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真っ赤なサトウカエデのカナダ国旗。私達日本人がカナダの食材で真っ先に思いつくのが、このサトウカエデの樹から採取したメープルシロップではないでしょうか。昔からホットケーキのトッピングとして知られていましたが、ここ数年のパンケーキブームでさらに人気が加速。今やカナダ産メープルシロップは、アメリカに次いで日本は輸出先ランキング2位だそう。日本人の味覚にすっかりおなじみとなったメープルシロップですが、パンケーキ以外の活用術を見出し広げたいと、2006年から始まった「メープルスイーツコンテスト」。プロの菓子職人、パン職人、料理人を対象に、毎年すばらしいアイデアに富んだ作品が表彰されています。回を重ね今年で9年目、応募総数153(菓子部門81、パン部門72)作品の中から書類審査で選ばれた菓子部門5人と、パン部門4人、計9名のファイナリストが、前日の実技審査を終え、10月27日、カナダ大使館において結果発表および表彰式に臨んだのでした。



今回の審査員は、実技審査の会場になった東京製菓学校の梶山浩司氏、「ラ・ヴィエイユ・フランス」の木村成克氏、「ザ・キャピトルホテル東急」の安里哲也氏、「シニフィアン・シニフィエ」の志賀勝栄氏、「ポワンタージュ」の中川清明氏の5名。


今回の審査員
梶山浩司氏 木村成克氏
安里哲也氏 志賀勝栄氏 中川清明氏



クインビーガーデンのケベック・メープルシロップ、もしくはケベック・メープルシュガーを必ず使うなどの条件のもと、応募されたレシピと完成写真(氏名、所属を伏せた状態)にひとつひとつ目を通す書類審査が10月2日に行われ、10月26日、東京製菓学校にて、見た目、使い方、技術面、原価、将来性、そして味覚など総合的な角度から、実技審査が行われました。

それでは、今年のファイナリスト作品を順番に見ていきましょう。




 

  オークラフロンティアホテル つくば

加藤 隆行さん


  Gateaux de voyage Maple
「メープルを活かした手みやげを作ろうと思いました。外側は米粉入りのもっちりザクザクとした食感で、中にメープル味のクレームフランジパンヌをいれ、しっとりさを出し、プラムとグリオットでコクと酸味、クルミとアーモンドで食感を取り入れました。カナダの森を散策している気持になってもらえればと思います」

 

  ダロワイヨ・ジャポン

橋 光行さん


  L'opera d'erable
「ダロワイヨと言えば、オペラと思い立ったところから、複雑になり過ぎずにメープルの風味を最大限に活かせる生菓子をテーマにしました。ローストしたマカダミアナッツとピーカンナッツで食感を出し、口どけの良いメープルバタークリーム、メープルアンビバージュで風味を出しました」

 

  エコール・クリオロ

中塚 隆雄さん


  les feuilles d'automne
「メープルが持つ自然の風味を活かすことをテーマに、子供から大人まで食べられる温かみあるお菓子作りを目指しました。伝統菓子ポンヌフのアパレイユを使い、メープルで煮詰めたりんごのコンポートをたっぷり詰めて焼き、メープルを使ったクレームディプロマットを詰め、風味豊かに仕上げました」

 

  菓子処 ふる里

出口 勝正さん


  みのり 〜楓の香りを添えて〜
「メープルと和素材との調和をテーマに、見た目は栗ですが、桃山という伝統菓子の製法に洋風のテイストを加え、さらにメープルの風味を加えることで、今までの和菓子にない新しい味が表現されました」

 

  パティスリー オ・グルニエ・ドール

加藤 喜子さん


  楓の小路
「大人の男性がかっこよく食べられるデセールをテーマに、黒ビールの苦味にメープルの甘味をあわせ、酸味のあるオレンジソースにはキャラメリゼしたメープルをあわせてあります。冬のはじめに楓に雪が舞ってきた雰囲気を出しました」




 

  ホテル ニューオータニ

鏑木 政俊さん


  natural object

「メープルという自然の恵みを最大限に引き出すため、味と香りを別々に考えました。メープルをいれた甘い生地にマンゴーの酸味で味を引き締め、しっとりした食感を演出。メープルの香りはダイレクトにグラサージュで表現しました」

 

  CLUB ANTIQUE

城所 聡さん



  メープルのトルタ・デッレ・ローゼ
「イタリアでよく見られるバラの花のような甘い発酵菓子。見た目の華やかさ、バターとメープルの相性を、口どけの良いブリオッシュで表現。じゅわっと広がるメープルが味わえます」

 

  パレスホテル東京

濱道 紗織さん



  Ahorn Herbst (メープルの秋)
「ドイツ発祥のヌスボイゲルを基にほっこりした「秋」を表現しました。ラム酒漬けフルーツ入りのきめ細かいフィリングにたっぷりメープルを入れ、口当たりの良い仕上がりになりました」

 

  ドンク

上田 義貴さん


  ケベックの恵み
「無添加で身体に優しいメープルに敬意を表してカナダの国旗をイメージし、皆で分けあって食べて欲しく、切りやすい長方形にしました。しっとりした生地にメープルソボロとヘーゼルナッツの食感、オレンジの酸味で全体をまとめました」


この9人の作品の中からグランプリ、部門優勝が発表されました。

まずは菓子部門優勝から。
中塚隆雄さんの「les feuilles d'automne」が選ばれました。

「このコンクールのために、サントスシェフ夫妻にデモを見ていただいたり、お店のスタッフから応援メッセージをいただいたりしたことがうれしく、感謝の気持を伝えたいです」と中塚さん。

パン部門の優勝は、上田義貴さんの「ケベックの恵み」でした。

「ありがとうございます。賞をいただいたのもコンクール出場を理解してくれる職場のおかげです」と上田さん。

そして栄えあるグランプリに輝いたのは・・・
菓子部門・加藤喜子さんの「楓の小路」です。

「この数ヶ月、メープルと真剣に向き合ってきたので、評価をいただきうれしいです。シェフをはじめ、スタッフ、夫の協力に感謝しています」と加藤さん。


トロフィを手に受賞の喜びを噛み締める3名。左から中塚さん、加藤さん、上田さん


続いて審査員のシェフたちから講評が述べられました。


安里哲也氏
「みなさん時間内に作って感心です。メープルを活かそうとすると、どうしても量を使ってしまう。そうすると甘さが勝ってしまう。副材料の使い方、バランスのとりかたが勝負を分けたと思います」

中川清明氏
「オーブン、空調など作業環境に戸惑ったと思うがよくやりました。チャレンジ精神、アイデア、材料の組み合わせ次第でまだまだ可能性が広がるのでは」

木村成克氏
「みなさん作業がすごくきれいでした。おいしかったです」

梶山浩司氏
「人の仕事を見て久々に感激しました。受賞者のコメントで、同僚や職場に感謝の気持ちを表していることに感心しました。美味しいものを食べると人は笑う。それをしっかり認識して夢のあるお菓子を作ってください」

志賀勝栄氏
「コンテストで入賞できるのは、日常性と芸術性の接点を持った人だと思います。そういう人がよい作品を作ったのではないでしょうか」


審査員とともに集合記念撮影


表彰式の後はメープルブッフェ・乾杯、歓談へ。受賞者の作品こそありませんが、審査員シェフによるオリジナルメープルスイーツ、パンのほか、メープルを使ったお料理、カナダワインやカナダビールなどが供され、受賞者、シェフ、関係者との和やかなひと時を過ごしました。今年から和菓子にもメープルの可能性が試され、ますます親しみのある素材になっていくことと思います。
また、映画「トム・アット・ザ・ファーム」公開記念スイーツとして、パティスリーQBG×コラボレーションケーキ‘タルト・アガット’が紹介されました。劇中に出てくるギョ―ムの母アガットの焼いたりんごのタルトをモチーフにストーリーのさまざまなエッセンスが詰まったオリジナルケーキは、メープルシロップでソテーしたりんごとキャラメルクリーム、バニラ風味にほっこり。(11月30までの販売予定)


志賀シェフのクグロフエラブル

中川シェフのメープルミルクフランス プレーン&クルミ

梶山シェフの「秋の味」「秋の色」

木村シェフのメープルフィナンシェ

安里シェフのメープルと洋ナシのタルト


パティスリーQBG 佐藤シェフのタルト・アガット



独特の風味が気持をほっとさせる甘味〜メープル。今度は実際受賞された作品をお店に食べに行ってみたいものです。

クインビーガーデン
 http://www.qbg.co.jp/





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