秋の訪れを感じる10月の始め、1通のちょっと怪しげな招待状が届きました。封を開けると、なにやら古ぼけた紙に「ピエール・エルメ・パリ 秋冬新作発表会」と書いてあります。
タイトルは「ILLUSION 〜白日夢〜」。
いつものことながら、ピエール・エルメ・パリの新作発表会は、洗練の中に斬新さが溢れていて、招かれる身としてはどきどき、わくわくとするもの。
今回もどうやら例外なく、そのパターンのようです。
そこには・・・
「この不可思議体験は外せない。新たなクリエーションの奥義をとくとご覧あれ。」
そして、ピエール・エルメが私たちの秘密の願望を叶えてくれ、しかも喜びで有頂天にして、心配事もすべて取り除いてくれる、と書かれているのです。
受付の場所を見ると、「鶯谷 MONSTER CAFÉ」、注意書きには
必ず19時までに来てください。その後になると神通力が消失するのでご注意を
と、マークつきで書かれています。
これは、遅れちゃならない!と、かけつけましたよ、19時に!

ディープな街並みを歩いていると、ここが噂のMONSTER CAFÉ
悪魔くんと悪魔ちゃんが出迎えてくれました


受付のMONSTER CAFEをめざすと、そこはなにやら怪しげな下町の飲み屋横丁という感じの場所。その一角にある、さらに怪しげなBarが、どうやら受付のモンスターカフェのようです。
そこには、シルクハットに黒い衣装を身に着けた悪魔風のスタッフの方が。
なんと次の世界に行くために、ここで何かひとつ捨てていかなければいけないとのこと。
ふと真剣に考えると、本当に捨てたいものは世の中のしがらみ・・・とか思いますが、さすがに目に見えないものは捨てられないので、皆、ここで紙やらカードやらいろいろないらないものを捨て、かわりにパーティ会場で使うルーレットのコインを受け取り、新作発表の会場となる「東京キネマ倶楽部」へと案内されていきます。

モンスターカフェで捨て去っていくべき“あなたの「ILLUSION」”は、「実らぬ恋、うまくいかない婚活、あたらないスクラッチくじ、つながらないWi-Fi、明日に迫った締め切り・・・」など。
なかなか的を得た「いらないもの」の表記に、思わず苦笑いが・・・。でも、なんだか楽しい!


先ほどの飲み屋街を抜け、パーティの会場となる「キネマ倶楽部」へ。案内は、やっぱり黒い衣装の悪魔くんたち


ここも怪しい映画館?・・・と思いながら、エレベーターで会場に向かうと、ホールにピエール・エルメ・パリの新作が飾られたテーブルが、そこかしこに現れます。
そう、ここは怪しくも華やかなピエール・エルメの世界なのです。
テーブルに飾られたタルト、マカロン、ガレットデロワ、ショコラなどなど・・・。
「ILLUSION」風に言うと、「蠱惑のケーキ」、「奈落のマカロン」、「奇跡のショコラ」、「至福のコンフィズリー」などが並びます。
イスパハン風味のシリアルなど、さすがピエール・エルメ!というラインナップ。

ここは劇場なので、2階部分は下のステージが見下ろせる造りになっています。2階席から新作が並ぶテーブルを見下ろした図が、これ!


では、ここでたくさんの新作の中からいくつかのお菓子をアルバム風にご紹介してみます。





「光(リュミエール)と影(オンブル)」を表したこのケーキは、見た目の楽しさも魅力で、アーモンドチップとチョコレート入りの柔らか生地、純正マダガスカル(ミヨ農園)産チョコレートのムース、ブラックチョコレートチップという構成からなっています



サブレ、ジャスミン風味のガナッシュ、レモンとベルガモット風味のビスキュイとジャスミン風味のマスカルポーネクリーム


マロングラッセアイスクリーム、シャンティクリームを思わせるアイスクリーム、ノバラの実とイチゴのコンポートで、うっとりするような甘酸っぱさを演出



逆折込みのパートフイユテ、黒砂糖とマロングラッセ入りアーモンドクリームで仕上げたガレットデロワ。リコリスを彷彿させる黒砂糖の繊細な甘味で引き立てられたアーモンドクリームが、心地よいビター感のある高雅なマロングラッセと一体になっています



パッションフルーツ風味のガナッシュショコラオレ、ローストパイナップル、マカロンショコラで仕上げたタルト


アグリコール・ホワイトラムとパッションフルーツのシロップをしみ込ませたブリオッシュ生地、カラメリゼしたローストパイナップル、ミルクチョコレートとパッションフルーツ入りシャンティイクリーム






ジャルダン=庭園シリーズからも新作がいくつか発表されました




グリオットチェリー、レモン&トンカ豆の組み合わせで、レモンゼストとトンカ豆のほろ苦さと、サクランボの甘酸っぱさを合体させました。日本から直送した桜の花がマカロンに変身したかのような錯覚(イリュージョン)を持ちそう



各種のフィリュイルージュ(赤いフルーツ)の取合せにライムのゼスト(皮)を添えるという、ピエール・エルメの十八番のひとつをマカロンの形にしました。ライムゼスト入りクリームとフィリュイルージュのコンポートとが、丸いマカロンコックの間でしっくり馴染んでいます



[左] グレープフルーツ、クローブ&グレープフルーツのコンフィの組み合わせ。
クローブとナツメグで引き立てられたグレープフルーツクリームと、旨みの際立つグレープフルーツコンフィとが素晴らしいハーモニーを奏でています



抹茶、ジロール茸&レモンという、香りの調教師ピエール・エルメにしか生み出せないであろう見事な組み合わせ。香水レパートリーの「大海のヨードの香り」から啓示を受け、独自のフレーバーを作り上げました。この的確なテーストの合成によって、植物の柔らかな風味が味蕾に残り、それはまるで、遠い世界への想像の航海を促してくれるようなのです



マンダリンオレンジ入りオリーブオイルとキュウリウォーターがマカロンの中で見事に融合し、マリン系の香水のようなフレーバーが醸し出されています。マンダリンオレンジとキュウリの味感が巧みにバランスして、まさに驚異の海園の香りに満ちた味覚が現れ出ています



アンバー&ローズの組み合わせ。香水のアンバー(琥珀)を想起させるマカロンには、独特の薫りと味覚が感じられます。アンバーの風味は、カラメル入り生クリームと一緒になることでバラのクリームとうまくバランスし、口の中にほのかにフローラルな余韻を残します



まるで“手の平サイズの菜園”のような愉快なマカロンの中に、リンゴ、ミント、キュウリ、及びルッコラ入りのクリームが隠れています。生き生きとしたハーブの綾を織り成し、違った食感の妙もさることながら格別のテーストを実現させました



シリアル、ナッツ、ライチのハチミツ、ローズ風味のフリーズドライフランボワーズが、あたかもスイーツのカクテルのように混ざり合っています。かりかり、さくさくとした美味しい粒々がたくさん詰まっていて、思わず小躍りしたくなる美味しさ。朝食の定番シリアル「グラノーラ」が、こんなに素敵になるなんて!





会場内には怪しい人物が・・・。これもイリュージョン、幻想の世界と思えばなんのその!


その他にもボンボンショコラやコンフィチュールなど、たくさんのスイーツが会場を彩りました


魅惑的なお菓子が飾られたテーブルを眺めていると、各テーブルにマジシャンが現れ、カードマジックだけでなく、アイスクリームを使ったマジックなども披露してくれました。
その後は上の階のカフェに案内され、先ほどモンスターカフェで受け取ったコインと引き換えに、今回の新作ケーキの試食セットがサービスされました。
ケーキセットは3種類。名前が「のこぎり」とか「おの」とか「サンタクロース」、ちょっとユーモアが含まれているのがさすがです。
Aセット(Nokogiri)は「ガトー ノエル ア モンターニュ」「タルト アンフィニマン ジャスマン」「ガレット オ ザマンド」
Bセット(Ono)は「オンブル オ リュミエール」「タルト アンフィニマン ジャスマン」「ガレット オ マロングラッセ エ コクトウ」
Cセット(Père Noël)は「サラ」「タルト アンフィニマン ジャスマン」「タルト アジュール」

パナデリアがいただいたのは、「Ono」のBセット!


新作をいただいている間も、上の階から下の新作が並ぶテーブルを見下ろすことでき、舞台ではちょっと怪しげなチベット民謡や水を使ったマジックなどが披露され、パーティの参加者を飽きさせることなく、目にも舌にも大満足の新作発表会となりました。
フランス・パリでは、古い劇場を使って、もっと大々的なILLUSION風の仕掛け満載の中、新作発表会を行ったそうです。
日本では、なかなかこういう幻想的な雰囲気を盛り上げる場所がなかったそうで、ここ鶯谷を選択したとのこと。
確かに、東京で一番ディープな場所と言えるかもしれません。
でも不思議なことに、このパーティの帰り道に見る街並みは、行きと違って、ちょっとお洒落な感じがしました。
これもピエール・エルメのなせる業だったのかもしれません。
招待状を手にしたときから始まったわくわく、どきどき感は、こうして幕を閉じました。

今回のテーマ「ILLUSION」は、「錯覚」や「幻影」を意味する言葉。ピエール・エルメが作り出すイリュージョンは、今の世知辛い世の中で人々に気分転換してもらうことを目指しています。
確かに、スイーツの美味しさと限りないパワーで、なんだか毎日が幸せになってくるような気がします。
さぁ、次はあなたが、ピエール・エルメのお菓子を食べて、ハッピーな気持ちになる番ですよ!


ピエール・エルメ・パリ 青山
住所:東京都渋谷区神宮前5-51-8 ラ・ポルト青山1F・2F
TEL:03-5485-7766
その他の店舗情報や各種情報はこちらのサイトをご覧ください
紹介した商品の販売期間、場所につきましては今後、
こちらのサイトに随時アップされる予定です
http://www.pierreherme.co.jp/




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