ツマガリ 岸井 隆 氏 | ![]() | 高校卒業後埼玉の洋菓子店で3年半修業。その後ここ「ツマガリ」にきて8年。 |
「ツマガリ」といえば関西では知らない人はいないという有名店。業界はここ出身のパティシエを「ツマガリ派」と呼ぶ。それほどに人を育てることでも知られた店で、ツマガリ派のパティシエは全国各地に店を構えている。その津曲師匠のもとで働く岸井氏。埼玉のお菓子やさんで修行中、ここのケーキを食べてその美味しさに感動した若き青年は、今では名店「ツマガリ」で、はずすことのできないパティシエとして活躍している。![]() そして本格的な味は崩さない。クリームも45%のものをオーソドックスに使っている。フルーツはすべてフレッシュを使用、旬を意識した商品作りを心がけ、関西地区には珍しく「特別デザインにこだわりはありません」と言ってのける。これには正直いってびっくりした。味で勝負という姿勢は分かるが、関西でそれでやっていかれるのだろうかという疑問が頭をよぎってしまったのだ。しかし店内は切れることのない行列である。「ツマガリ渋滞」ができるかと思われるほど、店の前の道にはここを目指した車が次々現れる。疑問の解決はまず味をみて、というところなのかもしれない。 人気のシュークリームを食べてみた。大きさ、値段、そして味。高水準である。バニラビーンズを使用し、いい卵を使っているなという味のカスタードクリーム。パイとスポンジを組み合わせて作られているケーキも、バリッという新鮮なパイの食感がたまらない。クリームの中に大きくカットされたイチゴやバナナが入っているものオーソドックスながら嬉しく、そしてみずみずしい。あっさりした中にも素材の味を大切にという岸井さんの言葉が、行列が、納得できる味であった。 ![]() 新しいことにチャレンジして商品を開発する姿勢を大いに喜ぶという師匠だが、試作品への目は厳しく、岸井氏が考える新商品にも何度もやり直しが言い渡されるとか。「ツマガリ」の未来を担い、いずれは「ツマガリ派」の1人として、はばたいていくかもしれない岸井氏の腕はこうやって日々磨かれていくのである。「ツマガリ」で8年。高校野球の選手をほうふつさせるような真剣なまなざしに、いつでも安心して食べられる正直なお菓子を作っているんだなと感じさせられた。 取材日 1999年
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