スイスの老舗チョコレートブランド「フェルクリン」。皆さんはご存知ですか?
フェルクリン社は、主にプロ向けの高級クーベルチュールを手がけるチョコレートメーカー。チョコレートのケーキやボンボン・オ・ショコラなどの原料として、プロが認めるブランドです。
つまり、“えッ? 知らない”という方も、形や姿を変えた「フェルクリン」のチョコレートを、きっとどこかで口にしたことがあるかもしれません。
そのフェルクリン社が、日本での展開を一層拡大させるべく、記者説明会を行なうとのこと。
さっそく、パナデリアも伺ってきました。



スイス・フェルクリン社のクーベルチュール



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マックス・フェルクリン社は、約100年前に誕生した家族経営のチョコレートメーカー。“Small is Beautiful”をコンセプトに、あくまで少量高品質にこだわり、伝統的な手法で高品質なチョコレートを作り続けています。ちなみに、その技術とは、1874年にスイスで発明されたもの。なんと、130年以上もの間、同じ技術にこだわりつづけているというから驚きです。



マックス・フェルクリン社CEOの
クリスチャン・アシュワンデン氏




そんなフェルクリン社の日本での歴史は、35年前にさかのぼります。
橋渡し役となったのは、創業者の息子さん。旅行で日本を訪れた彼は、持ち前の好奇心から、スイスとはまったく異なる日本の食文化に興味をもつようになったそうです。そんな彼のことを知ったスイスの新聞社は、彼に記事を依頼。記者として、さらに日本の食文化を掘り下げていくうち、日本の食文化や、品質へ妥協することのない日本人の特徴に、ますます興味を深めていったのだとか。そして、彼の心に芽生えたのが、『日本で、自分たちが作るすばらしいクーベルチュールを提供したい』という想い。そこで、当時から日本でのビジネスに長けていた「DKSH(旧シイベルヘグナーローマテリアル)」と手を組み、日本で「フェルクリン」のチョコレートを販売するようになったのだそうです。


DKSHジャパン株式会社 代表取締役社長
ヴォルフガング・シェンツエンバッハ氏



ところで、スイスのチョコレートというと、思い浮かぶのは、“ミルクチョコレート”や“ホワイトチョコレート”。ビターなものは、あまり作られていないイメージがありますが・・・。
「フェルクリンのクーベルチュールは、多くのプロの方から選ばれています。スイスのチョコレートというと、どうしても、“ホワイト”や“ミルク”といったイメージがあるかもしれませんが、それは過去のもの。10年ほど前から、トレンドはビターへと流れており、ここ数年、フェルクリン社もダークチョコレートに力を入れるようになりました。また、“ホワイト”や“ミルク”に関しても、“甘ったるい”“油っぽい”といったのとは別の、クオリティの高いものが登場しているんですよ」
と説明してくれるのは、MOF受賞者でもあり、マックス・フェルクリン社コンサルタント兼アンバサダーを務める、ステファン・グラシエ氏。コンサルタントとして世界中を駆け回るグラシエ氏ですが、特に、フェルクリン社の歴史や伝統、そして味に惚れ込み、コンサルタント兼アンバサダーに就任したのだそうです。



ステファン・グラシエ氏。フランス・ノルマンディーの
出身で、2000年にMOFを取得




「チョコレートのクオリティで重要なのは、味、輝き、テクスチャー、均質性。そして、カカオ本来の味があるかどうか。私自身のことを言えば、科学的、人工的なものは好きではありません。例えば、カラフルやシャイニーといった見た目だけの商品は、最初は買うけれど、2回目はどうでしょう? 私にとって、外見よりも重要なのは『味』。とにかく、味では絶対に妥協したくないと思っています。フェルクリンは、“本来のチョコレートの味”という今のトレンドも抑えていて、クオリティも高い。非常に素晴らしいクーベルチュールだと思います」


そこで、さっそくフェルクリン社のクーベルチュールを使ったボンボン・オ・ショコラを試食させていただきました。






  クリオロソバージュ

なめらかで口どけのいいガナッシュは、すっきりとキレのある味わい。マール・ド・シャンパンの華やかなアロマがフワッと香ります。ボリビアの湿地に自生する野生クリオロ種のクーベルチュールのフルーティな味わいをいかしたという一品。



  ジャンドーヤシトロン

爽やかなレモンの香りのガナッシュに、コクのあるプラリネを合せたボンボン。ベネズエラ・マラカイボ地方で採れるクリオロ種のみを使用したこのクーベルチュールは、世界で初めて産地・品種を指定したもの。



  トンカ・インフュージョン

独特の甘いアロマをもつトンカ豆・・・。クリーミーでナッティなカカオの香りが、長い余韻を残します。18世紀からドミニカ共和国サマナ半島で栽培されているエルベシアクリュアシェンダ74%を使用した、香り高いボンボン。






そして、もう1種類、試食のショコラが登場。これは、フェルクリン社が、創業100周年を記念して作ったという、2つの特別なクーベルチュール。そのひとつ、"チェンテナリオ クルド 70%"は、チョコレートのなめらかさを作るコンチングを行なわない数世紀も前の製法で作られたものとのこと。これは気になります!







“チェンテナリオ クルド 70%”

ボリビア共和国・ベニ地方とベネズエラ・マラカイボ地方のクリオロ種を中心としたカカオ豆を使用。シャリシャリッとした独特の食感と、カカオニブのような野趣溢れる香りが特徴。コンチングをしないため、荒削りな印象ながら、カカオの香りがしっかりと味わえます。ちょっとクセになりそうな、個性的なチョコレート。


“チェンテナリオ コンチャ 70%”

一方、コンチャは丸2日間(48時間)もの間、コンチングを行なった現代版。クルドに比べ、驚くほど口当りがなめらかで、味わいもまろやか。世界で1%にも満たないといわれるクリオロ種の香りを上品にいかしたチョコレート。




「チョコレートは伝統的なものですが、トレンドも重要。現在は、ビター感と本来のカカオの味があるチョコレートが求められていると感じています。中でも私たちが得意とするのは、ひとつの産地・品種のカカオ豆から作る“グランクリュ”のクーベルチュールなんです」
と、マックス・フェルクリン社CEOのクリスチャン・アシュワンデン氏。
確かに、老舗メーカーとはいえ、時流を捉えるのもまた必要なこと。今まで培ったノウハウで、おいしいショコラをもっと日本に広めたい!そんな気持が伝わってきます。



カカオ豆を厳選し、丁寧に。カカオ豆の個性はありながら、決して主張しすぎないので、様々な素材と合せられそう



フェルクリン社のクーベルチュールを展開するDKSH社は、パティシエの育成を目的としたイノベーションセンター・コンディラマ(磯子)での活動のほか、パティシエの世界大会WPTCの日本チームスポンサーとしても尽力。今後は、フェルクリンの味をもっと広範囲に広めるための活動をしていきたいとのことです。その目標は、2012年までに、日本でのフェルクリンの売上を2倍にする、という大規模なもの。今後は、より多くのシチュエーションで、フェルクリンを使ったパティスリーやチョコレートが食べられるようになりそうですね。



日本での活躍に向けての意欲は満々。
今後を楽しみにしています!



(2009.10) 








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