Text by Chieko Asazuma  


すっかり過ごしやすくなったこの頃。あたたかいお茶を入れて、ゆっくり美味しいケーキやチョコが食べたいな、なんて思うと、それを見計らったように郵便受けに舞い込んでくるのが、老舗のメゾンやホテルなどからの「2015年クリスマスケーキ」のお知らせです。
めくってみると、ピカピカと輝くケーキの写真が。どれも工夫が凝らしてあり、とても美味しそうで、一足早く気分がクリスマスに向いてしまいます。

さて今回は、「ハイアット リージェンシー 東京」のクリスマスケーキ発表会に行ってきました。ホテルのパティスリーの中で、いま一番気になるのが、まさにここ。パナデリアではすでにおなじみの、ペストリー・ベーカー料理長である佐藤浩一氏の今年のケーキをたっぷりと試食してきました。

行われたのは8月の終わり。でもホテル内の会場には、もうクリスマスツリーが!
「今年初だね」 なんて言いあう声が、集まった人たちの間から聞こえてきました。
そして、前方のテーブルにはクリスマスケーキを中心としたケーキがずらりと並んで。これで気持ちが上がらない人はいないはずです。

ホテルの総支配人である高沢朝美氏の挨拶のあと、佐藤氏から今年のケーキについての簡単な説明がありました。
「今年は、“ブッシュロン”という木の切り株をイメージしたケーキを目玉に、5種類の新作ケーキを作りました。他に、“アルザス”をテーマにしたクリスマススイーツもいくつか。ご存知の通り、アルザスはクリスマスマーケットも有名な町。シュトレンやパン・ド・ ノエルといったクリスマスの伝統的なお菓子もいろいろあります。そのあたりを作って、クリスマスを盛り上げようと思っています」

ペストリー・ベーカー料理長
佐藤浩一氏


早速テーブルに運ばれたのは、渾身の作というブッシュロンをはじめ、4種の新作ケーキを盛ったお皿でした。

まずはブッシュロン。口に運ぶと上側のムースの口どけのいいこと。そしてぱっとアールグレイの香りが広がるのです。言うまでもなく、ショコラの香りも抜群。ザクザクとしたナッツの歯触りも新鮮です。
ケーキの構造を聞けば、ドモーリ社の“アリバ”を使ったムースショコラの中に、ビスキュイショコラ、マリアージュ フレールの茶葉を使ったアールグレイのクリーム、キャラメリゼしたマカダミアナッツ、クルスティアン(サクサクの薄い生地)が入っているんですって。
先ほど口にした時は、そのすべてが一気に口ではじけたというわけなのです。
さすが渾身の作。このケーキはショコラの使い手である佐藤料理長マジックの真骨頂ともいえるような仕上がりで、アリバの特徴でもあるウッディな香りと後から香る華やかなフローラルブーケの香りなど、様々な素材を重ねながら味が構成されています。
トップに飾られたマカロンやストロベリー、ブルーベリー、ラズベリーなどの香りにも統一感があり、このケーキの切株の形が、そのまますべてアリバの香りで統一されているところに面白みがあります(木の切り株とウッディなアリバ)。
そして、このトップのマカロンやフルーツにもちゃんと意味があり、雪の中から芽吹く春の兆しをイメージしているそうです。
どこまでも追求して細かく計算した味は、気迫を感じるものがありました。

ブッシュロン(高さ約18cm・直径約11.5cm)
¥8,000(8,640) 限定30個
見た目の可愛らしさからは想像できないほど味や香り、食感にもこだわりぬいている新作ケーキ


他の3つもご紹介すると、まずは“ブッシュ・ド・ノエル・ショコラ”。
切れのいいショコラの味と香りが印象的で、佐藤氏はショコラ使いが本当に上手だと感じました。ショコラはブッシュロンと同じく、アリバを使用し、ムース、ジュレ、ガナッシュ、ビスキュイ、クルスティアンと、まさにショコラ尽くし。ショコラ好きにはたまらないですよね。

ブッシュ・ド・ノエル・ショコラ(幅約7cm×長さ約17cm)
¥3,800(4,104)
側面に描かれた、サンタクロースを待つ夜の街のデコレーションが楽しい大人のケーキ


“ブッシュ・ド・フレーズ”は、ホワイトチョコとイチゴがベース。定番の組み合わせのようですが、ホワイトチョコのムースに加えられたオレンジとレモンのコンフィとアーモンドが面白い。柑橘の香りと歯触りが新鮮です。ブッシュの両側にはリボンの飾りがほどこされて、それが何とも可愛らしい。

ブッシュ・ド・フレーズ(幅約8cm×長さ約17cm)
¥3,700(3,996)
両側にはクリスマスプレゼントをイメージしたチョコレートのリボンがあしらわれている


“ジャルダン・ド・フレーズ”は、オンラインショップでも取り扱いがある、配送限定のケーキ。イチゴの庭というネーミング通り、イチゴをメインに、マスカルポーネチーズやパイナップルを合わせています。パイナップルの甘酸っぱさが思いのほか効いていて、まわりを覆うホワイトチョコにも存在感があります。

ジャルダン・ド・フレーズ(リース型・直径約18cm)
¥5,000(5,400)
 ★ ONLINE SHOP取扱商品
昨年初登場した人気の冷凍ケーキが今年も登場。遠くにいてもこのホテルのケーキを楽しむことができるのが嬉しい


これら4つのお皿に盛られたもの以外に“ブール・ド・ノエル”という新作ケーキがありました。
これはフランスでクリスマスシーズンに登場する、ツリーのオーナメントを模したお菓子、ブール・ド・ノエルを佐藤氏の得意なショコラで仕立てたもので、まあるい形をしたボールが3つ並んでひとつのお菓子を構成しています。
1つ目は、ドモーリ社の“スル デル ラゴ”というショコラを使い、トンカ豆風味のブリュレやオレンジ風味のキャラメルガナッシュ、ビスキュイショコラを合わせたもの。トンカ豆のスパイシーな風味がよく出ていました。
2つ目は、同じくドモーリ社のホワイトチョコ“ビアンコ”を使った白いボール。そこにイチゴやベリーなどの赤いフルーツのジュレや、ホワイトチョコのムース、香りのいいピスターシュのムースとビスキュイが包まれています。
3つ目のボールは、アリバを使用したへーゼルナッツ風味のムースショコラや、へーゼルナッツのババロア、ビスキュイと、へーゼルナッツ尽くし。ナッツの香ばしい香りがそそってきます。
このケーキの特徴は、それぞれのボールの中に、これだけ難解な味の構成が詰め込んであり、しかも、まわりのショコラが中のムースと一体となって味を構成しているということ。3つのケーキを一度に食べられ、なんだかお得な気分になれる、ブール・ド・ノエルでした。なんといっても、この可愛らしい形は、パーティーに持っていくと、開けた瞬間、歓声が上がりそうです。

ブール・ド・ノエル(幅約9cm)×長さ約18cm)
¥3,100(3,348) 限定50個
可愛らしい3つのオーナメントの中身は、それぞれが繊細な構成になっていて驚かされる


その他にも定番の「クリスマスショートケーキ」やマロンをたっぷり使った人気の「モンブラン」なども登場。選択肢の多さに迷ってしまいそう



ここからは、アルザスのお菓子へ。こういうどっしりとしたお菓子をきちんと作っているのも、このホテルの偉いところ!
まずはアルザスのハレの日に欠かせないお菓子がクグロフです。ご存知の通り、ブリオッシュ生地の中にレーズンをまぜこんでクグロフ型と呼ばれる陶器の型で焼いたものですが、まわりを砂糖でコーティングして、しっとりした中身と厚い焼き目の外側とのグラマラスなコントラストが実現。ふわふわなだけではなく、味わいも深い、きめの細かい生地をしています。

クグロフ  ¥1,000(1,080)
★ ONLINE SHOP取扱商品
バターの香りと生地の味わいが考えられたクグロフは、シンプルな見た目からはわからない奥深さがある


“パン・ド・エピス”も知られたお菓子かもしれませんが、スパイスのクセが強くてあまり好きではないという方もいるのでは。実は佐藤氏も、それほど好きなお菓子ではなかったそうです。ならばもっと食べやすく、自分もみんなもおいしいと感じるものにしようとオリジナルレシピを開発。シャンパーニュ地方のはちみつをたっぷりと使って、パサつきのない生地にしています。どこか和菓子を感じさせるしっとり感のあるこのパン・ド・エピスは、とてもエレガントで、はちみつの香りが尖がって出ることもなく、スパイスの香りの流れを中心として、それぞれの素材がからみあっていくという感じ。そして、まわりのグラッサージュが、いかにもパティシエが考えるパン・ド・エピスという感じがしました。このまま食べるのももちろんおいしいし、上に何かのせてオードブルにしたり、クリスマス限定で作られたドライフルーツとナッツがたっぷり入った“コンフィチュール・ノエル”をのせるのもお勧めです。

パン・ド・エピス  ¥1,800(1,944)
★ ONLINE SHOP取扱商品
日本人にも食べやすく作られたパン・ド・エピス。だからといって本場アルザスの味わいもしっかりと表現されているのが素晴らしい。絶妙なスパイス使いに拍手!

コンフィチュール ノエル  ¥600(648)
★ ONLINE SHOP取扱商品
セミドライにしたアンズ、レーズン、イチジク、オレンジとレモンのコンフィ、ヘーゼルナッツ、くるみを、りんごと一緒にスパイスで炊き上げたコンフィチュール


“パン・ド・ノエル”は、アルザスではヴェッラヴェッカ(洋梨のパン)と呼ばれて古くから愛されているもので、生地はごく少量しか入らず、ほとんどドライフルーツやナッツを固めたような伝統菓子です。薄くスライスしてそのまま、あるいはチーズをのせて食べたり、ウイスキーやワインのお供にも。日持ちがするのも特徴です。

パン・ド・ノエル  ¥1,600(1,728)
★ ONLINE SHOP取扱商品
ドライフルーツとナッツを固めて食べているようなパン・ド・ノエルは、クセの強いチーズをのせても、その旨みが負けない


そして“シュトレン”、これも“ブッシュロン”と並ぶ力の入った一品でした。生地と一緒に、洋酒に漬け込んだドライフルーツやナッツを練り込みますが、こちらのものはかなり一体感があります。生地に弾力はなく、ホロホロ。焼き菓子の一歩手前のような仕上がりは、パン屋さんのシュトレンとは一味違う、いかにもパティスリーのシュトレンというリッチな味わいを感じました。シュトレンを今までいろいろ食べている人ほど、この丁寧に作られた味に感動しそう。こちらも日持ちがするので、早めに買って、クリスマスまで、味の変化も楽しみながらゆっくり食べ進めるのがお勧めです。

シュトレン(約400g)  ¥2,700(2,916)
★ ONLINE SHOP取扱商品
パナデリア大絶賛のシュトレン。じんわりと染み渡る旨みをぜひ、体験してみて

佐藤料理長(左)とその片腕の仲村シェフ(右)。クリスマスケーキ発表会という大きな一仕事を終えてほっと一息のツーショット


ケーキの予約は10月20日から。あまりのんびりもしていられませんが、まだ少し時間もあります。それまでの間は秋の新作もいろいろ出ているので、このホテルのお菓子を食べたことのない方は、まずはそちらを楽しんでは。きっと佐藤氏の腕に納得し、即クリスマスケーキの注文、となると思いますよ!



魅力的な秋ガトーの数々

ショコラバナーヌ
リュクス マロン
ドゥスール ラクテ
ポワール ミエル
ポム キャラメル
サンマルク



クリスマスケーキ』概要

場所: ペストリーショップ(ロビーフロア)
営業時間: 10:00〜21:00

〈クリスマスケーキ〉
ご予約期間: 2015年10月20日(火)〜12月20日(日)
お渡し期間: 2015年12月20日(日)〜12月25日(金) 11:00〜20:00

〈アルザス地方のクリスマススイーツ〉〈シュトレン〉
販売期間: 2015年11月10日(火)〜12月25日(金)
※ シュトレンは11月20日(金)より販売

の商品はONLINE SHOPでも販売いたします。
URL:http://goo.gl/Huq6NK

詳細は「ハイアット リージェンシー 東京」公式サイトよりご確認ください。
ただし、9月15日現在、まだ詳細はアップされていないので、予約、もしくは販売期日近くなったらご確認ください。
http://www.tokyo.regency.hyatt.jp/ja/hotel/home.html




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