ル・パティシエ・タカギ 高木 康政 氏 | ![]() |
![]() 自分がパリにいた頃、店にケーキを頼みに来るお客様は「チョコレートはちょっと苦めでよろしくね」とか「ケーキの上に飴細工をのせてね」などと、よく僕らに注文をつけていたものですが、それを思い出させるようなやりとりも、今、この店ではあるんです。「こういうケーキはないの?是非作って」というリクエストもあれば、「え?あのケーキは夏しかないの?残念!」なんていう言葉、「この間のあれは美味しかった、今度お友達にも持っていくからいくつお願い」っていう嬉しい注文などもあります。お店をはじめてまだ数ヶ月ですが、「タルトはなぜないの?」という言葉にタルトも作り始めましたし、「焼き菓子が少ない」というご意見に応え、頑張ってその種類を増やしたりもしました。今までいたところは厨房からお客様の顔が見えなかったので、今こうして、対面販売の良さを実感しています。住宅地は都心の繁華街と違い、通りがかりで店に入る人はほとんどいません。土地に住んでいる人が買いに来ます。ですから、おのずとリピーターが増えますよね。 ![]() 店の厨房は決して大きくはありませんが、大量に作らなければならなかったときにはどうしてもできなかったひと手間かけた仕込みができるのも嬉しいことです。オープンしてから人も追加しました。今、2番手は女の子なんですよ。頑張っているし、日に日に良くなっているのがわかります。女性のパティシエがどんどん増えています。採用しないんじゃなくて、彼女達が職人として伸びていくような道を作ってあげることも僕らの役目かなあと思うんです。若い人に言いたいのは、何事も大切なのは基本だということ。基本をしっかりやっていれば、6、7年も経ったときしっかりした自分の主張が出てきます。そして、10年先に自分はどうしていたいのか、逆算すると今は何をすべきかをしっかり考えながら、素直に聞く耳と目的意識をもって仕事をしてほしいですね。店もまだまだオープンしたてですが、若い力には期待しているんですよ。 取材日 2000年11月 |