和光チョコレートショップ ルショワ シェフショコラティエ 川口 行彦さん
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ルノートル氏のところで修業していたとき、本物のメゾンの味作りというものを学んだような気がします。それまで自分が経験してきたのは、材料をただ加工してプラモデルのように組み立てていたように思います。マカロンにしても本物 はアーモンドをローストして皮をむき、プラリネをつくったり、タンプルタンにし、そこから作っていきます。それが当たり前の作業として作られていることに驚きました。 私がチョコレートに携わるようになった当時は、二次加工するためのクーベルチュールのメーカーはまだそんなにたくさん日本に入っていませんでした。 スイスでは昔からチョコレート専門の菓子学校もあり、製造に使われる機械メーカーや原材料メーカーもたくさんあります。ネスレ、スシャールなど、もとはミルクの加工がメインでチョコレートを作った歴史があります。 |
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チョコレートにおいて、スイスのものとフランスのものを比べると、素材も異なりますが大きな違いは文化の違いだと思います。フランス人は味に対して貪欲に取り組んでいく国民性だと思います。 ヴァローナも後発メーカーですが、チョコレートの味への取り組みという点ではすばらしい会社です。最近になってクーベルチュールの選択肢が増え、 今ではルショワの方から、味やキャラクタに関して注文を出せるまでになっています。 |
チョコレートボンボンと、いわゆるチョコレートを使ったケーキには大きな違いがあります。ボンボンはわずか10gのなかで味を表現しなくてはなりません。一方、生ケーキ
のほうは50−80gの中で味を表現します。素材にしてもミルク、フルーツ、
香りなど掛けて割って足して引いていく作業を繰り返すわけです。 ですから味作りも当然ながら品質の管理、例えば大きさとか色、形、香り、包装まで 一粒一粒大変な手間をかけて作ります。 そういう意味で、ボンボンで店を成り立たせていくというのは大変な部分があります。たとえば、100個ぐらいを、形、中に入れるガナッシュなどを均一に作りこんでいくのは簡単ですが、1000個から2000個同じ作業に集中して均一の仕上がりを保つというのには 、かなりの技術が必要です。ルショワでは一日1万個作ることもあります。 私自身は多少不恰好でもおいしければいいと思うのですが、それはお客様が許してくれませんよ。チョコレートにも当然ながら賞味期限がありますが、フレッシュな素材を心がけて使っている作り手としては、お客様にもフレッシュでおいしいうちに食べていただきたいですね。 |
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年齢を重ねるごとに、余分なものを 捨ててシンプルなものへ移行していっているように思います。 素材に関しては、自分の目で確かめて選んで いくことが重要です。当然自分の気に入ったものを使います。本当にいい材料 に出会ったときに「ああ これだ!」と新しい商品への発想がひらめくんです。 同じ素材を使い続けていくことである意味マンネリ化してしまうこともあるので、ここでも クリームなどは2年ぐらいでメーカを変えたりしています。素材の味が変化すると 当然製品も変わります。毎日必ず食べておいしさを確認しています。 |
これからショコラティエ、パティシエになりたいかたに伝えたいことですが、
自分がルノートルでたくさんのことを学んだように、社会に入って自分の仕事上
での兄貴や親を探してほしいと思います。私自身、自分の後輩が帰る場所を作るという意味で、
いい兄貴になっていきたいと思っています。後輩がヨーロッパへ行きたいといえば積極的に応援
します。今の若いパティシエ達にも、ぜひいい親、兄貴にめぐり合ってほしいです。
最後に、私にとって「パティスリ―」は工場ではなく、アトリエ(工房)でありたいと思っています。 いい素材との出会いを大切に、お客様に喜んでいただけるものを作り続けて行きたい。 チョコレートは私にとって、一生、共に生きていく仲間であり、テーマなんです。 |
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