(上部写真:
「韓国『toujours』とパナデリアがいくパン・ケーキ屋さんめぐり」
お話を伺った時の一枚です)



消費不況やデフレによる価格破壊が言われて久しい。その傾向はパン業界においても例外ではなく、リテイルベーカリーが閉店に追い込まれるというケースも珍しくない。だが、そんな逆風にも負けず勢いづいている店がある。それは郊外型大型ベーカリーだ。今回ご紹介する千葉県流山市のミルポンド江戸川台店もそのひとつ。最寄の東武野田線江戸川台駅からは15分ほどを要し、デパ地下や商店街のように利便性が高い場所ではない。にもかかわらず、2004年10月のオープン以来売れ残りはないという。その人気の秘密はどこにあるのだろう。シェフの飯島進さんにお話を伺った。




「どうしたらお客様に喜んでいただけるか、そのための工夫を欠かしません。こちらの都合ではなくお客様の立場に立って考えればいいんですよ」

自家製天然酵母を使用して石窯で焼き上げるパンは、クラストがパリッ、クラムはふわっとやわらかいのが特徴だ。そのパンのアイテム数は無限にあるという。次々と新商品を店頭に並べるが、売れ行きがおもわしくない商品は3日でやめることもあるというから驚く。

「お客様をいつも驚かせていたいんです。だから頻繁に商品の入れ替えをしています。商品を安定させてしまったら他のお店と変わらなくなってしまう。売れていても、定番商品以外のものを1ヶ月以上続けることはないですね」


驚かされるといえば、定番になった「ロングソーセージ」
いわゆるソーセージパンだが、その長さはなんと80cm!広い売り場の中でも一際目立つ存在だ。


「窯一段に10本程度しか入らないので、一日に何度も焼き上げます。効率は良くないかもしれませんが、お客様に大変好評なのでやめられません(笑)。平日でも50本、週末になると100本も出る人気商品なんです」



商品構成以外にも飯島さんがこだわっているのは「焼きたて」だ。焼きたてをアピールしているパン屋は少なくないが、通常は焼き上がり時刻が決まっていることが多い。ところが、ミルポンドではお客様に合わせてパンを焼くのだそうだ。



「お客様が一番多い時間帯に焼き上がるように、日によって焼き時間を変えているんですよ。ポイントは朝。朝の流れで一日の客足が大体つかめます。例えば雨上がりの日なら、午前中は洗濯物があって忙しいですよね。すると午後からお客様が増えます。そんな時はパンの発酵が進まないように一時止めておけば、ピーク時を見計らって焼きたてを提供することができるんです」

あくまでもお客様のペースに合わせる、その姿勢には頭が下がる。


そしてパン以外にも、お客様を惹き付けるポイントがまだまだある。店舗と駐車場を合わせた敷地面積は200坪。広大なスペースを確保できるのも郊外型ならではの強みだろう。そこに大きなログハウス風の店が建ち、吹き抜けの広々とした店内でゆっくりとパン選びが楽しめる。さらに購入した焼きたてパンを熱々のうちに食べて欲しいからと、カウンター席やテラス席を用意。週末には、フリードリンクを片手にパンを食べながらくつろぐファミリーなどで溢れかえる。



「お客様の目的はパンを買うことだけではないんです。家族やカップルにとって、ここに来て食べて帰るということがひとつのイベントになるようにしたい。そのために、パンの味はもちろんのこと、雰囲気作りも考えないと。それから、接客態度も大切な要素です。いつも笑顔でお客様を迎えて欲しいから、店員のバイト時間は4時間までにしています。何故って、笑顔がもたないからですよ(笑)」

おいしいパンは当たり前の時代。味だけではなく、空間作りやサービス面などのプラスアルファの部分をどのように充実させるのか。そのためには良いスタッフやチームワークが欠かせない。飯島さんのように、スタッフを育てていく立場であるシェフのバランス感覚の良さが求められているのかもしれない。(2005.01)




ミルポンド 江戸川台店
住所千葉県流山市青田140-8
TEL04-7154-1414
営業時間6:30-19:30
定休日
アクセス東武野田線江戸川台駅より徒歩15分