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卵とバターが香る貝殻型の“マドレーヌ”・・・。 フランスはもちろん、日本でも馴染み深いこのお菓子。かのスタニスラス・レクチンスキ−公が催した宴会で、お菓子職人がけんかをしてお菓子をつくらなくなってしまい、急遽メイドにつくらせたのがこのマドレーヌだという話は、きっとご存知の方も多いでしょう。この物語には、実は続きが。のちにコメルシー地方の職人が高額でマドレーヌのレシピを買取り、以来、コメルシー地方の銘菓になったそうです。 |
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フランス全土で親しまれている"マドレーヌ"
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著者の大森由紀子さんは、ご存知の通り、フランス菓子でも特に地方菓子への造詣が深い方。前著「私のフランス地方菓子」や「フランス地方のやさしい焼菓子」など、同じフランスという国であっても、驚くほど個性豊かな地方の魅力を様々な形で紹介してきました。 今回は、前著「私のフランス地方菓子」から13年という歳月を経て、装丁も新たにリニューアル。お菓子のつくり方が充実した、より内容の濃い一冊になりました。 |
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かたちの美しい“ビスキュイ・ド・サヴォワ”(左)とピンク色のプラリネをあしらった“ブリオッシュ・サン・ジュニ”(右)はアルプス地方のお菓子
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〜 フランスの地方を旅すると、パリでは見たことのないお菓子にたくさん出会います。それらは、その土地でしかつくられていません。・・・(中略)・・・そこにはあるのはフランスの地方の人々の、お菓子に対する愛着と誇りです。〜(本書より)
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本書で紹介されているのは、“ガレット・ブルトンヌ”、“カヌレ・ド・ボルドー”、“クグロフ”といった、馴染みのあるお菓子から、その土地に行かなければ食べることができない貴重なものまで様々。
例えば、“独自の文化をもつ国境地帯”のバスク地方なら、“べレ・バスク”や“ガトー・バスク”、“フランスきってのお菓子どころ”のアルザス地方なら、“クグロフ”、“アルザスのチーズケーキ”、“ルバーブのタルト”に“マンディアン”・・・といった具合。
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ベレー帽をかぶる習慣のあるバスク地方ならではのお菓子“べレ・バスク”(左)。日本でも見かける“ガトー・バスク”(右)は、17世紀からつくられ始めた伝統的な焼菓子
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おいしそうな写真とその背景を目にしていると、 このお菓子はどんな味がするんだろう・・・?へぇ、こんな背景があったんだ! と、なんだかワクワクした気持になってきます。 |
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生クリームを発酵させた「クレーム・ドゥーブル」でつくるブレス地方の“ガレット・ブレッサンヌ”
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おいしいアーモンドがとれるプロヴァンスならではの焼菓子“松の実のクロワッサン”
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地方で伝えられている菓子だけに、日本はもちろん、フランスでも手に入りにくいお菓子がほとんどですが、それぞれにレシピが紹介されているので、ぜひ挑戦してみてください! 地方菓子は素朴なものが多いので、比較的簡単につくれるのも嬉しいところ。食材や型の入手先も親切に紹介されているので、とても参考になります。 |
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発祥の地、ルーアンでも今や希少な“ミルリトン”。本場の味を作ってみてはいかが?
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なんと、古くは中国にルーツをもつという“パン・デピス”
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レシピ本としてはもちろんですが、地方とお菓子についての読み物などもあり、勉強にもなる本書。長年にわたり、受け継がれ、守られ、そして愛されてきたお菓子の魅力は、きっとあなたを虜にしてしまうことでしょう。
見て、読んで、つくって、そして味わって。 まさに、お菓子好き、必携の1冊です! |
新版 私のフランス地方菓子 お菓子の物語とレシピ
著者:大森由紀子 発行所:株式会社 柴田書店 定価:¥1,900(税別) |