イギリスに入ったのが、ちょうどクリスマス前でしたので、クリスマスならではのお菓子、クリスマスプディング、ミンスパイなどに出会えました。フランス菓子が華奢で華麗なイメージがあるのに対し、イギリスのお菓子達はとてもシンプルで素朴な感じがしました。ただ、イギリスは産業革命発祥の国だからでしょうか、パリのように、ケーキ屋さんがどこに行ってもあるわけではなく、マークス&スペンサーやテスコといったスーパーで売られている大量生産のお菓子を買っている人が多かったように見うけられました。また、イギリスの人はサクっとした食感を好むのか、パイクラストでもタルト生地でも、ショートニングを多用していました。加えて、健康志向のせいか、油脂はマーガリンを使っていることが多く、バターを使っているお菓子はわざわざ「本物のバターを使用、高級菓子」といった表示がされていました。
イギリスでは比較的粉を主体としたケーキが多いように感じましたが、これはきっと紅茶をたくさん飲んで水分をたくさんとるから、こういうケーキが食べられるのでしょうね。
(フランスみたいにデミタスカップに入ったほんのちょっとのコーヒーではパウンドを食べるのは苦しいですよね!?)
それでは私がイギリスで訪れた町とそこで出会ったお菓子をご紹介しましょう。

ロンドン
《ブラマー コーヒー&ティー博物館 ティールーム》 (Brhama Coffe&Tea Museum)
ブラマーという紅茶商が自社の倉庫を利用して数年前に開いた博物館。特にお茶に関する展示が充実。ティールームが隣接しており、さまざまな紅茶とイギリスの代表的なティータイムケーキが4〜5種類おいてあります。
@ チョコレートファッジケーキ
ココアスポンジの間にザラっとした感じのチョコレートクリームがサンドされたケーキ。上から下までチョコレート!って感じです。
A キャロットケーキ
ティールームにいたお姉さんに言わせると「典型的なイギリスのティータイムケーキ」だそうです。シナモンなどのスパイスがきいていました。
B エクレスケーキ
ビスケットの生地にずしっと感じるくらいレーズンをたくさん入れて焼いたもの。1〜1.5cm程度の厚みのある、ケーキというよりはビスケットのようなお菓子です。

《ハロッズ 》(Harrods Food Floor)
@ パウンドケーキ(マーブル、フルーツ、キャロット、マデラ、バナナ)
パウンドケーキの本場イギリスではどんな味かと期待しましたが、正直なところがっかりしました。ぼそぼそして、パウンドらしいふっくらとした感じがなく、焼け具合も半生といった感じです。マーブルケーキなどはココア生地のところが思いきりしまっていました。


《フォートナム&メイソン》 (Fortnum&Mason)
@ フルーツケーキ
15cm四方の小さなサイズでしたが、持つと何と重いこと!上にチェリーやらプラムやらアーモンドやら乗っていて、薄くスライスして食べました。ほとんどがドライフルーツやナッツと言った感じの濃い、ヘビーなケーキでした。

《メゾン・ブラン》 (Maison Blanc)
地下鉄Holland Park駅近くのショップ。フランス菓子がメイン。 前回、ロンドンに来たときに知人からここはおいしいよ、と教えてもらい、本当においしかったので、また、覗きに行ってみました。デザイン、仕上げ、味ともに本格的なフレンチペストリーです。


カーディフ
カーディフはウエールズの首都です。このあたりはコーンウォール地方と呼ばれています。

《カーディフ城のティールーム》
@ バラ・ブリス
カーディフ城の見学を終える時にガイドさんが「ここのティールームのバラ・ブリスが私は大好きなんです、お時間があったら寄って行って下さい。」と言ったので寄ってみました。バラ・ブリスとはウエールズ地方の代表的なケーキで、フルーツケーキです。バターを塗って出してくれました。

《職人市場の出店》
カーディフ城を見学したあと、町をぶらぶらしていたら職人市場がたっていて、1軒だけあったお菓子屋の店頭は人が絶える事がなく、みな、テントの奥で奥さんが焼くできたてのウエルシュケーキを買って行くのでした。店頭には主らしき年配の男性がいて、ウエールズならではのお菓子といえば何?と聞いたら、「やっぱりウエルシュ・ケーキだよ」と言うので、一つ買ってみました。
@ ウエルシュ・ケーキ 
ウエルシュ・ケーキとはウエールズのケーキということですが、これもどちらかといえばビスケットです。油脂たっぷりの生地にレーズンをたくさん入れて焼きます。この店のは本当のバターを使い、お砂糖もブラウンシュガーを使っているようでした。サクっとした触感と豊かなバターの香りが、おじさんのお菓子に対する愛情を表しているような、心に残るお菓子でした。

《コーニッシュ・ベイクハウス》 (Cornish Bakehouse)
ロンドンで見なかったのに、ウエールズに来てあちこちで見かけたのがコーニッシュ・ペストリー。パイ生地にフィリングを詰め、包んで焼いたもの。形は巨大餃子って感じです。惣菜系からデザート系まで、フィリングはいろいろあります。
@ トラディショナル・コーニッシュ・ペストリー
ポテトとビーフがフィリング。晩御飯にいただきました。パイといってもやはりショートニングを使っているようで、非常に軽い口当たり。フィリングの塩味がもうちょっと欲しかったかな。でも、ビールとあいそうです。

《グレッグス》 (Greg's)
チェーン展開しているパン・ケーキ屋。
@ クリスマスプディング・トリュフ
クリスマスプディングのフィリングを小さく丸め、チョコレートでコーティングしたものに更に白いアイシングをかけ、ヒイラギの葉と実の飾りをつけたもの。見た目はとてもかわいいのですが、とても甘くて食べきれませんでした。
A ミンスパイ
タルトレット生地の中にラズベリージャムのフィリングを入れて焼いたもの。シンプルですが、飽きのこないお菓子です。ここのもタルト生地はショートニングを使っていました。


コッツウオルズ
観光バスで訪れたコッツウオルズ地方のバーンフライという町で素敵なティールームを見つけました。

《ハフキン》 (Huffkin)
@ ミンスパイ 
ミンスパイがクリスマス菓子なら、今の時期しか食べられない!と、どこへいってもミンスパイを食べました。ここのが一番おいしかったです。ラズベリーフィリングの上品な酸味と甘さ、そしてタルトのクラストとのバランスがとてもよく、食べ口も軽やかでした。


ストラトフォード・アポン・エイボン
ご存知、シェイクスピアの生誕の地ではファッジ&チョコレート屋さんを覗きました。

《ザ・リトル・スイート・ショップ》 (The Little Sweet Shop)
@ チョコレートファッジ
ファッジとは一見、ういろうというか練りきりのようなお菓子で、クリーム、バターなどを主原料としています。チョコレートショップもかねているだけあって、良質のチョコレートを使っている感じでした。
A バターファッジ
一見、キャラメルのような色をしています。食べると塩味が結構するのですが、これはとてもおいしかった!ひとつ、また、ひとつ、と手が出ました。


エジンバラ
エジンバラはスコットランドの首都です。アフタヌーンティーの主役スコーンは実はスコットランド生まれなのだとか…

《ザ・ファッジハウス・オブ・エジンバラ》 (The Fudge House of Edinburgh)
親子3代続いているファッジ屋。
@ くるみとチョコレートのファッジ
これは正直なところ、おいしくない、というよりまずかった!材料が悪いのか、技術のせいなのか、ストラトフォードのファッジとは天と地の差です!
A スコーン
どちらかといえばパン生地に近いスコーンでした。味は悪くありません。

《クラリンダ》 (Clarinda's)
赤い窓枠にレースのカーテンが目印の、ファンシーなティールーム。お店の中にはさまざまなケーキがチェストの上にのせられています。
@ スコーン
ドロップクッキーのような、ちょっとごつごつとしたクラストを手で割っていくと、中はほろほろと崩れる、ビスケットともパンともいえない生地がでてきます。私はこの感じのスコーンが一番好きでした。

《タイ・エレファン》 (Thai Elephan)
エキゾチックな名前のダイニングバー。
@ スコーン レーズン入り
ここのも外はゴツッ、中はホロッ、でしたが、クラリンダのよりちょっとずっしりとした感じでした。

《Mark's & Spencer》
@ スコーン
食べ比べたスコーンの中では一番パン生地に近い感じ。BPの臭いが気になりました。

《ザ・ウイッチャリー・バイ・ザ・ギャッスル》
魔女屋敷という名前のレストラン。
@ クリスマスプディング
ランチコースのデザートとして出てきました。温められた小さなクリスマスプディングの上に、バターの中に砂糖とブランデーを練りこんだブランデーバターがのっていました。プディングの温かみでバターがとけ、とてもいいソースになります。ブランデーの良い香りが、また、プディングやバターとよく調和していました。
A ミンスパイ 
プディングのあとにさらに出てきました。クラストはかなりしっかりと固く、フィリングはラズベリージャムだけではなく、ナッツなども入っているようでした。上品で高級なミンスパイ、という感じでした。

エジンバラのB&Bの朝食ででてきたものの中に、オーツケーキというのがあります。オート麦をぎゅっと圧縮して作ったビスケットのようなもので、軽い塩味以外はひたすらオーツ麦の穀物の味がします。ぼそぼそとした口当たりで、お茶と一緒じゃないと食べ難いのですが、これがとても気に入りました。チェダー等のイギリスのチーズととてもよく合います。でも、日本ではショートブレッドは良く売られていますが、同じメーカーから出されていても、このオーツケーキはまだ、日本で見ていません。残念。


ヨーク
エジンバラからロンドンに帰る時に途中下車して寄ってみた町です。

《ベティーズ》 (Betty's)
ヨークで今一番流行の大陸風のカフェ。ケーキも仕上げが綺麗で、ウイーンあたりのコーヒーハウスを連想させます。
@ ベイクウエルタルト
タルトレット生地の中にカスタードのフィリングを流し込み、レーズンを入れて
焼いたもの。ヨークで寄った博物館の学芸員のお兄さんが、ここのベイクウエル
タルトはおいしい!と言っていたので、寄って買ってきました。
感想としては、期待が大きかった分、ちょっとがっかり、といったところでしょうか。やはり、パリで本当のバターを使ったクラストになれていたので、どうしてもショートニングやマーガリンを使ったクラストでかつ焼きが甘いとおいしくなく感じてしまうのです。




おまけ 

今回はアフターヌーンティーを勉強したいとも思っていたのですが、ブラマー・コーヒー&ティー博物館の館長さんに、「どこのティールームに行ったらいいですか?」と聞いたところ、「アフターヌーンティーという習慣はすでになくなってしまったものなんだよ。それにああいうのは家で家族とするものでね…まあ、高いお金を使ってもいい、というんだったら、リッツとかサボイがあるけど、私は賛成しないなあ。」と言われたのでした。
たしかに、紅茶葉の消費量の9割以上がティーバッグ用という今日、アフターヌーンティーなどという、優雅な習慣は消えていて当然かもしれません。
というわけで、私はアフターヌーンティーはあえてしてきませんでした。
ヨークのような観光地ではたくさんティールームがあって、「ハイティー(サンドイッチ、スコーン、ケーキとお茶がつくもの)、クリームティー(スコーンとお茶)終日あります」といった看板がたくさん出ています。こういうところはロンドンで有名なホテルでアフターヌーンティーをするよりははるかにリーズナブルな値段で体験できますが、本来、午後行うからアフターヌーンティーと言われるのに、「終日やっています」とあっては、興ざめですよね。

あと、今回気がついたのは、スコーンには必ずクリームとジャムがついてきますが、すべてホイップクリームでした。健康志向、ということなのでしょうか、旅行中、ついぞクロテッドクリームには巡り合いませんでした。


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