前編はこちらからどうぞ









冬のソナタにはじまって、日本のヨン様フィーバーはとどまるところを知らず。
今や次なるヨン様を求めて、マイ・テイストの韓国イケメン俳優を探し出すのが一番のトレンドだとか。そのヨン様だって実は甘いものが大好きなのに、なぜかほとんど情報が入ってこないお隣の国・韓国の洋菓子事情。とはいえ日本の製菓学校へ年々韓国からの留学生は増えるいっぽう。日本の有名パティシエたちも、韓国で技術指導をする機会が多くなっており、昨年末に行われたTVチャンピオンXmasSweets選手権の優勝者も、たしか韓国の方だったような。 もしやして飛躍的発展を遂げているのでは?と、飛行機でわずか2時間弱、韓国はソウルを数日間訪れてみました。










てっとり早くソウルのレベルが一目でわかる、ということでまず観光客が必ず立ち寄るここへ。さすが、フォションもあれば、韓国宮廷菓子もある。パンもバラエティー豊富に50種類くらいはあるでしょうか。巨大なメロンパンや、そぼろ状になったクリームをトッピングした長細いクリームパン、もち米を揚げたポンデケージョのような丸いパン、ピザパンなどが、どのお店でも人気アイテムのようです。(のちに美味しいと評判のウエスティンチョースン・ホテルの高級デリでも同じアイテムがありました)中でもロールケーキはパン屋さんでもケーキ屋さんでも人気のようで、一本500円くらいで売られていました。その反面、あまり人気がないのでしょうか、タルト類は非常に少なかったように感じました。どうやらパンもケーキもふわふわ系がお好みのようです。さらに良く見ると、まったく同じロールケーキをロゴだけ張り替えて、フォションでも隣の韓国ベーカリーでも売っています。値段も同じようです。しかもフランス菓子であるはずのフォションで売られているケーキは、ふた昔前にスエンセンズ(皆さんご存知ないかも)で売られていたアイスクリームケーキのような人口的な色と大きさ。とても買う気にはなりません。  しかしこれも良く観察してみると、隣にあるパン屋のケーキと実に良く似ています。同じサプライヤーなのかな??と思いつつ、少し時代を感じたケーキたちでした。のちに街中でペルティエも発見するのですが、パンもケーキもアイテムは前に記したものとほぼ同じ。フランスを感じさせるものは、ギフト用にパックされた、干からびたダコワーズとフィナンシェ(バラ売りなし)とディスプレイくらいだったでしょうか。所変わればフォションもペルティエさんも変わるものなのですね。なかなか複雑な気持ちでした。  さてパンのお味はと言うと、色々なところで何種類か食べてみましたが、限りなく甘く、柔らかくでした。これはおもに大陸から東南アジア全域に見られる傾向ですが、パンはまだまだおやつ感覚なのでしょう。フランスパンももちろんありましたが、どれも皮と中身が同じテクスチャーでふんわり系。これでは皆、味のある菓子パンに手が伸びてしまうのもわかります。




素敵なリボン包装に韓国スイーツへの期待が高まります!


リッツ・カールトンホテルや、ヴィトンやプラダなどの高級ショッピングセンター、人気エステサロンがひしめきあう江南地区にあるお洒落な街アックジョン。
ここに1995年にオープンしたのが日本人シェフ・エグチさん率いるパティスリー・エグチ。かつて東京製菓専門学校の先生を務められた方でもあります。明洞の街中で見てきた少々毒々しいケーキとは色も大きさも違い、ひと昔前の日本にあったような、ホッとなごめる懐かしい感じのケーキが並びます。店内は品良く、シンプルにまとめられていました。早速イチゴショートにベイクド・チーズケーキを注文。ふわふわのスポンジには少し多めにシロップが打ってありました。これは後のケーキ屋さんでも感じたことですが、スポンジや焼き菓子に多めのリキュールをきかせているお店が多かったようです。チーズケーキはしっかり焼かれ、ほんのりレモンがきいた日本でもおなじみの味。甘さはごく控え目です。しかし両者ともそれを飾る生クリームの味が残念!フレッシュな純生ではないようです。口の中でクリームがなかなか溶けてくれません。おかげで紅茶を沢山飲んでしまいました。エグチシェフにお話を聞きたかったのですが、彼は今お店の近くに製菓学校もオープンされたようで、その日はいらっしゃいませんでした。
クリームさえ良ければ美味しいのに!との思いを残し、店を後にしました。ちなみにイチゴショートが460円くらい、チーズケーキ450円くらいでした。

◎住所・・・・江南区新沙洞666−17    Tel・・・・02−3442−1258






絞りがとてもきれいなクッキー。
バターの風味というよりは、植物性の
サクサク感のあるあっさりとした味わい。





そう、江南といえばまず第一にこのカフェに行ってみたかったのです。ソウルのお洒落系カフェの火付け役となったのがこのプラスティック。名前のごとくモダンなだけの無機質なカフェかなぁ〜と思って行ったら大間違い。10メートル近くあると思われる高い天井からは、自然の光がさんさんと降り注ぎ、モノトーンで統一された細長い店内を優しく包み込んでいます。一面ガラス張りの大きな窓からは、樹木が植え込まれたお洒落なテラス席も。夜はそこにライトが灯って実にロマンチックだとか。代官山あたりを探しても、こんなにゆったりとした空間はなかなかなさそうです。さて問題のケーキです。
ショーケースを見るとどこかで見たことがある!と、思わず唸ってしまいました。そう、
東京に何件もカフェを経営するミルクレープやシフォン、ドーム状のでっかいケーキなどが有名なお店のアイテムにそっくりなのです。思わずこれどこで作っているの?と聞いてしまいましたが、英語がまったく通じませんでした。アイテムはアズキ入りチーズケーキが500円、NYチーズケーキ600円、シフォンケーキ600円くらいだったでしょうか。
ドーム状になったスペシャルチーズケーキ650円を注文。味はやはりクリームが駄目!それこそプラスティックみたい!と一口でギブアップしてしまいました。
ここではケーキを食べずにワインやドリンクで雰囲気を楽しむほうが良さそうです。

◎住所・・・・江南区新沙洞631−13  Tel・・・・02−3446−4646







今回の旅で一番印象的だったのがこのカフェです。場所はPlasticのある鳥山公園沿いの道を歩いてすぐ。この付近には公園の緑を借景としたお洒落なカフェやギャラリーが何件も並んでいます。カフェ・モウは、ビル全体がアートスペースになっている建物の2Fにあります。ここでは、同じビルの一階にあるGARUというケーキ・ショップのケーキがいただけます。オーナーはなんとヘアデザイナーだそうな。カフェのフロアは3つに分かれ、噴水のあるテラス席、いたるところにアートがちりばめられた広々としたソファー席。真っ赤なドレープをふんだんに使い、年代モノの陶磁器に囲まれた不思議なサロンも一見の価値ありです。さて、ケーキの種類は多くはありません。時間が遅かったせいもありますが、8種類くらいだったでしょうか。でも韓国では珍しく?どれも食べてみたいと思わせる、日本で言えば辻口シェフのケーキのような、シンプルかつ洗練されたチョコレートケーキやムース類が4品くらい。他はドーム状になったモンブランと、ホワイトチョコで囲まれたマンゴとラズベリーのレイヤードケーキ、レアチーズケーキなどでした。ただし値段は1品が700円くらいからと、他店を引き離すとび抜けたもの。これでは、コーヒーを飲むと2000円くらいいってしまいます。という事で、このカフェには「普通の人」は入っておりません。エステ帰りのマダムやアーティストたちの社交場といった雰囲気です。ちなみにお皿は一人一人に違うデザインのロイヤルコペンハーゲン、カトラリーはエルメスのシルバーでした。中でもここのコーヒーは絶品でした。なんでもソウルでも最高の職人にブレンドしてもらった豆を細心の注意を払って入れているそうな。ケーキはMysticというピラミッド型になったミルクチョコのケーキを注文しました。中にはミルクチョコムースや生クリーム、ジャンドゥージャとダコワーズのような生地が渾然一体となっています。これもクリームの油っぽさが少々気になりましたが、なんとか及第点でした。 ソウルでとびきり美味しいコーヒーと、お洒落なカフェを体験したい人には雰囲気ともにオススメできるお店です。

◎住所・・・・・江南区新沙洞650−9  Tel・・・・02−3444−6069
http://www.p-view.com




さて、江南地区から繁華街明洞に戻り、街中でひときわ流行っているカフェにと飛びこんでみました。場所はちょうど明洞ギルにあるABC・Martの斜め前。韓国で最近ブームになっている緑茶の専門店がオープンしたカフェです。

ごちゃごちゃとしたイメージのある明洞地区の中では珍しく、すっきりと清潔感のある明るい店内。ショーケースに並ぶケーキはどれもお茶を使用したものですが、今回のカフェめぐりの中で、アイテムや形は今の日本のケーキに最も近いもの。抹茶シフォンや、ロールケーキ、シュークリームやチーズケーキ。中には韓国伝統の餅菓子も置いてあり、さすがお茶屋さんの経営と思わせます。その中でスイートポテト・グリーンティーケーキを注文。緑茶のスポンジにスイートポテトのムースが層になっているものでしたが、肝心のお茶の香りや風味がほとんどありません。その上、中身のスイートポテトのムースは油っぽい。全体的に甘さも香りも薄すぎて、何を食べているのかまったく意味不明な一品でした。

それではと、シフォンも注文。しかし、これもしっかり緑色をしているのに香りがない。

韓国では強烈な味の料理が多い半面、洋菓子は限りなく淡く、さっぱり薄味が好まれているような気がしました。ちょっと残念ですね。

Tel・・・・・02−774−5460    www.osulloc.co.kr







ハングル文字のシールはこんな感じです





前で紹介したオスロックの正面にある小さな米菓子の店がこちら。今日本でも米粉のケーキが人気を博していますが、韓国の米や餅菓子の歴史は非常に古く、韓国における米の歴史は紀元前の遺跡発掘によると、世界でも最も古い米が発見されたと言われるほどです。日本と同様切っても切り離せない食物である米。それは菓子にも様々な趣向をこらして登場しています。最近人気なのが伝統菓子である米菓子をケーキのアントルメに見立て、大きく丸く蒸しあげたもので、ここではそのカットしたものが気軽に食べられます。味はかぼちゃ味とのことですが、甘みはごくごく少なく、独特の粘りと歯ごたえは、日本の菓子にたとえると銀座にある銘菓「御目出糖」を思わせる食感です。地元っ子の間では、洋菓子を食べるよりもヘルシーとのことらしいですが、かなり重たい粘り気に好みがありそうです。これはこの店以外に、デパ地下の伝統菓子売り場などでも見ることができます。味はともかく、韓国に来たら一度は試していただきたい興味深い菓子です。

Tel・・・・・02−782−4775   www.e-midan.com




ここはおまけ!何といってもそのロゴに大笑い。都内にある某メープルプリンが人気のお店「T」とほとんど同じ。おまけに名刺は尾山台にある老舗洋菓子店のものと色も形もそっくりです。そしてもうひとつフランス・パン・菓子と日本語の表記もされています。



何だか不思議な日本語かも


かなり日本を意識しているな?!と期待しながらお店に入りましたが、どうも蛍光灯の白っぽい明かりがお店全体を生き生きと見せてくれません。パンのアイテムはかなりのものですが、どれも焼きが甘く、湿気を吸い込みダラ〜ンとした感じで買う気にはなりませんでした。焼き菓子の種類も豊富でエンガディーヌ、マドレーヌ、フィナンシェを求めましたが、これも香りがまったくありません。しかし街中のパン&ケーキ屋さんとしては規模が大きく、市民に愛されている様子です。お店の雰囲気はひと昔前の日本の喫茶店といった感じでした。

Tel・・・・02−771−0110   
場所・・・・シティホール前の太平路沿い(ラディソンプラザホテルからすぐ)
www.gmadeleine.co.kr





どこかで見たことがあるような・・・?!
残念ながら味はまだ師匠には及ばないようです。




全体的な印象として、韓国の洋菓子はバターやクリームさえ本物を使えば、かなり素晴らしいものになると思いました。パンに関しての味の好みは、生活習慣と関係しているので一言ではいえません。一時期見られたどぎつい色をした、大きいだけのケーキはだいぶ陰をひそめ、プロの職人の手による繊細な形の洋菓子が増えてきていることは確かです。カフェの雰囲気も、日本顔負けという素敵なお店がどんどん増えています。

これでケーキが美味しかったら最高なのに!と思いつつ。暑さのせいでクリームのクオリティーが保ちづらい東南アジア諸国と違い、韓国はしっかり寒いし牛肉天国なのに、なぜミルクが悪いのかな〜〜とも思いましたが、それはきっと乳製品を取る習慣が今まで少なかったからでしょう。スーパーを見ても牛乳よりは豆乳がポピュラーという感じでした。でもそれもまた良し!と思います。年々どこの国でも食物の欧米化の波が押し寄せ、せっかくあった伝統の食というものが次々と失われていくのですが、韓国はきっと大丈夫。唯一無二のその食文化と、今だ高麗時代から残る宮廷菓子の存在。伝統に根ざした米や餅菓子の取り入れ方。

パンや洋菓子が美味しくなるのもうれしいですが、やはりその国の気候風土にあった食が、しっかりと国民に根ざし、消えることなく、そのような中で嗜好品が伸びてくるのが一番理想的な形かな〜と思います。そう、ロッテリアやマクドナルドにあるキムチライスバーガーも面白かったです。パンの代わりにキムチチャーハンを平たいおむすび方に成型し、これでビーフパッティをはさみ、バクっと食べるのです。しっかり辛くてしっかり香る!これぞまさに現代韓国を手っとり早く象徴する味かもしれませんね。