ここ数年、パリのパティスリーやブーランジェリーは、新進気鋭のお店がオープンしたり、伝統ある老舗のリニューアルなど、さらなる活気にあふれています。 ブーランジェリーは、4区マレ地区の「Bistro a Pains(ビストロ・ア・パン)」などのイートインできるカフェスタイルのブーランジェリーが登場。豊富な種類の焼きたてパンをすぐに楽しめるほか、パンのおいしい朝食セットが頂けるのもこの店の人気の秘密です。 9区Martyrs通りは、パンやレストランなど、おいしいものの激戦地区。中でもパンもケーキも豊富な、モダンな造りのブーランジェリー&パティスリー「Arnaud Delmontel(アルノー・デルモンテル)」は要チェック。2007年のバケットコンクールで優勝を果たしたお店でもあります。 |
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ケーキもパンも充実。アルノー・デルモンテルの店内は、かなり魅力的な品揃え |
また、過去に最年少にてブーランジェリーのM.O.Fを取得した「Le Quartier du pain(カルティエ・デュ・パン)のFrederic Lalos(フレデリック・ラロ)氏ですが、15区に2軒のブーランジェリー、そして一昨年の14区のお店に続き、昨年11月、パリ郊外・ブーローニュ市にニューショップをオープン。2009年1月には、すでに客足の絶えない人気店になっていました。 |
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ラロ氏のブーローニュの新店。いつか日本にもラロ氏のお店ができるかも? |
一方、パティスリー界も、この数年で目覚しく進化しています。 今までは、ピエール・エルメ氏などの、熟練のパティシエたちの活躍が目立っていたパリ。ですが、有名レストランやパティスリーで経験をつんだ若い人々の中には、店を持つだけでなく、老舗のシェフパティシエに就任する人も。そんな若手パティシエたちが、老舗パティスリーのお菓子の味やデザインのリニューアルに一役買っている模様です。 老舗のカフェ、16区のトロカデロ広場の「Carette(カレット)」は、薄い板状のキャラメルをのせたりんごのミルフィーユなどが登場。クラシックな味わいの中に、モダンが光るお菓子がもりだくさん。マカロンやチョコレートの種類も豊富で、すべてカフェで楽しめるのも嬉しい点。また、「ラデュレ」の若手シェフをシェフパティシエとして迎えた1区・リヴォリ通りの「Angelina(アンジェリーナ)」も、モダンな味やデザインのケーキがぐっと増えました。 |
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カレットの魅力的なショーケースとミルフィーユ オ ポム |
また、7区官庁街にある「Roullet Pradier(ルレ・プラディエ)」なども、老舗の看板に甘えることなく、しっかりとした味わいのケーキやマカロンを楽しめます。このように新旧へだてることなく、自由な発想をとりいれる柔軟な風潮が、フランスのパティスリー界にも訪れている、ということなのでしょうか。 |
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ルレ・プラディエは、なんと1859年創業という老舗中の老舗だそう |
そして、新しいお店も続々と登場。2006年12月にオープンした、女性パティシエがオーナーを努める15区「Gateau et du pain(ガトー・エ・デュ・パン)」では、フルーツやバニラの香りを組み合わせたケーキやルリジューズが人気。モノトーンのモダンな造りの店内では、パンや焼き菓子の種類も豊富です。 5区の「Carl Marletti(カール・マルレッティ)」は、以前老舗カフェのパティシエだった、シェフが独立。そこで人気だった「ミルフィーユ」を始め、小さな店内ながらも、アントルメの種類が充実。甘いもの好きなお客で店内は始終にぎわっています。 |
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ガトー・エ・デュ・パンは、パンはもちろん、ケーキも魅力的 |
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見た目も味もお店もすべてが美しいカール・マルレッティ。ミルフィーユは必食! |
また、ロアンヌのショコラトリー&パティスリー「Pralus(プラリュ)」のパリ進出も、見逃せません。ポンピドゥー近くのRanbuteau通りに08年秋にオープンしたこのお店、ピンクのプラリネをたっぷり練りこんだブリオッシュ「プラリュンヌ」も大小サイズそろえて販売されています。フレッシュなマカロンも、パリにいながらにして買えるようになりました。 また、オペラ界隈、マドレーヌ広場近くにはピエール・エルメの「マカロン&ショコラ」の専門店がオープン。マカロンとショコラのショップは、これから、上海、東南アジアなどでも展開をしていく予定なのだとか。 |
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パリのプラリュに行ったら、ぜひプラリュンヌを食べてみて |
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エルメの新店は、ショコラとマカロンのお店。生ケーキがないのは、ちょっと淋しい |
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エルメのかわいい車。思わずパチリ。日本にも走ってくれないかな |
また、ここ数年、パリでじわじわと店舗をふやしつつ、グルメたちに注目されているのが地方食材のアンテナショップや、食材のセレクトショップ。 例えば、香辛料ピペラードやエスプレット村の唐辛子、チョコレート、マジパンなどを扱ったバスク地方専門店のショップや、塩キャラメルやバターサブレなどを集めたブルターニュ地方のショップ…など、地方の“アンテナショップ”ともいえるべき店がパリ市内にでき、地方に行かずともおいしいものを見つけることができます。 また、そのほかにも、店長が自ら買い付け、交渉をしてあつめた、いわゆる“個人セレクトショップ”の食品店も注目したいところ。15区「Beau et Bon(ボー・エ・ボン)」は、元・フード系ジャーナリストだったオーナーが開業したセレクトショップ。リヨンのチョコレートや、キュートな形のカリソンのほか、今ではレストランにしか卸していない「プージョラン」のパンなどが買えるのも、彼女の持つネットワークならではの品揃え。お菓子や料理に関する雑貨も充実し、見ているだけでも楽しくなるお店です。 |
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ボー・エ・ボンはかなりお洒落な品揃え。オーナーのヴァレリーさんもかわいらしい |
そのほかにも、元フードスタイリストや元メーカーの食品バイヤーが経営するお店などが増え、彼ら個人のセンスやネットワークで、驚くような品揃えが実現しています。 地方には、まだまだ私たちの知らない、おいしいものがいっぱいあります。そんなおいしさが、都市部のパリで手軽に買えるのは旅行者にとってもうれしい点。でも、近年、このようなショップが増えた理由のひとつには、「フーディー」と呼ばれる人々が増えてきたからだとか。 お取り寄せやおいしいものを探しに気軽に旅にでる日本人にとっては、一見あたりまえのようですが、依然として家庭的で倹約家なフランス人たちには、そのような人々はごくごくわずか。しかし、ここ近年、暮らしを、とりわけ“食”に関してお金をおしまない層=「フーディー」たちが増え、パリでフランス中のおいしいものへのニーズが高まっている、というわけなのです。 しかし、旅行で訪れるパリならば、フランス国内の交通アクセスもいいので、1日足を延ばして、パリ近郊にでかけて、おいしいものを探してみるのも手です。 その例として、前回のパリ取材では、日帰りでノルマンディー地方まで足を延ばしたパナデリアスタッフ! その様子をご紹介いたします。 ノルマンディー地方は、フランスの北西部に当たり、カマンベールチーズやバターなどの乳製品が特産品で、郷土料理でもクリームを使った料理が多い地方。 また、ぶどうの育成にはむかない土地のため、かわりにりんごが多く栽培されています。りんごのタルト「Tarte au normand」などのお菓子や、りんごの棒飴のほか、発泡酒であるシードルや、蒸留酒・カルバドスなど、質のよいものがそろいます。 手軽にいけるノルマンディー地方としては、パリから車で2時間、TGVのアクセスもよいルーアンがお勧め。荘厳なゴシック様式の大聖堂で有名な町で、さまざまな教会や聖堂がところどころにある趣のある町です。 さっそく旧市街に向かったパナデリア一行ですが、ルーアン美術館近く、市場が開かれている広場を散策。パティスリー「La Chocolatiere ROUEN(ラ ショコラティエ ルーアン)」をはじめ、周辺のパティスリーでは、カルバドスを練りこんだ、林檎の形をしたマジパンや、刻んだアーモンドをキャラメルで固めた“ヌガティンヌ”をチョコレートがけしたお菓子などが多く見られ、スペシャリテとして販売されていました。 乳製品もとても新鮮で、市場で購入したクレームドゥーブルは、乳の香りが豊かで、ほんのり甘みのある味わいです。 |
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ラ ショコラティエ ルーアンのマジパン、りんごとカルヴァドスはノルマンディーの名産 |
さらに、カーンに向かって約3時間。カトリーヌ・ド・ヌーヴ「シェルブールの雨傘」で有名なシェルブールから約40km南、Sortsveuille-en-Baumot村の山あいの道に、突如にぎわうビスケットリーを訪問しました。 その名も「La Maison du Biscuit(ラ メゾン ド ビスキュイ)」。“ビスケットの家”というお菓子屋さんで、お店にはいるやいなや、ふんわりと焼き菓子のいい香りが。店内にはカフェスペースもあり、お茶を飲んでひとやすみする地元の人々や旅行者でにぎわいます。オーナーのMark Burnouf氏に案内をいただき、工房を見学させていただきました。 「粉・バター・砂糖・小麦粉・卵はすべて地元のものを使い、すべて無添加がポリシーです」というマーク氏。新鮮な牛乳や発酵バター、地元でその日に採れた卵を使い、ノルマンディーならではの味わいにこだわっているのだそう。1日に、その日お店に必要な分と注文分だけを作り、ストックをもたず、新鮮さにも注意を払っています。店内を歩いていると、地元のお客さんたちに「このビスケットはね、すべて無添加、無着色で、素材もいいんだ。ここのビスケットは世界一だよ!」と、薦められたほど! 素朴な粉の味わいがおいしい「Galette Normande」や、発酵バターの香りが豊かな「Financier」、口に含むとバターの香りと甘さがじゅわっと広がる、厚焼きタイプの「Palets normands」など、シンプルな焼き菓子が人気でした。 |
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パリから車を走らせ、はるばるたどり着いた先に、ビスケット王国が・・・。ここは、パナデリアが長い間、恋焦がれているメゾン・ド・ビスキュイ! |
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店内には憧れのビスケットの箱がずらり。夢のような光景に、箱の大きさを忘れ、思わず、いくつも購入。果たして日本まで持って帰れるのか?! |
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素朴でいながら、類まれなおいしさ。この味を知ったら、他のビスケットはもう・・・ |
フランスには、地方にもまだまだ発見されていないおいしいお菓子屋さんがたくさんあります。パリで買うのもよし、ちょっと地方まで足を延ばしてみるのもよし。フランスに行く機会のあるかたは、普段の旅とはちょっと趣向をかえて「おいしいもの探し」というテーマで、計画を練ってみるのもいいですね。 |
〜 Shop data 〜 |
Bistro a pains
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住所 |
2, rue de la Verrerie 75004 Paris |
TEL | 01 40 27 91 97 |
Arnaud Delmontel
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住所 |
39 rue des Martyrs 75009 Paris |
TEL | 01 48 78 29 33 |
LE QUARTIER DU PAIN
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住所 |
104, rue du point du jour BOULOGNE 92 |
TEL | 01 46 20 05 37 |
Carette
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住所 |
4 place du Trocadero 75116 Paris |
TEL | 01 47 27 98 85 |
Angelina
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住所 |
226 rue Rivoli 75001 Paris |
TEL | 01 42 60 82 00 |
Roullet Pradier
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住所 |
6 rue de Boulgogne 75007 Paris |
TEL | 01 45 51 78 36 |
Des Gâteaux et du pain
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住所 |
63, Voulvard Pasteur 75015 Paris |
TEL | 01 45 38 94 16 |
Carl Marletti
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住所 |
51 rue Censier 75005 Paris |
TEL | 01 43 31 68 12 |
Pralus
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住所 |
35 rue Rambuteau |
TEL | 01 48 04 05 05 |
Macarron et Chocolat Pierre Hermé
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住所 |
4 rue Cambon 75001 Paris |
TEL | 01 58 62 43 17 |
Beau et bon
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住所 |
81 rue Lecourbe 75015 Paris |
TEL | 01 43 06 06 53 |
URL | http://beauetbon.free.fr/ |
La Chocolatière ROUEN
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住所 |
18 rue Guillaume le Conquerant 76000 Rouen |
TEL | 02 35 71 00 79 |
La Maison du Biscuit
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住所 |
Hamau Costard 50270 Sortsville en Beaumont |
TEL | 02 33 04 09 04 |
URL | http://www.maisondubiscuit.fr/ |
※このページの情報は掲載当時のものです。現時点の情報とは異なる可能性がございますのでご了承ください。 |