イタリア

19世紀後半にやっとひとつの国として統一されたイタリアは、今も地方ごとに異なった文化が色濃く保たれています。味覚に関して誇り高い民族なので、地方ごとの名物が頑固に守りつづけられています。各地にその土地に根ざしたパンが多くあるのが、イタリアの大きな特徴といえるようです。イタリアでは牛乳やバターを使ったリッチなパンよりも、料理に多く使われているオリーブオイルを使ったものが多く、どちらかというと軽い味わいのパンが多いようです。料理と同じように、パンもローズマリーやタイムなどの香草を混ぜたものが好まれたり、イタリアならではの食材を使ったものが多いのが特徴です。イタリアでは硬いパンが多く、これはイタリアが湿度の高い国なので、保存性を考えたことと、もともとイタリア人がクリスピーなクラストを好むからのようです。イタリアでは北と南でとれる小麦の質も違うので、それぞれが独自の食文化を生んできたのでしょう。
かたや、イタリア菓子の方は、パンが軽い食感のものが多いのに対し、一般的にこってりとした甘さの強いものが多いようです。


フォカッチャ
イタリアを代表するリーンなパン。古代ローマから伝わるピッツァの原型とも言われるオリーブオイルを使ったパン。クラストがかりっとして中はふんわりしているが、しっかりとした噛みごたえがある。ほんのりした塩味が素朴な旨みを出している。ジェノヴァ生まれだが、現在は各地で見られます。ただし、地方によって呼び名が違ったりします。古代ローマでは、小麦粉と水だけで練り上げて神々に捧げたという。今日では、リーンな生地が主流だが、ややリッチな砂糖やミルクが入ったものも作られています。

ロゼッタ
イタリアでもっともポピュラーなテーブル・ブレッド。ロゼッタはイタリア語でバラを意味し、表面にバラの花をかたどったスタンピングをすることからその名がある。ミラノやヴェネツィアではミケッタと呼ばれています。生地はフランスパンに似ていますが、焼く時に蒸気を使い、一部の過程で蒸し焼きになるために出来上がりの風味はまったく異なり、乾いた生地の食感と中の空洞が特徴あるパン生地になっています。焼いたその日のうちに食べる。真ん中が膨らんでいて、表面がよく割れたものが、空洞も大きく火の通りもよく軽いパンになる。充分に膨らんでいないロゼッタは、時間が経つと表面の生地のサクサク感がなくなってしまう。

グリッシーニ
イタリア・ピエモンテ地方のトリノ生まれのスッティックパンとして有名。食事の前に軽く楽しむのは、日本のイタリアンレストランでもすっかりおなじみの姿。消化がよい乾パンのようなもので、病人食にも使われているそうです。水分をよく飛ばしてあるので、日持ちがします。ただ、特有のカリカリ感がなくならないうちに食べるようにしましょう。料理が始る前にワインと一緒に食べるのが、もっとも一般的な楽しみ方です。オリーブオイルにつけても美味しい。プレーンな味だけでなく、ごまやローズマリー、チーズなどの風味もあります。

パネトーネ
もともとはミラノ発祥のクリスマス用発酵菓子で、バターやレーズンなどがたっぷり入ったリッチな配合のもの。天然酵母で長時間熟成させた日持ちのするもので、焼き上げたその日よりもしばらくたってからのほうが美味しい。パネトーネには専門的な製パン技術が必要なのでほとんどのイタリア人は店で買います。現在ではクリスマスだけでなく各種の祝いごとや集まりの時、休日の食卓などふだんの生活でも良く食べられています。パネトーネという名前の由来には幾つかの伝説があります。たくさんの伝説ができるほど、由緒正しい菓子パンと言えましょう。

チェンチ
トスカーナの揚げ菓子。カリカリと香ばしい食感が特徴です。食後酒の甘いワインのヴィン・サントに浸して食べたりします。また、イタリアでは地方を問わず、カーニバルといえば必ずといっていいほど登場するお菓子の屋台がこのチェンチ売りで、目の前で揚げたてのアツアツを紙に包み、粉糖をふって渡してくれます。

ビスコッティ
トスカーナ州プラトーの名物である、アーモンドがぎっしり入ったビスコッティは、二度焼きして堅く焼き上げる。これも甘口ワインのヴィン・サントに浸して食べると味わいが引き立つ。

ズコット
トスカーナ地方・フィレンツェの銘菓。これは聖職者のかぶりものという意味で、ドーム型をしているお菓子です。カトリックの国らしい一面が現れているお菓子といえよう。薄切りのスポンジで覆ったドームの中に、アーモンド、ヘーゼルナッツ、松の実、チョコレートチップなどがたっぷり混ざった生クリームを詰めて、半凍結に凍らせた口当たりの良いお菓子です。

カッサータ
ナッツとドライフルーツが入ったシチリア島生まれのお菓子。9世紀から200年間アラブ人に占領されたこの島の食文化はいまもその影響が色濃く残り、カッサータの語源はアラブ語の「クワット」=「大きくて丸いスープ皿」。カッサータにはアイスクリームのものと、凍らせない生ケーキの2タイプがあります。

カンノーリ
シチリア島の郷土菓子。白ワインで練った生地をオリーブ油で揚げ、リコッタチーズのクリームを詰める。サクサクとした食感が特徴。

カプリ風トルタ
粉が全く入っていないチョコレートケーキ。フランスのガトーショコラに似ているが、粉や生クリームを加えていない。

イタリアのパン・お菓子SHOP情報
イル・サルマイヨ
東京都新宿区新宿3-14-1 伊勢丹新宿本館地下1F
03-3352-1111

コヌレ広尾
東京都渋谷区広尾1-10-6
03-5475-6828

プラチノ
東京都世田谷区世田谷1-23-6
03-3439-2791


世界のパン・お菓子MAP