お菓子好きにとってパリは外すことができない場所。あっと驚くような最先端のお菓子から、昔からのベーシックで素朴な伝統菓子まで、パリから世界に向けて発信されていると言ってもいいほど。でも、パリだけじゃありません。フランスの地方にはお菓子がおいしいことで有名な場所がまだまだたくさんあるのです。その一つがアルザス地方。「アルザス地方はお菓子の聖地だ」なんて声も聞こえてくるほど、お菓子屋さんの多さ、質の高さともにパリに負けずとも劣らないほど。かのピエール・エルメ氏やクリスティーヌ・フェルベール氏を生んだ地でもあることを考えるとレベルの高さは言うまでもないでしょう。   
そして、お菓子以外にも楽しみが多いのがアルザス。パステルカラーの木組のかわいらしい家々が建ち並ぶ街並みは、別世界へと迷い込んでしまったよう。そんな地で出会う陶器や雑貨…考えるだけでワクワクしませんか?さらにこの時期の楽しみといえば「マルシェ・ドゥ・ノエル」!クリスマスに、もみの木に初めて飾り付けをしたのがアルザスだそう。


「行けばみんなアルザスが好きになる」…そんな言葉に誘われるように、今年はパナデリアもアルザス地方&パリに取材を兼ねて視察に行ってきました!アルザス地方では、なんとパナデリア会員でもあるフランス人の方におすすめのパティスリーを案内してもらうこともできました。でも、せっかくなら会員のみなさんにも私たちが出会ったおいしいお菓子を食べてもらいたい、そんな思いから今回のパーティーは企画されたのです。


パーティーが行われるのは帰国翌々日の12月14日。「疲れた」「時差ボケ」なんて言っている暇もなく、商品の写真撮影やリスト作りなど準備に大忙し。近年のテロ事件の関係で航空会社の荷物に関する規制が厳しかったため、

「大丈夫かなぁ?お菓子足りないかも…」

と不安になったのも束の間、テーブルの上に並べられたお菓子やパンの量には圧巻!今度は

「みんなこんなに食べきれないんじゃない…」

という心配へと変わったのでした。

お菓子、お菓子、お菓子…!!
こんな贅沢な気分を味わえるのはこれが最後!?



そして当日。会場となったのは、「マリナ・ド・ブルボン白金台店」の2Fティーサロン。スタッフは開始2時間前に会場入りし、お菓子のカットやディスプレイを開始。

「大変、お菓子が乾いちゃう!ラップ、ラップ!」

出来るだけおいしい状態でみなさんに食べてもらうため、形が崩れたり風味が損なわれないいよう細心の注意を払ってフランスから持ってきたお菓子たち、カット後も劣化しないようにと気は抜けません。また、今回はスタッフも含めみんなで優雅な気分でお菓子を楽しんで食べたい、との思いがあったため、特に力を入れたのがお菓子のディスプレイ。ただ無機質にお菓子を並べるだけではなく、見ることでも楽しんでもらえたら…。

「そうだ、西原シェフになりきらなきゃ!」

今年9月の講習会で「オ・グルニエ・ドール」西原金蔵シェフのディスプレイに感激したパナデリア、さっそく実践の時です。今回の旅行でゲットした陶器やキャンドルスタンド、スタッフが持ち寄った食器や小物に本、それらを使いながらお菓子により表情を持たせられるように愛情を込めて…。そして、みなさんに少しでもフランスの空気を伝えられるように、旅行中に撮影した写真も忘れずにディスプレイ。ようやく準備が整って来た頃、一人二人…と増えてきた参加者たち。実は、今回の定員は20名。思いがけず多数の方から応募をいただいたため、申し訳ないながらも抽選となってしまったのです。

アルザスの雰囲気、伝わりますか?

クグロフの型やベックオフの容器にもお菓子を入れて

サクサクのサブレやジェラール・ミュロのかわいらしいギモーブも


18時過ぎ、パナデリア主宰・三宅の挨拶とともにパーティーのスタートです!一通りのお菓子の簡単な説明の後始まったのは、なんと撮影大会。頑張ってディスプレイした甲斐がありました。しばらくすると、みなさんの手も少しずつお菓子に伸び始めました。パリから約30種類、アルザス地方からも約30種類、そしてウィーンとプラハから1種類ずつ、全部で60種類以上ものお菓子が目の前に並ぶのですから、どれから食べようか悩んでしまいます。また、同じ名の付くお菓子でも、お店によって食感や味わいなど個性は全く異なりました。例えばベラヴェッカ。「エルムシュテッター」のものは固めでスパイスの風味が強く感じられるのに対し、「ティエリー・ミュロップト」はかなりジューシーで軟らかく、初めて食べる人でも抵抗なく食べられそう。「リション」のものもしっとりと軟らかいのですが、こちらはプチプチとフィグの存在感たっぷりです。

「同じアルザス地方のお菓子でも、お店によってずいぶんと生地が違いますね〜」

とみなさんも驚きながらも、「マリナ・ド・ブルボン」の紅茶と会話を楽しみながら、ゆっくりとお菓子を味わっていました。4種類の紅茶が用意されていましたが、とにかく無くなるのが早い。

「なんだかやけに喉が渇きますね…」

そうなんです、パン・デピスにベラヴェッカ、ブレデレ…今回はスパイスを使ったお菓子が多い!これもスタッフが心配していたことの一つでしたが、

「さすがにスパイスばかりはきついですけど、いろいろなバリエーションがあって楽しいですよ」

との参加者の方からの声にホッ。

「エルムシュテッター」のパン・デピス

「メゾン・フェルベール」のクグロフ

「プラリュ」のケーク・プラリネ。
ピンクのプラリネがキュート


パナ・スタッフに人気の高かった「ギルグ」のケークは
しっとりとして味わい深い


アーモンドの風味が豊かな「アルノー・ラエール」のパヴェも絶品!

宝石のような「パトリック・ロジェ」のフルーツコンフィは今回一番の高額品



ちょうど1時間経過した頃、「マリー・キャトルオム」で購入した「コンテ・エテ2004」と「トメット・バスク」の2種類のチーズが登場。それらと合わせて食べるのはマルメロのパート・ド・フリュイに「メゾン・フェルベール」の「コンフィチュール・ドゥ・ノエル」、「ジュレ・ドゥ・ヴァン ゲヴェルツトラミネール」、そしてパリのビオのマルシェで買ってきた数種類のドライフルーツ。それぞれ単品で食べても十分おいしいものですが、一緒に食べることで、チーズのコクに酸味や甘み、フルーティーな香りが合わさってまた違った味わいを楽しむことができます。「待ってました!」とばかりに集まってきた参加者たち、あっという間にチーズのお皿は空になったのでした。実は、甘いものの合い間に食べられるようにと軽食も用意されていたのですが、さすが強者揃いのパナデリア会員、それまでひたすらお菓子だけを食べ続けている方が多いのにはびっくり。それでもみなさん全種類食べきるのは難しかったらしく、気付くと、一つ一つラップにくるんでいる姿があちらこちらで見られました。事前に連絡をしているわけではないのに、ラップや容器を持参して来るのはさすが。

フランスに行ったからにはもちろんチーズも

ジューシーで濃い味わいのライチはビオのマーケットで購入


そして少しすると、運ばれてきたのは美しいケーキの数々。

「実は今日、休暇をとってこのケーキを作ったんですよ」

なんと、「マリナ・ド・ブルボン」のパティシエ・水島茂さんがこのパーティーのためにわざわざケーキを作ってくださったのです!もちろんフランスから生ケーキを持ち帰るのは不可能だし、焼き菓子中心では色合いも地味になりがち。一気に会場が華やかになりました。優しい味わいのケーキたちは、スパイスで刺激された味覚を癒してくれるようでした。

水島さん自らケーキの説明をしてくれました



パーティーも終わりに近づいた頃、最後の締めにと出したのは、なんとチョコレート。昨年パナデリア内に感動を巻き起こした「プラリュ」の「ブリュ・ドゥ・サオトメ」に加え、ミルクチョコレートなのにすっきりとした大人味が印象的な「バール・ショコラ・レ」、これまた昨年衝撃的だった「ボナー」の「100%カカオ」に、同じく「ボナー」の「マダガスカル」、「エクアドル」、そして「ベルナション」のタブレット、「クブレー」のボンボンショコラが並びます。

「これはサロン・ド・ショコラ東京でのプラリュさんの講習会で食べた『サオトメ』ですね!」

「やっぱり『100%カカオ』のこのガツンとくる味わいはすごいですねー!」

もう一口も入らないほどお腹いっぱいなはずなのに、みなさんそれぞれの味わいを比較しながら嬉しそうに口に運びます。

「プラリュ」のチョコレートのおいしさは今年も健在

楽しい時間はあっという間に過ぎていくもの

時計を見るとすでに終了時間の20時をオーバー。2時間はあっという間でしたが、60種類以上もあったお菓子たちはほとんどテーブルから姿を消し、中には

「ほぼ完食しました!」

という頼もしい方もいました。


みなさんよく食べました!あ〜お腹いっぱい!



少し早めのクリスマスパーティー、参加してくださったみなさんは満足していただけたでしょうか?今年も残すところあとわずか、みなさんもおいしいものでこの1年を締めくくってくださいね。

そして、来年もパナデリアをどうぞよろしくお願いいたします。