足掛け8年、来る日も来る日もお菓子を食べ続け、脳と胃袋においしさのデータベースを蓄積してきたパナデリア。おいしいものは数あれど、最近特に惹かれてしまうのが焼き菓子とコンフィズリーのたぐい。そっけない表情のサブレに思いもかけないような深い味わいを見つけたり、ガレットのザクッと固い食感の後に訪れるピリッとした塩味の心地よさにハッとしたり・・・。甘さと力強い味わいが凝縮したコンフィズリーも知るほどに魅力が増して・・。



そんな想いを募らせていたパナデリアに、パリから一通のメールが。

「素晴らしいビスケットを作っているお店に連れて行ってもらいました。ノルマンディーの良質のバターを使った、サブレやガレットなどを作るその名も『ラ・メゾン・ドゥ・ビスキュイ(ビスケットの館)』。パリではもちろんノルマンディー地方でも、この店まで行かないとまず入手不可能な超レアものです」


差出人はパリ在住にして、パナデリアスタッフにも負けない程お菓子に目のない、ライターの加納雪乃さん。


「これは、やるしかない!!日仏焼き菓子&コンフィズリー大試食会だ!!」


かくしてパナデリアのイベントが動き出したのです。



箱までかわいいラ・メゾン・ドゥ・ビスキュイ!



実は以前にもとり上げているこのテーマ。同じテーマだから・・・という心配をよそに、今回もサイトに案内を掲載してから1日もたたないうちに満員御礼となる盛況ぶり!参加者23名、さらにゲストにはコンフィズリーの大家 「パティスリー・ドゥ・シェフ フジウ」藤生義治氏、ショコラの伝導師 「オリジンーヌ・カカオ」川口行彦氏、そしてフランス地方菓子に造詣の深い大森由紀子先生という各ジャンルのスペシャリストを迎えることが決定しました。



ゲストの藤生義治シェフ(左)と川口行彦シェフ(右)



サブレ、ケーク、パード・ド・フリュイ、キャラメル、ボンボン・ショコラ、そしてその他のコンフィズリーと6ジャンルに別け、揃えに揃えたお菓子は合計48品目!事務所内は積み上げられたお菓子に埋め尽くされた状態に。
ここで心配だったのは、特にフランスから届くお菓子の管理方法。湿度の少ないフランスでは、サブレ類の包装はごくごくシンプルで、缶や紙の箱に入れてあるだけというものも。かたや温暖湿潤性気候の日本では6月ということもあり、パナデリアではこのために冷蔵庫を購入する事態にも発展!種類によっては、小分けにし、シリカゲルを入れてシーリングしたり、冷蔵庫管理できないお菓子のためには夜間もクーラーを付けたままにしたりと悪戦苦闘の日々が続いたのです。



そしてやってきた当日は、前日の雨模様から一転しての晴天。白金にある紅茶専門店「マリナ・ド・ブルボン」の2Fサロンが今回の会場です。時間直前まで事務局内で、お菓子のカットに追われていたパナデリアが30分ほど前に到着すると、すでに会員の姿がチラホラ。いつもながらその熱心さには頭が下がる思いです。ところが、いつもとは違う着席スタイルの優雅な雰囲気に「カットのお手伝いはしなくていいんですか?」、「座っているとなんだか落ち着かないなぁ」と、少し当惑気味の様子。
実はこれには理由がありました。スタッフで試食をする際必ず話題に上るのが、「参加者にも着席してゆっくりとお菓子を味わってもらえれば・・・」という、反省とも希望ともつかぬ願い。たくさんのお菓子を楽しみ、かつ参加者の懇親を兼ねるためにはやむを得ない立食形式ですが、やはり座って味わうからこそわかるおいしさがあるのも事実。今回はマリナ・ド・ブルボン側の協力もあって着席と立食の2部形式の会が実現したという訳なのです。



着席してパナデリアセレクションを味わう参加者たち



時節柄、初摘みのダージリンティを含めた5種類の紅茶が用意され、まずはテーブルに着席しての優雅な試食がスタート。藤生シェフ、川口シェフと同じテーブルについた参加者はちょっと緊張の面持ち。でも、シェフの話を聞き、一緒に楽しむ、これこそがパナデリア試食会の醍醐味です。
着席部門では、パナデリアがこれこそは!と思うこだわりの9品を集めたパナデリアセレクションなるものを紅茶とともにサーブしました。


【パナデリアセレクション】

・オリビエ・ロランジェ 「Galettes Cancalaises」
・ラ・メゾン・ドゥ・ビスキュイ 「Galettes Normandis“Sables”」
・ル・ルー 「パート・ド・フリュイ」
・シュクレ・カカオ 「クロッカン」
・アン・プチ・パケ 「アリュメット」
・オーボンヴュータン 「タンピフランボワーズ」
・パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウ 「ボンボン フィユテ」
・リリエンベルグ 「日向夏のクグロフ」
・オリジンーヌ・カカオ 「ケッツァ」


一通り試食が終わったところで、マリナ・ド・ブルボン水島シェフ特製のハートモチーフのクロカンブッシュが登場。会場内からは歓声があがります。




特製のウェディングケーキ。シューの中には紅茶のクリームが


マリナ・ド・ブルボンの製菓長を務める水島茂シェフ




キッシュやカナッペなども登場




そしていよいよ、立食版試食会のスタート。第1部では、【サブレ】、【パート・ド・フリュイ】、【コンフィズリーその他】、そして第2部では【ケーク】、【キャラメル】、【ボンボン・オ・ショコラ】がずらりと勢揃い。

手には評価表とカメラが!みな真剣な表情


ご自身のお店にもたくさんのコンフィズリーを揃える藤生シェフは、「こんなにたくさん食べたのは初めてだよ」とコメント。どれがおいしかったですかと、質問するとちょっとためらった後「金子くん(パリ・セヴェイユ)のパート・ド・フリュイ」とこっそり教えてくれました。

キャラメルに興味津々だった川口シェフは、夏に向けて試作中のライチ、カシス、マンゴー、ピーチの4種類のガナッシュを持参。お腹がいっぱいとは言っても、こんな貴重な機会はめったにありません。皆、端からテイスティングして、一足早い夏の味わいを楽しみました。特に人気が高かったのは、川口シェフも気に入っているというピーチとマンゴー。ピーチは、よく熟れた桃の皮の部分を思わせる味わい、そしてマンゴーは若く青い独特の風味が活きていました。



川口シェフによる発売前ショコラの試食は、かなりレアな体験


大森由紀子先生は「こんなにたくさんのコンフィズリーが並んでいてビックリしました!パナデリア会員の皆さんはお菓子愛好家とは知っていましたが、こうやってコンフィズリーを食べ比べるというのは日本のお菓子好きが成長した証ですね!」とコメント。会場に華やかさを添えてくださいました。



ゲストお三方の感想はいかに?




パナデリア事務局内でも、その後焼き菓子&コンフィズリー熱が再燃!あの味はどうしたら出せるのだろう、どうして自分で作ったものと違うんだろう・・・。さらには、フランスへ行きたい・・と思いは募るばかり。そんな訳で、次号の会報誌では試食したお菓子、そしてその分析など、もう少し詳しい内容をお伝えする予定です。どうぞお楽しみに!