9月末のパリ。高台からシャン・ド・マルス公園やエッフェル塔を一望できる、パリ・16区、トロカデロ広場の Cité de l'architecture & du patrimone の建物内にて、「ピエール・エルメ パリ」の秋・冬コレクション発表会が開催されました。

「アヴァン・ギャルドなパティシエ、そして香りの魔術師」(フランス「パリ・マッチ」誌)や、「パティスリー界のピカソ」(アメリカ「ヴォーグ」誌)など、いまやフランスだけでなく世界が注目する、ピエール・エルメ氏の新作コレクション。



洗練された雰囲気の漂うサロン



この日は、秋から発売される4種類の新作マカロンや、2009年のクリスマス、2010年のガレット・デ・ロワ、2月のバレンタインまで、エルメ氏の新しい味やデザインのお菓子が次々と登場。
白銀でまとめられたエントランスを抜けると、きもちのよい青空がみえるテラスの会場に。さらにシックにまとめられた、シャビーシックなテーブルセッティングのサロンにて、新作のアントルメを展示。パリのインテリア誌「Elle decolation」とコラボレートしたという、まさに伝統とモダンが融合した空間は、エルメ氏のコンセプトそのものを象徴しているようです。


パリの街が一望できるテラス


一方、テラスとテーブル席では、まずは新作のマカロンが4種類紹介されました。
ここ数年で、すっかりと世界的なお菓子として定着したマカロンですが、エルメ氏の新作マカロンは、なかでも抜きん出た個性のあるマカロンたち。五感を駆使した、素材の組み合わせが特徴、といえるのではないでしょうか。
というのも、構成するそれぞれの素材は、食感や風味、色や味の組み合わせ、後味など、細部にわたって研究され、厳選されたものばかり。エルメ氏の一見奇抜ともみえる、しかし絶妙な味覚のセンスで、小さな一粒一粒が、まるで宝石のように、アントルメやプチガトーに匹敵する、納得のいく味に仕上がっています。






4種類の新作マカロン

ジューシーな青りんごと野趣あふれるアンゼリカの風味のクレームに、小さな角切りのりんごをはさんだマカロン「Macaron Pomme Verte & Angelique」

ギリシャ語で「普遍の愛」という名のついた、「Macaron Agape」は、小さく切ったパンデピスと甘酸っぱいレモン風味のクリームをはさんだマカロン

スミレの香りでおなじみのEnvieシリーズのマカロン「Macaron Envie」は、カシスの生の果実をそのまま、2色のマカロンではさんである

「Macaron Fortunella」は、金柑のコンフィの角切りとアニスの香りのする金柑のクリームをはさみ、エキゾチックな雰囲気に







さらに、秋冬はクリスマスのビッシュ・ド・ノエルや、1月のガレット・デ・ロワ、2月のバレンタインと、注目の限定スイーツが目白押し。
今回、紹介されたのは、クリスマスに頂く、薪のかたちをした伝統的なお菓子「ビッシュ・ド・ノエル」ですが、フィユタージュ生地を使ったものや、チュアオ産のショコラノワールをふんだんに使ったアントルメや、テクスチャーの違うキャラメルを層にしたアントルメなどが続々と登場。バタークリームを使った伝統的な既存のビッシュ・ド・ノエルの概念とは、まったく違った素材やみせかたに挑戦している模様。
中でも「2千枚の層」、という名のついた「2000Feuilles」は、フィユタージュ生地とプラリネ風味のクリームムースリーヌを使った、ミルフィーユ仕立てのビッシュ・ド・ノエル。 おそらくこの生地を使ったビッシュ・ド・ノエルの提案は、エルメ氏が最初?!かもしれません。かわいらしい飴細工のサンタさんとロゴ入りのミニ鋸が、お菓子に愛嬌をそえています。

Buche 2000 feuilles design par le "Pierre Noel"

さくさくのパート・フィユテの間に、ノワゼットのプラリネと、プラリネ風味のクレーム・ムースリーヌで構成。薪をデザインした薄いパートダマンドで覆ったビッシュ・ド・ノエル。エルメサンタさんとロゴ入りの鋸が添えられて、ユーモアもたっぷり

Buche Chuao

小麦粉を使わずにチョコレートで焼き上げたビスキュイ生地、カシス風味のガナッシュ、カシス果実で構成。チョコレートは、チュアオ産の68%カカオのショコラノワールで、氏が注目している素材で、芳醇な香りとすっきりとした苦味が特徴。これに、あえて相性が難しいとされるカシスとチョコレートを調和させた、エルメ氏の新たな挑戦がうかがえるアントルメ。カシスの酸味や苦味が、おどろくほどチョコレートと合う、大人っぽい味わいが魅力

Buche Infinement Caramel

ブルターニュ風のパートサブレ、やわらかいキャラメル、キャラメルとレモンをあわせたエキスをしみこませたビスキュイ生地、マスカルポーネ風味のクリームで構成。すっきりとした風味のキャラメルのグラサージュで覆われています







また、この時期にあわせて、家族や大切な友人など、気の置けない人々で味わう、数人単位の大きなアントルメも全4点が登場。
発表会では、ぺリゴール産の黒トリュフを使った「Émotion à Partager Truffe Noire」がそれぞれのテーブルに配られました。「気持ちをみんなでわけあう」という意味の名がついたこのガトー、真っ白な陶器に黒いトリュフ風味のマカロンをこんもりと載せた姿は、モノトーンのコントラストがシックな雰囲気。気になる中身は、マスカルポーネチーズをつかった、黒トリュフの風味の甘いリゾット(!)に、ほっこりとした栗の角切りが。一見、個性のつよい素材たちですが、素材のもつ甘さや食感が調和され、リズミカルな雰囲気をかもし出しています。エルメ氏ならではの独創性にあふれるアントルメです。

Émotion à patager Truffe Noire

マロン風味のやわらかなビスキュイ生地、ぺリゴール産黒トリュフ風味のマスカルポーネのクリーム、黒トリュフ風味の甘いリゾットが真っ白な陶器の器に詰められています。黒いマカロンと生のトリュフをのせて


ガレット・デ・ロワは、ピエモンテ産のノワゼットをふんだんに使い、アパレイユにサクサクとした極うすのプラリネ風味のゴーフレット(パイユ・フォイユティーヌ)を加えた、食感の楽しいガレット。このほか、フランボワーズとライチ、バラの香りでおなじみの「イスパパン」のガレットも。オーソドックスなクレーム・フランジパーヌ入りのガレットをふくめ、来年初めには、全3種類が店頭にならぶそう。



Garette Infiniment Praliné

アーモンドとノワゼットのキャラメリゼをのせた、プラリネのクリームが入ったガレット・デ・ロワ


そして、2月のバレンタインデーは、ヴェネズエラやチュアオ産などの産地にこだわったチョコレートのアントルメが登場。このショコラは、氏が長年こだわっている産地ショコラ。小麦粉を使わない生地でチョコレートをふんだんに使って焼成した生地に、クリームを使わないでチョコレートだけでつくったショコラのムース・・・。このようにチョコレートの魅力を最大限にいかしたパーツを組み合わせ、酸味と苦味のあるカシスの果実をあわせた作品は、甘さ控えめの洗練された味わい。氏の新たな世界を感じられます。
そのほか、フェティッシュシリーズの「バニラ」のアントルメや、「イスパパン」のハート型のタルトやアントルメもあり、キュートな色合いとホワイトチョコレートがベースになった、やさしい味わいも揃います。



テーブルに花が咲いたような、華やかなアントルメは、「イスパパン」の風味がベースに。ドームの中には、ローズ風味のマカロンとムース、ライチとフランボワーズのコンポートと、フランボワーズ果実がぎっしりとつまっています。雪の結晶とバラをあしらい、愛らしい姿に仕上がっている


また、この日は、チョコレートについての新しい書籍も発表。「Carrément chocolat」という題のこの書籍。ダニエル・マントー氏による、エルメ氏へのインタビューによる、30章におよぶチョコレートの解説と、20種類のチョコレートを使った、オリジナルレシピが収録されています。
例えば「良いチョコレートの色とはどんな色か?」や、「チョコレートを使ったお菓子はどのようにしてレシピが作られるの?」「チョコレートの起源を信用すべきか否か」 などの質問に、チョコレートに精通したエルメ氏の秘訣と意見がぎっしりと詰まっています。そして、エルメ氏オリジナルのレシピが満載。さまざまな切り口で、チョコレートの本質にせまる、読み応えのある書籍です。
このように、秋冬でたくさんのコレクションを提案するピエール・エルメの新作ガトーたち、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。



チョコレートについての新しい書籍「Carrément chocolat」


BOITE A GOURMANDISE

エルメ氏が自ら厳選した、タブレットチョコレートの12枚セット。ショウガ風味のショコラレや、産地別(JavaやChuaoなど)のショコラノワール、カカオ豆の砕いたものが入ったチョコレートなど


(2009.10)









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