豊かな自然に恵まれたカナダ。
そのカナダを代表する味わいといえば・・・
そう、メープルです!
日本人も大好きなメープルの、本当のおいしさを、より広く、深く伝えようという
想いのもと開催されているこのコンテストも、今年で5回目を迎えました。
会を重ねるごとに、作品がレベルアップしている本コンテスト。
さて今回は、どんな作品が入賞したのでしょうか?



10月某日。爽やかな秋晴れのなか、メープルスイーツコンテストの表彰式が開催されたのは、青山一丁目にあるカナダ大使館。カナダ大使館の強力なバックアップはもちろんですが、会場には、製菓・製パン会を始めとする、各界の重鎮たちが顔を並べ、このコンテストに対する期待度の高さが伺えます。




ところで、今では当たり前のように手に入るメープルシロップですが、この会を主催する「クインビーガーデン」が、メープルシロップを日本に紹介するようになったのは、今からわずか10年ほど前のことだと言います。
「クインビーガーデンでは、もともとハチミツの輸入をしていました。そんな中、カナダの自然が生みだす味わいの素晴らしさに惹かれるようになったのが25年ほど前。わが社の定番商品、くまのプーさんの容器でお馴染みのハチミツも、カナダ産アルバータ州に限定しています。メープルシロップを始めたのは、10年前。ハチミツとは違い、メープルシロップは、人間の手で、丁寧に作られていきます。その本物のおいしさを日本に広めたい、また、若い人が素晴らしい作品を作ることで、日本とカナダの絆を深められたらと願っています」

実は、原産地のカナダ・ケベック州で、単なる健康的な自然食という存在だったメープルシロップが見直され始めたのもこの頃。本来、何十種類もあるメープルの味を、分析・定義し、品質を高めようと研究センターが作られ、産地や季節による味の違いをいかしたメープルシロップ作りが進められるようになったのだそうです。


産地と質にこだわったクインビーガーデンの「ケベック・メープルシロップ」「ケベック・メープルシュガー」。コンテストでは、この2品の使用が条件。カナダが全世界の生産量の80%を占めるメープルシロップですが、そのうち90%はケベック州で産出されているのだそう


さらに昨年は、20名の生産者のほか、加工業者、輸出業者から成るアソシエーションが作られ、より質の高いメープルシロップ作りへの環境作りが整えられているそう。ワインやチョコレートのように、生産者や季節でメープルシロップを選ぶ、そんな日も近いのかもしれません。


今回は、カナダから生産者の方たちも来日。日本でのメープルシロップの現状を知ってもらいたい、という想いから実現したそうです


そんな日本とカナダ、双方の想いが詰まったメープルシロップ。その味と風味は、どんなおいしさへと生まれ変わったのでしょうか。
毎回、錚々たる面々が審査員を務めるこのコンテストですが、今回も「オーボンヴュータン」河田勝彦氏、「パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウ」藤生義治氏、「シニフィアン・シニフィエ」志賀勝栄氏、「ムッシュイワン」小倉孝樹氏の4名と大御所揃いです。


 
「オーボンヴュータン」
河田勝彦氏
  「パティスリー・ドゥ・シェフ・フジウ」
藤生義治氏
 
「シニフィアン・シニフィエ」
志賀勝栄氏
  「ムッシュイワン」
小倉孝樹氏



実技審査が行なわれたのは、表彰式の前日。一次審査を通過した8名(菓子部門4名、パン部門4名)が日本菓子専門学校に集まり、4名の審査員が見守る中で行なわれました。ちなみに、今回の応募総数は、過去最大の201作品(菓子部門:120作品、パン部門:81作品)でした。






それでは、金賞と銀賞の発表です!

金賞

藤城 風太さん(カルチェ・ラタン)

「アン ガトー ドゥ ラ シャルール」

「メープルと相性の良いリンゴを使用した」温かみのある焼き菓子。「じっくり煮詰めソテーすることでメープルの風味を閉じ込めた」というリンゴ、そして、「メープルと共にキャラメリゼした」ナッツという、2つ表現方法によりメープルの存在感を引き出した作品。


銀賞

諸永 裕士さん(ドンク 日本橋ジョアン店)

「ピュア メープル アース」

「メープルシュガーを折り込むことによって、よりメープルの存在感を出した」という生地は、「しっとりと口溶けが良く、メープル特有の深みのある味と香り」が特長。「メープルでキャラメリゼした『リンゴ』の酸味、『アーモンド』の香ばしさ」もアクセントに。




見事、金賞に輝いた藤城さんにコメントを伺うと・・・、
「きっかけは、数年前に食べたある焼き菓子です。食べることで、作り手の想いや姿勢が感じ取れるような、本当に涙が出るようなお菓子でした。今回目指したのは、その味わい。そこに近づけたことがとにかく嬉しいです!」
と、喜びに目を輝かせていました。




ところで、“涙が出そうな”ほどにまで藤城さんの心を揺さぶったという、想い出のお菓子が気になりますが・・・
「実は、第3回のコンテストでシェフ(「カルチェ・ラタン」オーナーシェフ冨田和彦さん)が金賞を受賞したお菓子なんです。普段から、シェフのお菓子に対する姿勢や想いを知っていることもありますが、食べた時にそういったことが全部見えてくるようなお菓子でした」
師匠のあとに続こうと、藤城さんは今回の出場を決意。ただ、素材の組合せなどは参考にしたものの、レシピの相談等はせず、自分自身のオリジナルの一品を作り上げたそうです。
「目指したのは、人が食べて温かい気持になるようなお菓子。そこに、どうやって自分のカラーをつけていくかというのが、一番難しいところでした」
尊敬する師匠に少しでも近づきたい。そんな藤城さんの強い想いが、審査員の胸を打ったのかもしれません。

師匠であり、シェフの冨田さんと一緒に。
感慨もひとしおですね!




藤城さん、諸永さんはもちろんですが、入賞者の8名は非常に接戦だったということで、今回は特別に“特別賞”も発表されました。


特別賞

高倉美香さん(日本菓子専門学校)

「ケイク メイプル ランベルセ」

「焼き菓子に使用すると飛びやすい」というメープルの風味を最大限にいかすため、「ヌガー、ケーク、クランブルという3つの生地を重ねて焼成。同時に焼成することで、「しっかり風味が残る」と共に、アンベルセ(逆さ)にすることで、底の部分の香ばしさを際立たせた作品。



おめでとうございます!



そのほか、菓子部門では、表実由起さん(Decadence du chocolat)、荒木貴志さん(ホテルオークラ東京)。そして、パン部門では、西村健さん(リヨンセレブ西葛西店)、松本郁広さん(東京ポンパドウル池袋店)、津田宜季さん(神戸屋)が入賞となりました。




そして、審査員の方々からもお祝いの言葉が。
「パン部門では、やはりヴィエノワ系が多く、純然たるパンというのは難しかったようです。パンで金賞がとれなかったのは残念ですが、お菓子とパンとの境界が狭まったと思います」
と小倉シェフ。
そして、志賀シェフからは、はなむけの言葉が。
「もの作りのインスピレーションやひらめきはどこから来るのか?と考えることがあります。いつも現場に立ち、前向きに取り組むことで生まれてくるものだと思っていますが、それは、ちょっとした慢心ですぐに消えてしまうもの。皆さんも、今の気持を忘れずに、これからも頑張ってください」


審査員の作ったメープルのパンやお菓子も登場しました。
左:志賀勝栄シェフ“パンオエラブル(メープルのクグロフ シニフィアンシニフィエスタイル)”
右:小倉孝樹シェフ“ブリオッシュ・プリンセス・メープル(りんごのブリオッシュ包みメープルマカロンのせ)”



「火や熱で風味が飛びやすいというメープルの特徴を、しっかりクリアした作品が多く、レベルの高さを感じました」と藤生シェフ。


左:河田勝彦シェフ “タルトケベック(ショコラクリーム、りんごと杏とメープルのタルト)”
右:藤生義治シェフ“メープル(メープルのムースとイチゴとフランボワーズのムースの2層のケーキ)”


そして最後は、河田シェフが締めくくりました。
「メープルシロップというのは、ある意味で職人泣かせの素材で、風味をいかすのが難しいと思います。でも、そういう苦手とされる素材でも、いかそうという努力次第では今回のようないいものができるわけです。そういう気持でこれからも頑張ってください」





日本とカナダの掛け橋として、また、若者のチャレンジの場として。
“メープルシロップ”の今後に、ますます期待したいと思います!

(2010.11) 


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