文  浅妻千映子
写真 土居麻紀子
「あんぱん」という言葉を聞いた時、日本人であるならば、誰もが親しみを持って、黒いあんこの入った手のひらサイズのつるんと丸い形のパンを想像するだろう。ケーキで言えば、シュークリームやショートケーキ。好き、とか、嫌い、という話ではなく、菓子パンの中でのあんぱんの地位は、誰もが認めるところである。

そのあんぱんが、16のパン屋さんから、なんと26種類も勢ぞろいしたのが、今回のあんぱん試食会だ。テーブルの上に並ぶのは、大きいのも小さいのも、柔らかそうなのもかたそうなのも、あんぱん、あんぱん、あんぱん、ぜーんぶ、あんぱん!

しかしながら、一つ一つをよくよく見ると、「あんぱん」と言われたときに想像するあの質感、あの形ばかりではない。それは確かに多いけれど、どうやらあんぱんは、日々進化している様子だ。ふわふわ系からフランス系、デニッシュ系と生地もいろいろ。黒糖が入っていたり、全粒粉の生地もある。

あんこの味も、一昔前ならどこのも似たようなもの、だった気がするのだが、自家製や特注が増え、味わうほどに個性的だ。「金麦」「ダンディゾン」など、新しい店で、特に変わり種が目立つ。それらを見、食べると、あんぱんってこんなに可能性があってオシャレだったんだ、としみじみ感じてしまった。老舗「銀座木村屋」と「ブレーメン」からは、赤ちゃんほどの重さ(2.6キロ?)の巨大あんぱんも。どちらも特注で、普段はなかなかお目にかかれない代物だ。


会員のみなさんも買出しに
協力してくださいました


テーブルいっぱいに並んだ
あんぱん。
いざ試食スタート!!


今回参加したのは、パナデリア会員を中心に約30名。個人的には、「あんぱんは単調な甘さだから、みんなそんなには食べられないだろうな」と思っていた。だから、会がはじまり、どんどんなくなっていく皿の上のパンには驚いた。終わってみれば、試食用にと切った各店のあんぱんはほとんどなくなってしまったのだ。ケーキ試食会よりも売れ行きがいいかもしれない。想像以上に各店の味に変化があったことに加え、やはり日本人の体質にあんことが合うということなのだろう。

あんの味、生地の味、バランス…。好みはそれぞれだろう。どこのあんぱんが人気だったかはお楽しみの結果として、この試食会では他に、牛乳の飲み比べも行われた。あんこは乳製品と相性がいいから、こちらのほうの売れ行きもよかった。

途中には、ゲストとして参加してくださった製あん会社の方などのお話を伺う時間も。「あんこは必ずふた口味わって。最初の一口目では本当の味が分かりません」との言葉に、あんこの繊細さを感じた。

こんなあんぱん三昧は多分一生に一度! マニアックなイベントに参加してくださったあんぱん好きのみなさんが、心から満足されていることを祈ります。





中沢乳業鰍フ渋井洋氏
内藤製あん(有)の内藤龍太氏
「金麦」の伊藤隆一シェフ

中沢乳業鰍フ吉田友規氏
潟Cシハラの富永均氏