新しい年を迎えて心躍る1月。皆さんはどんなお正月を過ごしましたか?新年早々に前年を振り返るのもなんですが、パナデリアで盛り上がっているニュースといえばクリスマスパーティーのこと。「ああ、あのケーキおいしかったね〜」「あの○○も、もう一度食べたいなあ」なんて、いまだに気持ちを切りかえられずにいるスタッフも。そんなわけで、今回はパナデリア的クリスマスパーティーのようすをご紹介します。普段からパン漬けお菓子漬けの毎日を過ごす食いしん坊のパナデリアが、いったいどんなクリスマスを過ごすのか・・・?気になる人も、そうでもない人も、しばしお付き合いくださいませ!


パーティー会場は、ライターの浅妻さん宅。シンプルな壁に、浅妻さんが描いた作品がかけられています。繊細で滑らかなデザインが印象的






2008年12月某日

「いよいよクリスマスだね〜」
「パーティーのケーキはどうする?」
「ん〜、今年印象深かったところといえば・・・」
毎年12月を迎えるとこんな話題がちらほら。実は、クリスマス特集ページを作るため、既に散々ケーキをいただいたところ。それでもまたクリスマスケーキを楽しめちゃうのがパナデリアの特権?なのです。悩んだ挙句、オ・プティ・マタン、ピエール・エルメ・パリ 青山、レジオンの3軒に決定。武井シェフのお菓子のおいしさにすっかり虜になり、ルデュシェフには贅沢な講習会を実現していただき、そして藤巻シェフには神奈川県産の小麦収穫イベントにご協力いただき・・・と、2008年を振り返る上で欠かせないお店ばかり。これは期待できそう!

さすが、飲み込んでいるだけあって?ワインの絵も素敵!






12月某日

お店選びが無事に終わると、今度は主宰の三宅夫妻に不穏な?動きが。
「そろそろ今日あたり試作しないの?」
「ん、そうだな・・・あれとあれにするか」
「じゃあ、早速、食材を買って帰ろう!」
パーティーが近づくにつれ何やらコソコソヒソヒソ。そうかと思えば、事務局にもどーんと肉の塊が届いたりして、スタッフもびっくり。そう、我がパナデリアを率いる三宅清は、プロ顔負けの料理の腕前なのです。パンやお菓子はもちろん、料理にも精通しているのが彼の強み。さてさて、今年はどんなメニューがとびだすやら・・・。

この日ばかりは三宅も職人の顔つきに。イラスト入りのメニューを前に、真剣な表情






12月22日 11:00

いよいよパーティー当日。ケーキをお願いしていたオ・プティ・マタン(金沢八景)、レジオン(センター北)、ピエール・エルメ・パリ 青山(表参道)へは、3人のスタッフが手分けしてピックアップ。少し早めの時期だったこともあって、どのお店もまだ落ち着いたようす。でも、実はこれからが勝負どころ。“今年は23日と24日にほとんど集中していますね”ということで、22日〜24日にかけては、寝る間も惜しんでひたすら仕込みが続きます。パティシエの皆さん、頑張って!

ゆでたカネロニの中にはマロンクリームをたっぷりと。甘みとコクがあってクリームだけでも充分おいしい!

フォンをとった後の野菜をピュレにして、イカ墨のペーストをプラスすれば、黒いスープに変身!






14:00

会場となるライターの浅妻さん宅に到着。毎年お借りしているキッチン&ダイニングですが、いつ見ても本当に素敵です。プロ並みの厨房機器を前に、三宅シェフのテンションも最高潮に!もちろん、スタッフもエプロンを締めてアシストする気満々!と言いたいところですが・・・。
「三宅さ〜ん、このスープは何ですか?」
「それは、野菜のフォン(出汁)。キャベツ、人参、白菜、長ネギ、タマネギなどを煮込んで濾したもの。ちなみに、ネギは炒めたほうが甘くなるんだ」
「ほ〜う、なるほど。で、こちらのピューレ状のものは?」
「ああ、それは濾した後の野菜をミキサーにかけたもの。野菜の旨みが残っていて、甘みもあるからおいしいよ。ちょっと味見してみて」
「ほんとだ、甘〜い!」
サポートするというよりは、どう見ても料理教室状態。そして作業台の上には、厚みのある真鯛や大ぶりの牡蠣、プリプリの鹿肉に艶のある雲丹に・・・と、不景気なんてどこへやらの豪華な食材がずらりと並びます。やっぱりクリスマスはこうでなくっちゃ!

プリプリの鹿肉はソテーした後オーブンへ。ぱさつかないように火入れには注意します

空焼きしたタルト台に煮詰めた生クリームを注いで、オーブンの中で更にクリームを煮詰めれば、濃厚なミルククリームの出来上がり






16:00

三宅シェフの作業は順調に進み、いよいよパーティーがスタート。ブルゴーニュのアリゴテを片手に乾杯すれば、気分はすっかりクリスマス!早速メニューに目を移すと、“お菓子の国へ”の文字がとびこんできました。も、もしや、今夜のメニューはお菓子のフルコース?!
「いやいや、料理なんだけど、お菓子に仕立てて出したらどうかなと思って」
なるほど。お菓子仕立てのコースだなんて、なんともお洒落な響き。では、いただきます!





〜 お菓子の国へ 〜

ÉCLAIR 
生ハムとラディッシュのエクレア
オリーブオイルとシャンパンビネガーのマヨネーズソース


細長く焼いたシュー生地に生ハムとラディッシュ、そして鶯色の綺麗なソースをはさめば・・・?まるでお菓子のエクレアのよう!決め手は、上質のオリーブオイルで作った自家製マヨネーズ。フルーティーな香りが豊かで余韻も爽やかです。

GOBOU
ごぼうのスープと広島産のカキ カリカリチーズ添え


“うーん、おいしい♪”ダントツ人気だったのがこのスープ。何種類もの野菜が渾然一体となったまろやかな甘みの中から、ゴボウが力強く香ります。フォンをとった後の野菜をまとめてミキサーにかけてポタージュ状にし、ゴボウだけ後から加えているのがポイント。このスープと、軽くソテーしたカキとが口中で合わさる瞬間のおいしさといったら・・・!

ROUGE
紅いジュレとたくさんの野菜


細長いグラスに色とりどりの野菜を散りばめ、野菜のフォンを使ったジュレを流した一品。底にはビーツで色づけした紅いジュレを少し。“きれい〜”“食べるのがもったいない〜”と言いつつも、スルスルとお腹の中へ。さりげなく効かせた柚子が爽やかにまとめてくれます。

SOUP
ポルチーニのスープと和栗のカネロニ


和栗と生クリームを合わせたマロンクリームをゆでたカネロニの中に詰めれば、ちょっとしたデザートのよう。そしてまったりとしたクリームには、野菜のフォンとポルチーニを合わせたスープがぴったり。野菜の旨みが溶け出したフォンからポルチーニが上品に香ります。

POISSON GALETTE
焼きズッキーニとパプリカを重ねた鯛のグリル ガレット仕立て


輪切りにしたズッキーニとパプリカをソテーしてセルクルに敷き詰め、肉厚の鯛をソテーしたものを重ねます。緑、赤、白の色合いがなんとも綺麗。白バルサミコを煮詰めた甘酸っぱいソースでキリッと引き締まります。

AIGRE DOUCE
ブラッドオレンジのグラニテ


鮮やかな赤色のグラニテで口中がひんやり〜。濃厚で爽やかな酸味が駆け抜けます。お肉の前に、すっきりリセット!

SATOYAMA
鹿肉のロティ 栗 ヘーゼル 甘い赤ワインのソース


厚めにカットしてお皿に立てかけ、上にチョコレート色のソースをかければ、鹿肉がガトーショコラのような装いに!まわりをソテーした後、オーブンで適度に火を通したお肉はしっとり柔らか。赤ワインを1本煮詰めて作った甘〜いソースをつけると、いくらでもいただけそう。やっぱりこの季節はジビエがおいしい!

ICHIGO
ミルククリームのパイ イチゴとキャラメル


パートブリゼ+練乳のようなミルククリーム+イチゴ+キャラメル。目にした瞬間にそのおいしさが想像できるほどの組み合わせです。この時ばかりは、各人が思い思いに飾りつけ。“私のが一番だな!”“ん〜私ってセンスあるかも!”他人のデコレーションには全く目もくれずほくそ笑むスタッフの面々。まあ、見た目はどうあれ、味は最高でした。





「いやあ、食べた食べた〜」
「お腹いっぱい〜」
「・・・さて、デザートタイムといきますか」
フルコースの後、休むまもなく第2章へと突入するのもいつものパターン。なんといってもクリスマスケーキで締めなければパナデリアとは言えません。お皿に盛られたたくさんのケーキも、食べ始めればなんなくお腹の中へ。メリハリ系、ナチュラル系、和み系・・・と見た目も味わいも三者三様で楽しいティータイムとなりました。そうそう、クリスマスに定番のシュトーレンだって外せません。


〜 DESSERT 〜



ピエール・エルメ・パリ 青山
ビッシュ・イスパハン


さすがはピエールエルメ!そのビビッドな色合いといい鮮烈な味わいといい、ビッシュといえども他の追随を許しません。バラとライチとフランボワーズの組み合わせは紛れもなくイスパハン。ところがアントルメとしていただくと、ますますインパクトのある味わいになるから不思議です。滑らかなグラサージュ、カリサクッとしたマカロン生地、コクのあるバタークリーム、そしてフレッシュなフルーツと、食感のほうでも多様な変化で喜ばせてくれます。エルメ氏ならではの鋭い感性が光る作品。


ピエール・エルメ・パリ 青山
ビッシュ・モンテベッロ


ピスタチオ風味のバタークリームも、ダクワーズ生地も、はっきりと甘くて濃厚。それでいて重さを感じさせないのは、メリハリのある味わい、キレのある喉越しのおかげ。軽い口当たりのクリームとしっとりやわらかい生地からはピスタチオの杏仁臭が立ち上り、口中で一体となって馴染みます。センターの苺のジュレも秘かなポイント。味の透明感が生まれます。


レジオン
和栗のガトーモンブラン 


栗とチョコというシンプルで王道の組み合わせも、藤巻シェフの手にかかれば驚くほどピュアな味わいに。オーガニックチョコレートKAOKAを使ったムースも和栗を使ったババロアも、素材の良さがそのまま活きています。上にたっぷりと絞ったマロンクリームは、まさに栗そのものといった贅沢さ。食後でも体に優しい感じが嬉しい。


オ・プティ・マタン
シブースト 


“他の店とかぶらないクリスマスケーキにしたかった”との武井シェフの言葉通り、クリスマスに食べるシブーストは不思議と新鮮。パリンと軽快なキャラメルの下にはプリンのようにコクのあるシブーストクリーム、更にシャッキリとしたリンゴのソテー、しっとりジューシーなアーモンドクリーム、サクサクのフィユタージュと続きます。味わいも食感もメリハリを持たせつつ、食べ心地は優しく軽やか。


ラビーン
シュトーレン 


ドイツの老舗「ラビーン」といえば、バウムクーヘンが有名。伊勢丹で購入可能ですが、クリスマス時期にはシュトーレンも登場!大きくてどっしりしっかり、かなりの重量感があります。焼きは浅めで少し生っぽく感じるほどのしっとり感。独特の粉の味わいが楽しめます。レーズンやオレンジピールが入り、カルダモンをほんのり効かせて爽やかに。


マ・プリエール
シュトーレン 


生地を黒糖のみで仕込んだという個性派シュトーレン。茶色がかった生地は香ばしさ満点で、優しい甘みとコクが後を引くおいしさ。それでいてパンタイプの軽い生地なので重さを感じさせません。センターに忍ばせたしっとり滑らかなマジパンとも好相性です。ラム酒漬けレーズン、オレンジピール、レモンピール、アーモンドとフィリングもたっぷり。シナモンやアニスなどのスパイス使いも絶妙です。


ティグレ
シュトーレン 


バターの香りが濃厚で、さっくり、しっとりとした生地が特徴。発酵をとらないように仕上げているため、ソフトクッキーのような風合いです。リッチな生地の中には、まるごとドライイチジクや大きくカットした胡桃、ヘーゼルナッツがごろごろと。ダイナミックな食感がアクセントになっています。甘さ控えめなので、素材の味が引き立つ仕上がりに。


エディアール
スピットメイドケーキ 


“いったいどうやって作っているの?!”パナデリアでもひとしきり話題になったツリー型のバウムクーヘン。遊び心溢れるデザインはさすがです。卵色をした生地からは、バニラとラム酒が入り混じった香りがふわ〜。甘〜い香りに誘われて口に入れると、バターの風味がじんわり広がります。食感は軽めで食べやすいタイプ。紅茶を合わせるのが良さそうです。





散々食べつくして飲みつくした後は、恒例のプレゼント交換。“今年はあみだくじにしよう!”とのリクエストにくじを作ってみたものの、自分のプレゼントが当たってしまうというオチがついてあえなく失敗。慌てて例年通りのクリスマスソング方式に切り替え、プレゼントをまわし始めたものの・・・?今度は自分のところにプレゼントが戻ってきてしまうというハプニングが。もしかして、皆、へべれけ状態?飲んでいない人もいるはずなのに・・・。再びジングルベルを熱唱して、3度目の正直でようやく受け取ることができました。はあ、プレゼント交換がこんなに大変なものだとは知らなかった!



そんなわけで昨年のパナのクリスマスパーティーは、やっぱりバタバタの顛末に。でも、シェフたちの想いが詰まったケーキやシュトーレンのおいしさは、しっかりと心に刻み込まれました。今年もたくさんのおいしい想い出が作れますように!(2009.01)







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