今年で11回目を迎えた、伊勢丹新宿店で開催されるサロン・デュ・ショコラ。
定着したこのイベントを、今年も楽しみにしていた方が大勢いると思います。
今年も1月23日から28日まで開催され、会場には初日からたくさんの人が訪れました。行列あり、品切れあり。例年通り、活気に溢れた6日間でした。

さて、前日の22日夜に一足先に会場を一回りしたパナデリアです。
魅力的なチョコレートはたくさんありましたが、やはり、今年フランスから初出店した2つが気になるところ。それぞれのブースで、ショコラティエにお話しを聞くことができました。

まずは、「フレデリック・アベッカー」のフレデリック・アベッカー氏。2011年に、M.O.Fを獲得した、気鋭のショコラティエです。製菓学校の講師を務めるなど、派手な活動はしていなくても、知る人ぞ知る実力派。M.O.Fの獲得で、一気に脚光を浴びはじめた大注目の人物です。


フレデリック・アベッカー氏

通常はクリスマスだけの限定ショコラ
「プロバンスの雪の結晶」


店があるのは、プロバンス地方のアヴィニョン。「プロバンスの雪の結晶」というボンボンショコラが、今回も人気を集めました。現地ではクリスマス限定で登場するというこのショコラは、スペキュラス(シナモンなどスパイスの味)と、冬のりんご、洋梨、いちじくといったフルーツのコンポートのジュレの、食感も違う2層構造になっていて、クリスマスに食べるパン・ド・エピスをも彷彿させます。

ボンボンショコラのコーティングに使うショコラについて訪ねると、こんな答えが返ってきました。
「ベネズエラのクリオロ種を選んで使っています。若干の酸味があって、口の中でちょっと温かく溶ける感じかな。個性的過ぎず、どんな味とも合うのが特徴だね。タブレットなら、もっと個性的なものを使ってもいいと思うけれど、いろいろな味をカバーするには、個性が強すぎないものがいい。いいハーモニーを作れるからね」


もう一つの初上陸は、パリに店を構える、「セバスチャン・ゴダール」です。ピエール・エルメ氏も認めるというセバスチャン・ゴダール氏は、超モダン派の最先端パティスリー「デリカバー」のシェフ・パティシエをつとめていた経歴がありますが、自らの店は真逆。「再生」をテーマにし、古典を追及しているとのことでした。


セバスチャン・ゴダール氏

あっというまに完売してしまった幻のタブレット「タブレット ノワール カライブ グリルアーモンド」


クーベルチュールはどんなものを使っているかと聞いたところ、
「何を作るかによって想像力を膨らませながら選んでいます。具体的に言えば、フルーティーなものと合わせるなら、マダガスカルのもの。ドライフルーツやバニラを使ったものには、共通の香りのするものを選ぶ。想像しながら選択したり、ブレンドしていくんです」

ご出身は、ホウレンソウを入れたキッシュで有名な、ロレーヌ地方。
「フルーツのミラベルなどが名産ですね。いずれはそういうものを使って、想いを表現してみたいですが、新しい店ができて、まだ一年しか経っていないのです。やりたいことはいろいろありますが、まだまだこれから。いずれ日本にもお店を出したい」 と語ってくれました。

ナッツが大好きだとのこと、9種類持ってきたタブレットの中でも、グリルアーモンドをのせたタブレットには思い入れと自信がある様子で、
「低温で長時間焙煎したスペイン産のアーモンドを、ドライフルーツとトースト香のするチョコレートに合わせたんだよ」
と嬉しそうに語ってくれました。(ちなみにこのアーモンドのタブレットは、開催するやあっという間に品切れに。ほとんど幻となりました)

ところでタブレットと言えば、今年のテーマは「ルネサンス(再生)」でした。原点回帰として象徴的ともいえるタブレットが各ブランドのショーケースにいろいろ並んでいたのも、そんな理由があるかもしれません。
初上陸の2つの他に、パナデリアが注目したものがひとつ。まさに「ルネサンス」という言葉にぴったりのタブレットです。インパクトのあるパッケージでおなじみの「ボナ」から出ている「ソコヌスコ」。この聞き慣れない名前はカカオの品種で、その起源は紀元前2000年にもさかのぼるそうです。神聖なものとして奉られていたにもかかわらず、気温や病害虫に弱く、栽培の難しさから忘れ去られていたこの風味のいい品種を、ボナが復活させました。ソコヌスコはメキシコの国境付近にある地名でもありますが、その地域の中でも、まさに紀元前にソコヌスコが栽培されていたほんの2平方キロメートル四方の中だけで作ったものを使用しているとのことです。


現代では入手不可能となっていた貴重なカカオ豆「ソコヌスコ」を復活させ、フローラルで力強いタブレットに仕上げました


自然そのものの色である濃い緑のパッケージに包まれたチョコレートは、口にすると、力強さと繊細さが交互に顔を出し、黄色いフルーツのような甘さを感じる、なんとも言えない風味と長い余韻です。長いショコラの歴史に思いをはせながら、機会があったら、このタブレットをぜひゆっくり味わってみてはいかがでしょう。


「ボナ」のブースには、ソコヌスコ以外にも、やはり幻となっていたカカオをボナが復活させた「マラニョン」や、フランス産の苺にこだわった「フレイジア・フォンダン」など魅力的なタブレットが並びます


さて、翌日からの準備に忙しい会場をあとに、今度は、レセプションの会場へと移動しました。なんと映画館です。ふるまわれたショコラワイン、ショコラ日本酒、そしてボンボンショコラをつまみながらスタートを待っていると、出店しているショコラティエたちが続々とやってきました。
「サロン・デュ・ショコラで会いましょう」という言葉を国内外のショコラティエが口にする映像が流れ、その後は全員が舞台に大集合です。ショコラティエを代表して、ジャン=ポール・エヴァン氏の挨拶があり、ニコライ・バーグマンがデザインしたフローラルリボンを、「アン・ドゥ・トロワ」でカット。


セレクションボックスなどからボンボンショコラがふるまわれました。ユニークなショコラ日本酒は、佐渡の川鶴酒造のもの

開幕の挨拶は、サロン・デュ・ショコラ主催者であるフランソワ・ジャンテ氏とシルヴィー・ドゥース氏から

ボナ氏、エヴァン氏、エスコヤマの小山氏などの手によってリボンがカットされました

「サロン・デュ・ショコラで会いましょう」の言葉をみんなで声を揃えていい、サロン・デュ・ショコラが開幕となったのです。


最後は全員で記念撮影をし、明日からの幸せな戦場に向けての出発となりました

そしてその翌日からは冒頭にも書いた通り。初日から大にぎわい。行列あり、品切れありで、大盛況のうちに幕を閉じたのでした。




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