年々高まりを見せるサロン・デュ・ショコラ(SDC)熱。東京のSDCは今年で8回目を迎え、すっかりこの時期定番のイベントとなりました。出展ブランド数は過去最高の約70ブランド、来日するパティシエ&ショコラティエの数も約40名と規模の大きさもさることながら、内容もますます充実。パリやパリ郊外で話題のブランドが初出店とあらば、南仏からは門外不出の名門ホテルやMOFショコラティエの作品が初登場。もちろん、毎年来日するお店の新作や、フランス以外の世界各国、また日本のショコラだって見逃せません。
・・・と、前評判を聞いただけでもブースめぐりで忙しくなりそう。でも、SDC通を目指すなら(目指さない人も是非!)、毎年かかげているテーマのチェックも外せません。今年は"オペラ"がテーマに選ばれました。それぞれのショコラティエたちが様々な形でオペラへの思いを表現しているから、それはもう見ているだけでワクワクしてしまいます。こんな風に、ますます深く、おいしくと進化を続けるSDC。開催前日の1月26日に行われた、サロン・デュ・ショコラ東京プレスプレビューのようすをレポートします!
(2010.2) 






「東京は暑いですね。SDCの熱気のせいかしら(笑)?」と笑顔を見せるのは、会を主催するフランソワ・ジャンテ&シルヴィー・ドゥース夫妻。「今回のテーマに選んだ“オペラ”とショコラは相通じるもの。ショコラもオペラ同様に、芸術の域に達していて、文化的でユニバーサルで万人にわかりやすいものなんです。ショコラという貴重な品を、共に楽しみ、わかちあいましょう」
パリのSDCでは、オペラ歌手を招いてのファッションショーが繰り広げられ、大いに盛り上がったといいます。さて、東京では・・・?




「それでは、「LIV MOON」のヴォーカル、AKANE LIV(アカネ・リブ)さんに歌っていただきましょう!」
登場したのは、白いドレスに身を包んだ、うっとりするほど美しい女性。タカラジェンヌとして活躍後、ヘビーメタルとハードロックとオーケストラを融合させたシンフォニックメタルという新境地を開いたという異色の経歴の持ち主です。その美貌もさることながら、4オクターブ!の美声は圧巻。スーザンボイルが歌ったことで知られる「I dreamed a dream(夢やぶれて)」、デビューアルバム「DOUBLE MOON」の中の「Time to say good bye」の2曲を熱唱し、その神秘的な歌声に、会場中が魅了されました。




そして、ライブが終わりに近づいた頃、背後の幕がババーンと開いたかと思うと、ショコラティエ約30名がずらりと登場。幕の向こう側が何やらモゾモゾしていると思ったら、こんなサプライズが用意されていたなんて!狭いところでジッとしているのは大変そうかと思いきや、シェフたちはいたってマイペース。楽しみながら仕事もこなしてしまうその姿勢、さすがはフランス人です。




オープニングセレモニーのラストを飾ったのは、ダロワイヨの大きな大きなオペラ。そのサイズ、なんと、165cm×70cmというからすごい!ダロワイヨでも初の試みとのことですが、これだけあれば食べても食べてもなくならない?!最後はクリスティーヌ・フェルベール氏やアカネ・リブさんがケーキをカットしてくれ、参加者全員でオペラを楽しみました。


オープニングセレモニーが終わったら、いよいよブースめぐりをスタート。素敵な出会いを夢見て、ショコラの海へと繰り出します!



セレクション オペラ


まず目にとびこんできたのは、日本限定という「セレクション オペラ」。ジャン=ポール・エヴァン、ジャック・ジュナン、ジャン=シャルル・ロシュー、マルク・ドゥバイヨル、パスカル・ル・ガック、メゾン・フェルベールの6ブランドのシェフたちが手がけた、12粒のボンボン・オ・ショコラ入り。オペラにちなんだものや新作、スペシャリテが詰まっています。例えば、「ドン・ジョヴァンニ」の大ファンというジャック・ジュナン氏は、友人の画家とコラボして、ジョヴァンニの絵をプリントしたショコラを作成。ノワゼットキャラメリゼとミルクチョコレートのプラリネを組み合わせました。こんな風に、シェフたちのオペラ感が見てとれるのが面白いところ。SDC主催者であるフランソワ・ジャンテ氏が描いたボックスのイラストも素敵です。



パスカル・ル・ガック氏


あのラ・メゾン・デュ・ショコラのディレクターとして長年活躍し、2008年秋、ついに自らのショコラトリーをパリ郊外のサンジェルマンアンレーにオープンしたパスカル・ル・ガック氏。パナデリアの会報を差し出すと、気さくな笑顔で応じてくれました。早速ですが、ル・ガックシェフが大切にしていることは?
「いい素材を使うことはもちろんですが、それらをどう組み合わせてバランスをとるのかが大事。それからフルーツなどを合わせる時には、その時々の状況を見ながら試作しています。だから、レシピはかたまっていません」



ボンボンショコラ詰め合わせ(9個入り)


トリュフナチュール


ル・ガック氏の代表作を詰め合わせた「ボンボンショコラ詰め合わせ(9個入り)」をいただいてみると、ジャンドゥジャに柑橘系のフルーツが香る「トスカ」や、「ジンジャー」「レモン」など、どれもガナッシュは驚くほどなめらかでカバーは薄く繊細な仕上がり。すっきりとした後味が印象的です。上品でいながらどこか親しげなのは、“ストレスがあるような時はダメ。楽しみながらショコラを作ることが一番!”というシェフの思いが込められているからかも。小ぶりなサイズの「トリュフナチュール」もスッと心地よい逸品です。



ジャック・ジュナン「ショコラ詰め合わせ オペラ」


ショコラメタルボックス


今年一番の注目株といえば、なんといってもジャック・ジュナン! ジュナン氏はシェフ→パティシエ→ショコラティエへと転身を遂げた方で、パリの華麗なブティックのようすは、先日、パナデリア「今週のケーキ屋さん」でもお伝えしたばかり。大好きな「ドン・ジョヴァンニ」のイラストをプリントした「ショコラ詰め合わせ オペラ」や薄くすることで繊細な口溶けを楽しめる「ショコラメタルボックス」の他、フレッシュなフルーツそのままの風味が味わえる「パート・ド・フリュイ」、そしてまろやかなキャラメルも並びます。



ファブリス・ジロット「アクアカオボックス」


独特の感性で、ショコラにフルーツや花など素材の香りを閉じ込めるファブリス・ジロット氏。ショコラ界の重鎮の手から、またひとつ、新作が誕生しました。その名も「アクアカオボックス」。今度の作品は、カカオ豆を水で煮出して作られたカカオジュレをサンドしたもの。このジュレの部分からカカオ豆本来の香りと酸味が広がり、驚くほど爽やか。“そうか、カカオってフルーツだったんだ”と気づかせてくれるひと品です。




「キャー」「かわいい〜」
ジャン=ポール・エヴァンのショーケースにはいつだって目が釘付け。まるで高級ブティックのようにショコラのオブジェがディスプレイされ、その美しさといったら!まさにアートといった感じで、足を止めてじっと向き合いたくなります。イートインコーナーでは、友人であるフェルベール氏とコラボしたデザートを提供。これは是非!と勇んで向かったにもかかわらず、メニューには「sold out」の文字が・・・。ああ、残念!



フランクケストナー「キャラメルサブレ入りタブレット」


カヌレ型ショコラギモーブ詰め合わせ


フランクケストナーでパナスタッフ全員が狙っていたもの・・・それは、「キャラメルサブレ入りタブレット」。パリンとスナップが効いたビターチョコの間にサンドされたサブレのサクサクとした食感、とろ〜と流れ出すキャラメル・・・フランスで体験して以来、すっかり虜になってしまったのでした。「カヌレ型ショコラギモーブ詰め合わせ」やチョコレートがけしたサブレなど、ボンボン・オ・ショコラ以外の気軽なお菓子がおいしいって嬉しい!



フランク・フレッソン「スイーツ救急箱」


フランク・フレッソンからは、楽しさいっぱいの「スイーツ救急箱」がお目見え。塩バターキャラメルが入った注射器に、絆創膏に見立てたヌガー・・・甘いものが恋しくなったら、これに手を伸ばせば全て解決?!こんな救急箱、待ってました!



アルノー・ラエール「カップケーキ」


会場内でラエール氏が仕上げることで話題なった、アルノー・ラエールの「カップケーキ」。イギリスで流行ったフェアリーケーキをヒントに作られました。ショコラ生地にフルーティーなチョコレートをデコレーションしたカップケーキは、そのキッチュな色合いも見もの。パティシエならではの感性が光ります。



クリスティーヌ・フェルベール氏



ジャン=ポール・エヴァン氏とのコラボから生まれた「オペラ」


いつも優しい笑顔で迎えてくれるクリスティーヌ・フェルベール氏は、やっぱり“妖精”ということばがぴったり。オペラの大ファンという氏が題材に選んだのは、「魔笛」の中に登場するラ・レーヌ・ドゥ・ラ・ニュイ(夜の女王)。キャラメル、フランボワーズ、バラの3つを組み合わせた魅惑的なショコラが完成しました。ピンク色のボックスや、ショコラでできたティアラにもうっとり。



アンリ・ルル「キャラメル ロリポップ ショコラ」


お馴染み、アンリ・ルルーで気になったのは、「キャラメル ロリポップ ショコラ」。キャラメルCBS、フランボワーズ、ショコラなどのやわらかいキャラメルにショコラをコーティングした、これぞルルー!と嬉しくなってしまう新作です。この形、この色合い、ついつい手が伸びてしまいそう。



フィリップ・ベルナシオン氏


ショコラ詰め合わせ


タブレット


強烈なインパクトを放つカカオの香り、他にはない濃厚な味わい・・・その衝撃は、ベルナシオンのブースを目にしただけで蘇ってくるほど。もちろん、人気のほうも健在で、当日分のショコラは次々とショーケースの中から消えていきました。“変わらないことが一番大切なこと”と話すベルナシオン氏のゆるぎない信念がファンを虜にします。




パティスリー・サダハル・アオキ・パリ「サブレ ショック ショコラ」


いつでも気軽に買えるとわかっていても、目が離せないのがパティスリー・サダハル・アオキ・パリ。そのファッショナブルなデザインや素材使いはやっぱり魅力です。中でも、今回は「サブレ ショック ショコラ」をセレクト。チョコが主役と思いきや、バターの香りが強くサクサクッと軽快な食感のサブレだけでも充分おいしい。ミルキーな乳風味とビターなショコラの相性も抜群です。



ピエール・エルメ・パリ「タルトフィーヌ」


ショーケースに並ぶその姿を見た瞬間に、即買いしたのがこちら。ピエール・エルメ・パリの「タルトフィーヌ」です。とうもろこし粉入りサブレ、ガナッシュ、薄いチョコレートの組み合わせで、ガナッシュはポルセラナ、チュアオ、クロエ(フランボワーズ)の3種を用意。エルメ氏が厳選したガナッシュのおいしさはもちろん、プチプチ弾けるコーンやパキッと軽快なチョコレート、まったり滑らかなガナッシュといった食感の変化も楽しめます。本格的なスイーツでありながら、片手で気軽につまめる、カジュアルさも○。ああ、SDC限定というのが本当に惜しい!


まずは、SDCに行ったらこれだけは外せない!というブランドをチェックしてみました。でも、まだまだ先は長い!だって、全部で70ブランド・・・とうてい全部はまわれないけれど、気になるところはそこかしこにあるから大変です。さあ、どんどん行きますよ!



パティシエ エス コヤマ「丹波黒(たんばぐろ)」


関西で絶大な人気を誇るパティシエ エス コヤマ。丹波の黒豆を使った「丹波黒(たんばぐろ)」やショコラのバウムクーヘンもいいけれど、どうやらあの、コヤマロールも来るらしい。これは大変なことになりそうな予感・・・。
(後日談:開催期間中は、コヤマロールを求める人が殺到。連日大人気でした)



パエィスリー ル・ポミエ「ラネ・デュ・ティーグル」


「エクレール・ティグレ」


パティスリー ル・ポミエのマドレーヌ氏にかかったら、トラだってこんなにキュートに。食べてしまうのがもったいない?!



アルナスマ「ラクダショコラ」


タブレット


今回、ちょっとしたブームを巻き起こしていたのが、アルナスマの「ラクダショコラ」。姿かたちもラクダなら、中身もラクダのミルクを使っていると聞いてびっくり! おそるおそる食べてみると、これが意外にも癖になる旨みで、またびっくり。ドバイからやってきたショコラ、侮れません!



コップナー「ショコラトル・スティック」


コップナーの「ショコラトル・スティック」。カカオポットの部分をホットミルクに入れてかき混ぜると・・・ショコラが溶けてショコラ・ショーの出来上がり!という、遊び心いっぱいのひと品です。



ヴェストリ「アンティーカ・ジャンドゥジャ・
フィオンレンティーナ・ピッカンテ」



イタリア・トスカーナのヴェストリからは、缶入りのとろーりやわらかいガナッシュがラインナップ。「アンティーカ・ジャンドゥジャ・フィオンレンティーナ・ピッカンテ」はヘーゼルナッツと唐辛子という魅惑の組み合わせ。いろいろなものにつけて楽しめそう。



トーキョーチョコレートの「オペラ」


トーキョーチョコレートの「オペラ」は、昨年開催されたパリのSDCで話題に。細長いスリムなボンボンショコラにガナッシュ、音符を描いたチョコレートを重ねたモダンな一品です。繊細な味わいと適度な余韻が日本らしい仕上がり。




ナオミミズノ×洋菓子マウンテンの「ショコラ詰め合わせ」。水野直己シェフは、2007年のワールドチョコレートマスターズで優勝した実力派。地元京都の柚子やハチミツを使った、すっきり食べやすいショコラです。




和泉光一シェフのオブジェは、繊細なデザインや独特のシックな色合いが魅力的。妖艶なマスクがオペラの世界を華やかに演出します。




各ブースでは、オペラをモチーフに作られたオブジェを展示。斬新なアイデアには、拍手を送りたくなるようなものから、思わず笑ってしまうようなユニークなものまでさまざま。


いかがでしたか? こんなにたくさんまわっても、まだほんの一部。カカオの香りに酔いしれながら過ごした、幸せな夜のひとときはひとまずおしまいです。新たなおいしさに出会い、そしておいしさだけでは語りつくせない奥深さに圧倒されたプレビューとなりました。




※サロン・デュ・ショコラ東京は既に終了していますが、2月2日〜14日の期間中、伊勢丹新宿店本館地下1階でヴァレンタイン・ショコラのイベントを開催中。SDCで紹介されたショコラの一部も並んでいるので、見逃した方は是非覗いてみて!
伊勢丹新宿店のHPはこちら
https://www.isetan.co.jp/icm2/jsp/store/shinjuku/index.jsp



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