統的なビッシュ・ド・ノエルのスタイルを美しい色や模様でアレンジしたものをよく目にしました。

赤と黄色の色合いが斬新な「アルノー・ラエール」のビッシュ・ド・ノエル

プティガトーサイズのビッシュもよく見かけました

「ピエール・エルメ」もノエルのケーキはビッシュ型がメイン

ベリーの赤が華やか、手前はコントラストが効いています(フォション)



そしてウィンドウだけに留まらず、入り口ごとデコレーションしてしまうのが今年のトレンドの様子。ゴージャスに飾りつけたファサードと通りまで敷かれた絨毯はまるで高級ホテルのよう!訪れるものを特別な気持ちにさせてくれます。


真っ赤なアーチと絨毯がゴージャスな「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」



今回訪れた素朴で温かみのあるアルザスと、ゴージャスで洗練されたパリ。
どちらの場所も光やオーナメントが放つ以上の美しい輝きに満ち溢れていました。もしかしたら、ノエルを祝おうとする人々の純粋な気持が、街を美しく彩っているのかもしれません。
とは言え、クリスチャンでなくともノエルは特別なひと時。
おいしいケーキとパン、そして人々の楽しい笑い声。
どうぞ皆様にも素敵なノエルが訪れますように!



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