年が明け、ガレットデロワもしっかり食べて、お正月気分がやっと抜けてくる一月の半ば。毎日ひたすら寒いこの時期、朝起きてショコラショーが飲みたかったり、おやつにチョコ系の濃厚なケーキが食べたくなったりしていませんか。日に日にチョコ気分が増してきているのは、パナデリアだけではないはず……。
気づけばバレンタインデーまであとひと月です。そしてすぐそこには、チョコレートの祭典がひかえている! 今年はどんなチョコレートやショコラティエが話題を呼ぶのか、そろそろチェックしないといけない時期です。
伊勢丹新宿店や銀座三越で開催されたイベントに参加して、一足先に旬のチョコレートをたくさん見てきました。どうぞ、今年のバレンタインのチョコ選びの参考にしてくださいね。



伊勢丹新宿店で毎年1月に開催されるのが、もうみなさんご存知の『サロン・デュ・ショコラ』です。なんともう11回目になるそう。気になる今年のテーマは『ルネサンス(知の再生)』。伊勢丹のバイヤーの方にお話しを伺ってみました。
「昨年は10回目ということもあり、お祭り気分の賑やかなサロン・デュ・ショコラでした。10回で一区切りついたあとの今年は、改めて、原点に立ち返り、カカオそのものや郷土、素材といったものを見つめ直すような機会にしたいと思っています」

さて、出展される中から、このショコラティエだけは押さえたいという大注目は、フランスから初上陸の2人です。

ひとり目はセバスチャン・ゴダール氏。あのピエール・エルメ氏が認めた天才パティシエと聞けば、経歴や、どんなショコラを出すのか気にならない人はいないはず。ゴダール氏は、エルメ氏のあとを継いでフォションのシェフパティシエをつとめていたこともある実力派で、2011年11月、ついに自身の名を冠した店をパリにオープンさせました。多くの店が、伝統菓子の「再構成」をする中、彼は「ルネサンス」、つまり再構成でなく「再生」をテーマに、古典を追及しているとのこと。今回も、ボンボンショコラはシンプルなプラリネを中心に、ほかに用意したのも数種類のタブレットというクラシックなコレクションです。見た目も味もオーソドックスですが、潜んだ迫力はさすが。


セバスチャン・ゴダール氏は、今回のテーマである原点回帰、味の「再生」にふさわしいシンプルなプラリネやタブレットを中心としたクラッシックなコレクションを携えて初上陸します


もうひとりは、フレデリック・アヴェッカー氏。2011年にM.O.F.を獲得、つまり、最新M.O.F.ショコラティエという位置付け。お店があるのは、フランス南部のアヴィニョン郊外で、料理学校の講師を長く務めていた経歴があり、確かな技術が注目されています。「ショコラの旅」をテーマに、国名を冠したボンボンショコラや、クリスマスの時期の3週間だけ発売されるという限定ショコラも今回は特別に上陸するとのこと。見逃せません。


フレデリック・アヴェッカー氏は彼のスペシャリテでもある“ショコラの旅”をテーマに国名を冠したボンボンショコラなどとともに初上陸します


この二人を押さえたら、もっと知りたいのは、チョコレート業界全体のトレンドなのでは? 伊勢丹の方に話を伺うと、
「スイーツの世界も、料理の世界の流行に影響されます。いまだと“燻製”がちょっとしたブーム。もう一つは、タルティネというペースト。ジャム感覚で、パンにつけたりするもので、多くのショコラティエがこれを作りはじめました。あとは、フランスでも原点回帰の傾向があるのか、タブレットでチョコレートを楽しむ傾向も強い。今回もいろいろなところが出していますよ」
とのことでした。

タルティネは、ニース郊外にアトリエを構えるM.O.F.ショコラティエの「クリスチャン・カンプリニ」から3種類、パリのサロン・デュ・ショコラでも連続出展する人気の「ジャン=シャルル・ロシュー」から4種類のほか、M.O.F.ショコラティエ「フィリップ・ベル」からも登場。「ピエール・エルメ」からも出ています。レモンカードや、王道のチョコ味のものなどいろいろですが、冷蔵庫に入れて朝に夕に少しずつ食べたりと、あっという間になくなるボンボンとはまた違い、ちょっとお得な気分になれそうです。


「クリスチャン・カンプリニ」からは、新作タブレット2種と、昨年も大人気だったオリジナルのパート・タルティネが計3種登場します

今回ブランド名が復活した「ベルナシオン」は、真骨頂でもあるタブレットが充実。食べればやっぱりおいしい。王道の味を改めて感じたい人にはお勧めです。変わり種では、「ジャン=シャルル・ロシュー」の桜の花をちりばめた新作タブレットも面白く、目新しいものが好きな方へのプレゼントに喜ばれそう。食べると思いのほか香ります。他にも、いろいろなブランドがタブレットを展開しているので、是非一枚はじっくり味わう自分用に手に入れたいところ。

今回よりブランド名が復活した「ベルナシオン」は、真骨頂であるタブレットが充実


ホワイトチョコレートの中に桜の花をちりばめた「ジャン=シャルル・ロシュー」の 新作タブレット「桜」


その他にも「アルノー・ラエール」や「パトリック・ロジェ」などトップブランドのタブレットが揃います



「とにかく変わったビジュアル」「ユニークなものを」ということであれば、「オテル・デュ・キャップ−エデン・ロック」のカプセル型のチョコが面白い。セレブリティたちのサプリメント代わり? パーティ三昧でお疲れの体にパワーの補給をなんていう洒落があるそうです。義理チョコにもうけるかもしれません。
日本の作り手は、日本の素材を大切にしたボンボン作りをしているようです。たとえば「エス コヤマ」のふきのとうのボンボンショコラ。不思議なのですが、一つのボンボンから、ふきのとうの優しい香りと野性的な香りの両方を味わえるようで、さすがとしか言いようがない味は、絶品!


パーティに大忙しのセレブのためにユーモアたっぷりに“処方された” 「オテル・デュ・キャップ−エデン・ロック」のカプセルショコラ。それぞれの症状に処方されたショコラとは・・・


本場フランスにおいて、2011年、2012年と2年連続W受賞を果たした「エス コヤマ」のボンボンショコラは、それぞれの味の組み合わせが見事


ぶどうの木のチップでスモークしたショコラなど4粒のボンボンショコラが入った「べルナール・ロワゾー」の「バラード アン ブルゴーニュ(ブルゴーニュの散歩)」


さて、毎年のお楽しみ、セレクションボックスのメインは、サンドロ・ボティチェリのビーナスの誕生をモチーフに描きあげたイラストを、ステレオ印刷という特殊な技法で仕上げた箱の中に、「ルネサンス」を表現したショコラを詰め合わせたもの。その名も「セレクション・ルネサンス」です。他に、何らかの受賞作のショコラを集めて詰め合わせた「セレクション・レ・メダイエ(受賞作品ショコラ)」など、合計4種類が登場します。


「セレクション・ルネサンス」
参加ショコラティエ15名が大テーマ「ルネサンス(知の再生)」を表現したショコラを詰め合わせたメインセレクションボックス


「セレクション・レ・メダイエ(私の受賞ショコラ)」
もうひとつのメインセレクションボックスのテーマは「私の受賞ショコラ」。職人自らが自分の人生を振り返り、自身のショコラティエの起点となった「受賞」ショコラをセレクト


一方、銀座三越のテーマは「フュージョン」(融合)でした。
込められた意味は、やはり原点回帰に近いもので、
「ファッション的になりすぎたところを、もう一度、カカオなどの素材や地方、作り手、技術といった原点を知ることで、よりショコラの楽しみが広がるという提案」だそう。
全体を、(1)カカオ、(2)人=技術・創造性、(3)風土=素材と大きくカテゴライズしていて、例えばカカオのところでの一押しは、ボナのメキシコ南部でとれたカカオを使ったタブレット。一枚1680円と高額ですが、是非味わってほしいとのことでした。


1884年、フランス南東部の小さな街ヴォアロンに誕生した老舗ショコラトリー「ボナ」。今回はタブレットの他、地元で収穫されたフランボワーズを使ったガナッシュを唇型のショコラで表現したものなどが登場するそうです


〈ジャン=ポール・エヴァン×人=技術・創造性〉。エヴァン氏の今期のテーマ「火遊び」をモチーフにした期間限定ボンボンショコラ



さあ、伊勢丹同様、これだけは押さえたいという日本初上陸の大注目の2人がいます。なんと、意外にもフランスではなく、ベルギーからの登場でした。三越のバイヤーの方いわく、「原点に戻った時に、日本人の好みはベルギーチョコレート」という結論にも達し、ベルギーからいいショコラティエを探したそうです。なるほど。少なくとも日本人の本格チョコレートの入り口は、ベルギーであることは確か。選ばれた二人は……。

ひとりはブノワ・ニアン氏。「この人に関しては、まず食べてください」と三越の方が勧めてくれました。口にしてみると。フランスのチョコレートに近い薄いコーティングで、非常に洗練されていました。口どけがよく、きめ細かく、どこかアイスクリームを食べているような感じも。アイテムは、バニラやへーゼルナッツといった、王道のものがほとんどのようです。彼は、30歳を過ぎて製鉄メーカーのエンジニアからショコラティエに転向というユニークな経歴を持っていて、カカオ豆からチョコレートを作り、アーモンドのローストも自分で行っています。オープン5年にもかかわらず、ベルギーとオランダに店舗を持っていて、ベルギーのショコラ界の新スターと言われているんだとか。味のわかる人に贈りたい、正統派のチョコレートです。


ベルギーのショコラ界のNEWスターと称されるブノワ・ニアン氏。今回、銀座三越では、そのピュアなオートクチュールショコラの数々を、計10アイテムのラインナップで展開します


打って変わって、奇才と言われるもう一人のショコラティエは、ドミニク・ペルソーネ氏。1992年、24歳の時に「チョコレートライン」という店をオープンさせ、現在は、国内に2店舗目を構えています。世界中のあらゆる素材をチョコレートと合わせてしまうのが特徴。今回も、コーラ、フライドオニオン、カレーといった変わり種のボンボンが登場していてびっくり! 塗ってそのままなめられるリップスティックや、チョコレートクリームなどもあって、流行に敏感な女性にあげるチョコはこれに決まり! 日本では発売されませんが、チョコレートのパウダーを吸引するような怪しげな機械もあって、ベルギーでは大人気なんだとか……奇才と呼ばれるのも納得ですよね。


数あるベルギーのショコラティエの中でも“奇才”と言われるブルージュ出身のドミニク・ペルソーネ氏。彼の門外不出のクリエーションが、ついに日本に初上陸します。今回はボンボンショコラを計6種類のボックスで展開するほか、タブレット2種、リップスティック状やボディクリーム状の変わり種のショコラなど、計10アイテムが紹介されるそうです


銀座三越の魅力は、ここ限定のものがとても多いこと。「ピエール・エルメ」「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ」「フレデリック・カッセル」「ピエール マルコリーニ」や「ル ショコラ ドゥ アッシュ」まで、有名どころの限定ものも揃っています。 日本の作り手では、「ショコラティエ パレ ド オール」の、驚くほど贅沢にシャンパーニュを使ったボンボンが銀座三越限定でおすすめ。上司にあげたら喜ばれそうです。お酒と言えばもう一つ。この日、多くの人が「これおいしい」といいながらつまんでいたのが、とあるレーズンチョコ。「ヴェルディエ」のこの商品、レーズンにはソーテルヌワインをたっぷり含ませています。ワインのような瓶に入っているのも気がきいています。他に人気だったのは、「ベル アメール」から出ている、ベトナム産カカオを使った商品(伊勢丹にもあり)。珍しさが人を引き付けていました。味は力強かった。


「ヴェルディエ」のソーテルヌワインをたっぷり含ませたレーズンチョコ

「ベル アメール」からは、ベトナム産のカカオを使用したショコラ6種とミニマンディアン3種が登場


ここで紹介したのは、ほんの一部。まだまだ紹介しきれていないものはたくさんあります。なんてったって、伊勢丹には約70ブランド、三越には約60ブランドが揃うのですから!
1月終わりからは、両店に通いつめて、納得のいくチョコレートをゲットしてくださいね。




伊勢丹新宿店
「サロン・デュ・ショコラ」2013年1月23日(水)〜28日(月)
「イセタンショコラ セレクション 2013」2013年1月29日(火)〜2月14日(木)

銀座三越
「GINZA Sweets Collection 2013」2013年1月30日(水)〜2月14日(木)



Panaderia TOPへ戻る








※このページの情報は掲載当時のものです。現時点の情報とは
 異なる可能性がございますのでご了承ください。