勝手な見解で非難を浴びそうだが、カレーパンは、わたしにとって「おやじの食べ物」であった。

<風呂あがり、縁側でコップにビール (もちろん瓶ビールね) を注ぐ白いステテコ姿のおやじ>
「おーい、なんかつまむもんないか〜っ」

<台所で夕食の支度をしている奥サン>
(もうちょっとで夕食になるのに、もうっ)「あー、……カレーパンがあるけど」

<ウチワでパタパタしながらおやじ>
「おう、それでいいやっ」

――奥サンから手渡される白い紙袋に入ったカレーパン。昼間子どものおやつ用クリームパンと一緒に購入されたそれはすっかり冷め、袋は油でじっとりと透き通っている。

<ビールをぐいっとあおり、カレーパンにかぶりつくおやじ。もぐもぐしてから流し込むようにまたビールをガー>
「うんっ、うまいっ、夏はやっぱりカレーパンだなっ」

――風呂とビールのほてりで全身赤くなったおやじは口のまわりに油ぎった茶色いパン粉をつけてビールを飲む、そのコップは口をつける部分だけ半円状に白い泡がついていない、そしてビールと交互に口に運ばれるカレーパンは揚げたてならするであろうサクサク、という音はしない。しかし、彼はパンが冷めていようと頓着する様子はない(思えばコロッケにウスターソースをドボドボかけて食べる世代なのだ、トースターで温めてカリッとさせるとかそういう発想はない)。酸化したような油とカレーの匂いがうちわで扇がれ辺りに拡散していく。ああ、おやじっぽい……

 それがわたしにとってのカレーパン(当然"揚げ"、昔は "揚げ"しかなかったように記憶する)の風景であった。レディの食べるモノではない。
けど、そんなわたしとてカレーは好きであった。どれくらい好きかというと、お弁当にカレーを持っていったくらいだ。バンビの絵のついたアルマイトのお弁当箱の底にゴハンを敷き、カレーをかけてその上からまたゴハンをかぶせた「カレーサンド弁当」なるものを考案して持っていったのだ。のちに成人してインドカレーなるものを初めて食べ、ナンとカレーの組み合わせに感動して週に一度べずにはいられなくなるくらいハマるのだが、カレーパンは避けた。
 その理由とは、そう"揚げ"てあるから。脂ぎったおやじと油ぎったカレーパン、清潔なうら若い乙女の脳裏でそれらは同一視され、敬遠しておったのだ。それにカレーだけでもカロリー高そうなのに、揚げたらとんでもないことになるのは明白だ。
 とはいえども、根を正せばカレー好きのこのわたし、テレビで元祖カレーパンやら『横須賀カリーパン舎』(実は『オーバカナル』の元シェフ池田さんが立ち上げに一枚噛んでいる)の紹介を見るたび「ああ、揚げたてのカレーパンにかぶりつきたいっ!」なんて熱い思いがこみあげていたのだ。夏になると訪れるカレーブーム。あのトラウマ(っていうのかぁ?)さえなければっ!!

 そんなわたしに救いの手を差し伸べるがごとく登場したのが"焼きカレーパン"である。聞けばあるところでは昔っからあったそうだが、どういうわけかわたしの目には触れなかった。
 が、ここんところ大手ベーカリーで新製品と称して大っぴらに"焼き"を宣伝するようになってきた「ヘルシーあっさり焼きカレーパン」なんてね。しかも揚げと違って姿・形・味ともバリエーション豊か、これは惹かれる。
 というわけで、油ぎってないレディのため(?)の焼きカレーパン、"揚げ"を彷彿させるオーソドックスなものから、"焼き"でなくては実現できないユニークなものまで集めてみました。ただ、これらの商品まだ定番になっていない店も多いようで期間限定だったりします。特に8月は夏期休業のパン屋さんもありますし、一応お店にご確認の上お買い求めいただけますよう、よろしくお願いいたします。


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