さようなら、リトル・マーメイド三軒茶屋店

三軒茶屋で地域の人々に愛されてきた「リトル・マーメイド三軒茶屋店」が、惜しまれつつも1月22日をもって閉店しました。しかしその後には、とても大きなお楽しみが待っているのです。


(取材に訪れたのは閉店の前日。
商店街に溶け込んだこのお店ともお別れです。)


(途切れることなくパンを買いに来るお客さんで、
夕方には陳列棚はこの通り!
閉店を残念がるお客さんの声も。)



パリの名店「ポワラーヌ」との関係!?




「ポワラーヌ」、日本で分かる人はどの位いるでしょうか?きっと、「ああ、パリの有名なパン屋さんね!」と即答できる人も少なくないはず。1932年にパリ6区、サン・ジェルマン・デ・プレに開店したポワラーヌは、今や観光名所とでも言えるほど、パリを訪れる時には欠かせないお店となっています。ポワラーヌの顔とも言えるのはカンパーニュですが、りんごを使ったショーソン・オ・ポムやタルトレット・オ・ポムの人気も絶大なるもの。そうそう、ついつい何枚でも手が伸びてしまうサブレも忘れてはいけません。

実は、そんな国を越えた超有名店でパンを作り続けていた経歴を持つ方が日本にいます。それが、フランス人のパン職人、デリアン・エマニュエルさん。


(デリアン・エマニュエルさん)


リモージュ出身の彼は日本に来て2年になります。気さくな笑顔、誠実そうな瞳、日本語を交えながらゆっくりとフランス語で話しかけてくれる姿からは、優しく柔らかな雰囲気が漂っています。そんなエマニュエルさんが、なんとこの度、「リトル・マーメイド三軒茶屋店」の跡地で、石窯を使用した本格的ブーランジュリー「ボヌール」(http://www.e-pan.net/)をオープンさせることになりました!冒頭で書いた“お楽しみ”とは、このことだったのです。



「ボヌール」のパンを少しだけ紹介

夕方4時頃、三軒茶屋のお店を訪れると、エマニュエルさんが窯の前で試作品の焼き上がりを待っていました。焼き色を見てはさらに5分、3分…と調節しながら微妙な焼き加減を見極めています。添えられたメモを見ると、6種類のセレアルを使ったパンのよう。香ばしい香りが辺りにふわ〜っと漂います。


(愛情たっぷりにパンを作っている様子が伝わってきます。
そして、焼き上がりを確かめる真剣な眼差しは職人そのもの。)


スティック状のものと型に入れたもの、それぞれに異なる2種類の小麦粉を使って試作。スティック状のものは国産小麦「タイプER」とフランス産小麦「レジャンデール」、型に入れたものは「カメリア」と「スーパーキング」で比較する、というように。見た目は同じように見えても、食べてみると粉によって確かに味わいが違うことに驚きます。塩け、生地のしっとり感、旨み…。この時点で、実際どのパンがお店に並ぶのか今からとてもワクワクします。


(試作品をそれぞれ試食させていただきました。
それぞれの味わいにしっかりとした粉の主張があるのが面白い!)



他店のオープニング応援スタッフを体験




2月2日、墨田区東向島にある下町の人気パン屋さん「富夢富夢」の船橋店がオープンしました。「富夢富夢」は「ボヌール」と同じく石窯を使用しており、エマニュエルさんがお店のオープンを手伝いに行くとのことで、早速伺ってきました。お店に到着すると、広い店内にはレジまで続くお客さんの列が!焼き上がりと同時に棚のパンはあっという間に無くなり、店内には店員さんの元気な声が響く活気のよさ。



(お店の“顔”とも言える石窯もフル活動)

仕事の合い間をぬって厨房から出てきてくれたエマニュエルさん。たくさんのお客さんに驚いてはいるものの、作業に関しては順調にこなしている様子。頼もしい限りです。途中、フランス語を習っているというお客さんと歓談するという場面も。そんなエマニュエルさんも、週1回、朝2時間と夜1時間半、日本語の勉強のため学校に通っているそうです。


(おおらかで気さくな人柄で、お客さんとの会話も弾みます)




「ボヌール」開店前に、実際にパン屋さんのオープンに立ち会えたことはエマニュエルさんにとっても大きな収穫となったに違いありません。ここでの体験が「ボヌール」にどのように活かされてくるのかも注目したいところです。

次回も、引き続きエマニュエルさんを追っていく予定です。お楽しみに!