昨年4月、ラ・メゾン・デュ・ショコラの新シェフ・パティシエ・ショコラティエとなったニコラ・クロワゾー氏。この2月、待ち望まれた来日がついに実現し、新作の2013年春夏コレクションのボンボン・ドゥ・ショコラやマカロンと共に、みんなの前に登場しました。



ニコラ・クロワゾー氏


ニコラ・クロワゾー氏は、1996年にラ・メゾン・デュ・ショコラに入社。すぐに、創始者であるロベール・ランクス氏に高い芸術的センスを見出されます。2000年、ランクス氏は、特別芸術作品の制作担当という、彼のためだけの特別なポジションを作りました。クロワゾー氏だから作り出せるショコラのオブジェなどの製作活動を応援し、また同じショコラのクリエーターとしてもその芸術性を高く評価していたそうです。そんな中、クロワゾー氏は、2007年にM.O.Fを獲得。そして昨年、入社16年目にして、全てのクリエーションを統括するシェフとなりました。

東京に来るにあたり、パリらしくロマンチックなものを選んで製作した。エッフェル塔の周りの建物は、パリのシンボルともいえる、例えば凱旋門やノートルダム寺院などを金箔でコーティングして目立つようにしている


登場したクロワゾー氏は、
「自分の役割は、ランクス氏の意思を継いで、味にこだわり、その味を守ること」
と話し始めました。
「メゾンを象徴する定番を守りながらも、時代に合わせて、味の微調整が必要な作品もあります。それらを変えていきつつ、季節のコレクションは、味と形、そしてテクスチャーにこだわったものを出していきます。口にしていただいたみなさんには、新しい味の発見をしたり、カカオ豆の産地に思いを馳せたりしながら、自由に楽しんでいただきたい。最終的には“チョコレートっておいしい”と思ってもらえればいいんです」

チョコレートのことならどれだけでも語ることができるというように、次から次へと話は進みます。そして、聞いているほどに、チョコレートに対して迷いのない、明確な姿勢を持っていることを感じました。

「特にダークチョコレートは、あまり甘くないものを選びますね。ボンボン・ドゥ・ショコラは、小さい形のほうがしっかり味わうことができると考えています。中に包む味とまわりのチョコレートとのバランスを大切にして作っています。チョコレート以外の食材については、味にこだわる小さな農家のものを使うことが多く、産地や、誰が作ったかをしっかりと知りたい。それによってこそ、本物の味を表現できると思っています」

4月中旬に登場する春限定の「デュオ・ドゥ・ガナッシュ」に、この考えが強く表現されていました。「デュオ・ドゥ・ガナッシュ」コレクションは、ランクス氏の作品と、自身の新作をセットにしたもので、今回のテーマは柑橘。ランクス氏の作った、レモン風味の「アンダルシア」にレモンピールを加えて新しさを出すとともに、新作の「ユズ」を登場させました。
ユズには、日本の柚子を使っていますが、四国の北側、実生柚子という、継ぎ木をしないで作る野生の柚子を見つけてきて使っているのです。
「この柚子に出会ったとき、普通の柚子に比べて、果汁にとろみがあり、酸味が少ないように感じました。果汁だけを使用していますが、それでも充分に香りが高い。そこを考慮し、ボンボン・ドゥ・ショコラの厚みは通常の半分にしています」

ランクス氏により創られたレモンピール風味のガナッシュ「アンダルシア」

クロワゾー氏の新作レシピであるユズ風味の「ユズ」

デュオ・ドゥ・ガナッシュ 26粒入り

さて、他の商品を紹介したいと思います。
夏限定のコレクションには5種類の新作ボンボン・ドゥ・ショコラが。
「コルシカ島に皆さんをいざないます。夏、バカンス、リラックス……そんなイメージで作りました」
4つのコルシカ島の素材と、ひとつのプレーンなボンボン・ドゥ・ショコラで構成されたコレクションです。
「島の中央に行くとラポルタ村があります。ここには標高400〜600mの山があって、野生のミントがとれます。現地の人はそれを乾燥させて料理なんかに使うんです。それにならい、自分も、ドライにしたこのミントをクリームの中で抽出させ、このひと粒を作りました」
こんな調子で作品の紹介をしてくれるのだから、聞いているこちらは、まさに旅に出ているような気持ちにさせられます。


5つの新作レシピが詰まった「イル・ドゥ・ボーテ」



コルシカ島の野性のミントをドライにして使用。ハーブのようにすうっとミントが広がり、ペパーミントのような甘さも


北のほう、アレリオ村ではクレモンティーヌという柑橘系のフルーツがとれる。酸味と苦みがない。穏やかな香りなのでガナッシュだけでは本来の味が表現できず、味のしっかりでるジュレとの2層構造にした


西のコレンザ村にいる養蜂家は、低木の野生の花からはちみつをつくる。それを使用し、いちじくと合わせた。フローラルの高い香りと、あとを追ういちじくがまろやかに調和


東の海岸、アリストロのレモンを使用。ミルクチョコレートと合わせた。先日フランスであった記者会見の際、試食に出したところ大人気で、今回は持ってこられなかったとのこと。ミルクとダークを試したところ、ミルクのほうがおいしく、自分でも驚いたとのこと


コレクションには必ずひとつプレーンなガナッシュを入れるようにしている。基本を見せるという姿勢と共に、箸休め的な意味も


左から「ネピタ」「クレモンティーヌ」「マキ・デテ」「アンパマキア」

コルシカ産レモンの力強さが魅力の「シトロネット」


そしてもう一つ、夏にはマカロンの新作も登場します。
「ラ・メゾン・デュ・ショコラのマカロンの特徴は、チョコレートガナッシュを食べさせるマカロンだということです」
4種類の中から今回、試食用に持ってきてくれたのは「マラガ」という作品でした。
「コルシカ島の小さな農家が作っているセドラという柑橘から作りました。実はパリでこのフルーツを食べてとてもおいしくて、コルシカ島を訪れました。そしてボンボン・ドゥ・ショコラのコレクションがうまれたというわけなんですよ」

マカロン 夏のコレクション、4つの新作レシピ。手前から「ネピタ」「マカプノ」「マラガ」「サルバドール」

今回試食させていただいた「マラガ」は、たっぷりとガナッシュが挟まれ食べ応えがあります。でも柑橘の酸味で後味はすっきり


今回、初めての日本というクロワゾー氏ですが、
「日本の方は、要求も高く、知識も豊か。感性も鋭く、職人技を理解してくれる人たちだというのを嬉しく思いました。軽やかな味が好きなので、料理も口にあいます」
とのこと。
プライベートも少し語ってくれました。
自宅では毎日、料理を作っているそうで、得意料理はないけれど、奥様が買い物してきた冷蔵庫にある素材を見ながら、ささっとなんでも作れるとのことです。デザートではタルトタタンが得意と明言。クロワゾー氏の作るタルトタタンなんて、一度食べてみたいですよね!

ところで、代々のシェフ同様、すらりと細身のクロワゾー氏。ラ・メゾン・デュ・ショコラのチョコレートのような本当においしいチョコレートは食べても太らないのではないかと本気で思っているパナデリアですが、またそれが証明されました(笑)。




ラ・メゾン・デュ・ショコラ 青山店

住所:東京都港区北青山3-10-8
TEL:03-3499-2168
営業時間:12:00〜20:00
(2Fカフェ:12:00〜19:30L.O)
定休日:年末年始

その他の店舗情報など: http://www.lamaisonduchocolat.co.jp/






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