ヒマラヤンベーカリー 内山和英さん 内山裕子さん | ![]() |
<経歴> 和英さん 1972年生まれ 証券会社に入社 地元 横須賀のパン屋さん、横浜 ブレーメン、藤沢 パイニイ を経て 2003年11月にヒマラヤンベーカリーOPEN 裕子さん 1975年生まれ アパレル会社に入社 アンデルセン、茅ヶ崎 ナノシュ、藤沢 パイニイを経て、和英さんとともにヒマラヤンベーカリーOPEN |
「学校を卒業後、証券会社に就職したんですよ。4年ほど務めていました。でも、だんだんと"作る"仕事をやりたいと感じるようになって。そんな時に、親戚に地元のパン屋さんを紹介してもらえることになりパンの道へ。やってみると、実は早起きは得意だし、ノルマに追われる前職とは違い、自分で"作る"ということが楽しかった。いつか自分で店ができたらいいな、とは漠然と感じていました。」 とご主人の和英さん。 その後、横浜「ブレーメン」、藤沢「パイニイ」に2年と、パン職人としての経験を重ねる。 | ![]() |
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一方、奥様の裕子さんもスタートはパンからではなかった。 「最初は、アパレルの会社の人事部に勤めていました。洋服を"作る"仕事をする人の中で、自分もモノを作りたいと思うようになって。高校生の時にパン屋さんでアルバイトをしたこともあってパンは身近なものでした。そして、たまたま自分で作ってみたパンが上手くできたんですよね。『パン屋に入ろう!』と自分の中ですごく盛り上がってしまって。 その勢いで、新規オープンだったアンデルセンに入りました。新しいお店だったので自分のようにパンをやったことのない人も沢山いて、当時は成型をして喜んでいるような状態、毎日とても楽しかったです。 でも本格的にパンをやるならこのままじゃいけない、そう感じて地元茅ヶ崎の「ナノシュ」に入りました。よく行く好きな店だったし、向こうも顔を覚えていてくれたんですよ。 以前は、自分が終わる時間になれば別の人に後を任せられたし、なんとなく他の誰かがやってくれるという感覚がありました。それが「ナノシュ」では何でもやれて当たり前のスタンスで、みんながものすごく忙しそうに働いている、これには最初戸惑いました。でも、負けず嫌いパワーも手伝い、パンとはどういうものか1から勉強させてもらったと思っています。 今お店に入れている溶岩窯の使い方も「ナノシュ」で学びました。普通の窯がフライパンで周りから熱を通すような感じだとすると、溶岩窯は空気で包み込んで焼くような感じでふっくらと熱が入るので、今は焼き菓子も含め全商品を溶岩窯で焼いています。」 |
パンとは別世界で仕事をしながら、"作る"ということに惹かれていった2人。その出会いは、藤沢の「 パイニイ」だった 。 『お店をやるから一緒にやらないか』という和英さんの言葉に、裕子さんも決意を固める。そして、和英さんの地元である横須賀で「ヒマラヤンベーカリー」をオープン。 「18歳位から、自分の空間を作りたいという気持ちがあったんです。昔から音楽が好きで、好きな音楽やモノに囲まれているのが好き。だから、自分のお店をやってみたい!とはずっと思っていました。」 という裕子さんのセンスがいかされた店舗は、雑貨屋さんを思わせるかわいらしい雰囲気。一般的な商品に加え、コーンとブロッコリーのパンや、ゴマあんを入れた「 カンパーニュ ゴマゴマ」 など『 もしお店をやったらこんなのをやってみたい』と考えていたというパンも店頭に並ぶ。商品開発は主に裕子さんの担当。 | ![]() |
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「小さいものが好きなんですよね。だから小さいハード系も多いです。でも、本当は切売りをしたくないという理由もあるんです。カットしたところから老化が進むし、ビニールに入れなくちゃいけないのも嫌。だから1/2にカットして売るなら、半分のサイズを作りたい。自然なものが好きなので、クリームやフィリングは自分たちで作っています。今はルヴァン種をライ麦から起こし、粉の風味を生かすうように工夫をしているんですが、今後は天然酵母100%のパンもぜひやりたいと思っています。」 商品の3割くらいは食事パンというラインナップ、地元のお客さんの反応も気になるところ。 |
「ハード系は飾りになっちゃうかな、なんて話してたんです。最初はそれでもいい、と思って出したところ、年配の方も含めて意外に普通に受け入れてもらえたようです。 ハード系はもちろんやりたいですが、かたよりがあるのは好きじゃないので、色々な商品を取り揃えたいと思っています。いくらハード系がおいしくても、自分がお客さんの立場だったら飽きてしまうし、やっぱりお客さんもかたよると思うんです。 この辺だと、おばあちゃんの2人組がパンを買いに来てくれたりするんですよね。で「ジャムパンはないの?」なんて聞かれることがあるんです。昔風のパンでも、食べたい人がいるなら、スタイルやジャムを変えて自分なりのものを作って食べてもらいたい。それで最近ジャムパンを出したんですが、やっぱりとても好評です。 「ナノシュ」では『10人いて1人しか好きじゃないというパンでも作る意味がある』という少量多品種がモットーだったのですが、そういうパン屋にしたいと思っています。 パン屋では、欧米文化の本物の味が100円ちょっとで買うことができる。それってすばらしいことだと思うんです。だから色々な人に食べてもらいたいですね。」 | ![]() |
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まだまだ勉強しなくちゃいけないことがあるし、苦労も尽きないという2人のモットーは、 「基本に忠実に、丁寧に」。 "作ること"と"好きなもの"を融合させた、気負いのない自然体の2人。パン食が定着したといわれる日本のパン文化に、新たなステージの誕生を感じさせる、現代のパン職人といえるのではないだろうか。 |