アコルト 松尾 雅彦さん |
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<経歴> 人材派遣会社で5年間つとめたあと、2ヶ所のパン屋で修業。独立。 |
![]() もともとものを作ったり、表現することが好きだったんです。20代前半はロックバンドをやっていたんですよ。それなのに、おとなしくサラリーマンの道に入ってしまった。しかも勤めた先は人材派遣の会社。「ものを作る」とは一番遠いところにあるじゃあないですか。そのせいか、職人の世界への憧れが日に日に強くなって結局辞めてしまったんです。 さてどうしようというところに、たまたまテレビでパン職人の特集を見ました。パンが好きだったこともありますが、これからまだ日本ではパンの需要がのびるだろうという気持ちもあり、この道に入ることを決めたというわけです。調べていくうち、天然酵母を使ったパンというのをはじめて知りました。どうもこれが面白そうだ! ぴんと来て、天然酵母でパンを作っているという店に入れてもらうことになったときには、もう30才を超えていました。 ![]() 1年ずつ2つの店にいたのですが、2軒目の店にいたとき、客として来た西野と出会い、その後結婚しました。彼女はもう長いこと玄米菜食を実践していて、自分にもマクロビオティックの考え方というものを教えてくれたんです。陰陽に基づくこの考え方を学び、実践したところ、食生活だけでなく生活や体が変わったという感じなんです。吹き出物もきれいになくなり、なにをしても治らなかった水虫までが、気付いたらなくなっていました。そして体の調子もとても良くなりました。そういうわけで、これを一生の仕事としようと決意するのにそう長い時間はかかりませんでした。そして西野とこの店を出したんです。 パンはサワー種、国産小麦とカナダの1CWという小麦、日本アルプスの天然水、ゲランドの塩が基本材料。サワー種も粉もいつも同じ状態ではありませんから、安定した商品をお客様に提供する難しさは日々感じています。たまには「完璧!」という出来もありますが、同じ日に同じパンを同じように焼いても、完璧になることはめったにないし。「今日の出来は最高」と店中のパンを見て言えるようになるにはまだまだ。でも、そうなるよう努力しています。 出店の地域は、マクロビオティックやオーガニックへの関心が日本人より強い、外国人が多い場所をとここを選びました。サンドイッチの種類が多いのは、ここで売っているパンに合う素材や食べ方を知って頂きたいからです。
![]() でも、この完全オーガニックの姿勢は貫き通すつもりです。店が繁盛しなくて経営がやっていかれなくなったときには、閉店ですね。パンの価格を下げるため低農薬の素材で代用することは考えられません。それではコンセプトがまったく違ってしまうから。自分が食べていないもので商売はしたくないじゃないですか。そういう意味で、自分が売っているのは「商売のパン」ではなく「趣味のパン」なのかもしれません。 取材日2002年6月6日 アコルト |