取材・文 佐々木 千恵美  


今年で11年目を迎えたクインビーガーデン主催の「メープルスイーツコンテスト」。2006年の1回目から、これまでの応募総数を数えたら1651点。メープルを使ったオリジナルスイーツのレシピ数は、すでに世界トップなのではないでしょうか。

「十年ひと昔といいますが、今後はもう一度原点に戻って、カナダのメープルシロップ、メープルシュガーのクオリティの良さを広め、日本の優秀な職人の育成に努めたいと思います。」
と、主催の株式会社クインビーガーデン代表取締役社長 小田忠信氏。

プロだからこそメープルの独創的な活用術を見出して欲しい、カナダのメープルシロップ、メープルシュガーを普及させたいという2本柱でスタートした同コンテストは、新たなステージへと踏み出しました。今年の応募総数は123(菓子部門61、パン部門62)作品。その中から書類審査で選ばれた菓子部門4人と、パン部門4人、計8名のファイナリストが、10月30日に実技審査を終え、11月9日、カナダ大使館において結果発表および表彰式に臨んだのでした。



今回の審査員は、実技審査の会場になった「東京製菓学校」の梶山浩司氏、「アン・プチ・パケ」の及川太平氏、「パティスリー タダシヤナギ」の柳正司氏、「ビゴの店」の藤森二郎氏、「ブーランジェリー スドウ」の須藤秀男氏の5名。


今回の審査員
東京製菓学校 梶山浩司氏 アン・プチ・パケ 及川太平氏
パティスリー タダシヤナギ 柳正司氏 ビゴの店 藤森二郎氏 ブーランジェリー スドウ 須藤秀男氏



クインビーガーデンのケベック・メープルシロップ、もしくはケベック・メープルシュガーを必ず使うなどの条件のもと、応募されたレシピと完成写真(氏名、所属を伏せた状態)にひとつひとつ目を通す書類審査が9月25日に行われ、8人のファイナリストによる実技が10月30日、東京製菓学校にて行われました。審査となるのはメープルの生かし方、美味しさ、美しさ、技術力など総合力。5人の審査員の視線で緊張する中、菓子部門3時間、パン部門5時間プラス前日仕込み1時間という時間内での戦いが繰り広げられたのです。


それでは、今年のファイナリスト作品を順番に見ていきましょう。




 

  レストラン ドゥスール お菓子の森

寺田 和行さん


 Bijou (ビジュー)


すべてのパーツにメープルを使って、どこを食べてもメープルが感じられるように作りました。見た目がきらきらしていた印象から、ビジュー(宝石)という作品名にしました。
寺田 和行さん
「Bijou(ビジュー)」と断面

 

  パティスリー イグレック オガワ

三浦 早紀さん


 Walnuts&Maples (ウォールナッツアンドメープルズ)


大好きなロールケーキでメープルのお菓子を表現しようと思いました。全てにメープルを使っています。クリームにはパータボンブベースのバタークリームを。卵黄とメープルのコクを合わせたキャラメル、くるみと深みのある味わいになりました。作品名はふんだんに使用したくるみとメープルが想像できるようにSをつけました。
三浦 早紀さん
「Walnuts&Maples(ウォールナッツアンドメープルズ)」と断面

 

  ジョエル・ロブション ラボラトワール

村田 健さん


 Plume d'erable (プリュム・デラブル)


メープル、洋梨、キャラメルの3つの素材で構成、それぞれの味を感じられるようにしました。作品名のプリュム・デラブルはメープルの羽という造語。メープルの軽やかで優雅な甘みを羽に例えました。
村田 健さん
「Plume d'erable(プリュム・デラブル)」と断面

 

  大阪マリオット都ホテル

筧田 浩二さん


 Belle automne (ベルオートンヌ)


メープルの心地よい甘み、香りを引き立てる要素として苦味のヘーゼルナッツ、酸味の洋梨と組み立てました。メープルは全てのパーツには使用せず、あえて抜きのパーツを組むことで、メープルの香りをすっきり感じることができます。秋のメープル街道に着目した作品名にしました。。
筧田 浩二さん
「Belle automne(ベルオートンヌ)」と断面




 

  Petit Canard(プティカナール)

高野 洋平さん


 Maple Quintet (メープルクインテット)
   〜やさしい美味しさ 5重奏〜


5つのパーツに全てメープルを使い、5重奏を奏でるソフトなイメージで作品を考えました。焼成すると損なわれやすいメープルの風味をセンターに閉じ込め、メレンゲのソフト感とパン生地の食感の対比、メープルの甘さとチェリーの酸味、全体の食感、風味、バランスを考えました。
高野 洋平さん
「Maple Quintet(メープルクインテット) 〜やさしい美味しさ 5重奏〜」と断面

 

  Bakery&Cafe ESOLA(ベーカリーアンドカフェエソラ)

渡辺 将司さん


 メープルクロワッサン 


楓の葉の四季の変化の中で、歩くとサクッと音がする落ち葉のカーペットをイメージし、クロワッサン生地で作ることに決めました。生地にもメープルを使い、折り込みを少なくすることでサクサクッとした食感と軽さを出し、焼成後にはラム酒を加えた自家製シロップを塗り風味を活かしました。
渡辺 将司さん
「メープルクロワッサン」と断面

 

 

平良 透さん


 Erable Pistache (エラブルピスタッシュ)


メープルを使ったパーツの組み合わせ。生地にピスタチオペースト、クリームチーズを包むことでもちっとした食感と香り、断面からもピスタチオの緑がきれいに見えるように心がけました。またメープルの香りを消さないように完全に混ぜ切らないフィリングの作り方を意識しました。
平良 透さん
「Erable Pistache(エラブルピスタッシュ)」と断面

 

  サンジェルマン

野村 聡さん


 Patate douce d'erable (パタートドゥースデラブル)


メープルの新しい使い方をしたくてハード系に活かすことをテーマにしました。「塩バターパン」をヒントにメープルバターを巻き込み、クラムをしっとりさせ、溶けだした巻き込みバターが作る底面のカリカリ感が楽しい食感となりました。
野村 聡さん
「Patate douce d'erable(パタートドゥースデラブル)と断面


この8人の作品の中からグランプリ、部門優勝が発表されました。

まずは菓子部門優勝から。
三浦 早紀さんの「Walnuts&Maples(ウォールナッツアンドメープルズ)」が選ばれました。

「まさか自分が選ばれるとは思っていなかった。本当は栄養を考えたメープルのお菓子を作りたかったけれど、今の自分には未熟でできなかった。今後作っていきたいです。」

パン部門は平良 透さんの「Erable Pistache(エラブルピスタッシュ)」が優勝しました。

「実はコンテストはこれが初めてでした。職場の人にアドバイスをいただいたので早く報告したいです。」と平良 透さん。

そして栄えあるグランプリに輝いたのは・・・
パン部門の野村 聡さんの「Patate douce d'erable(パタートドゥースデラブル)」。

「実はこのコンテストには1回目から応募していました。何年目か途中で応募を断念したこともありましたが、11回目の今回初めて書類選考が通りました。その間、家族にずっと負担をかけていたので、これからは家族サービスがしたいです。」と涙を堪えながらコメントされました。

審査員の柳氏からグランプリ野村 聡さんに表彰状、副賞などを授与。

受賞した3名。左から三浦 早紀さん、野村 聡さん、平良 透さん。

続いて審査員のシェフたちから講評が述べられました。

須藤氏
「店でもメープルは良く使うが、みなさんの作品を見て、まだ可能性はあるなと思いました。」

及川氏
「みなさん良い使い方をしていた。ロールケーキはシンプルでストレート。でも経験上もう一歩か。グランプリのパンは、噛めば噛むほどよく味が出て、おかわりをいただいた。」

梶山氏
「できれば素材と向き合うためにも、カナダに出向いてインスピレーションを広げて欲しい。」

藤森氏
「高1のとき、カナダにホームステイした経験があり、そのときホストが焼いてくれたクッキーやマフィンが美味しかったことを思い出した。審査員が一番勉強をしたと思っている。」

柳氏
「グランプリ作品は、さつまいもとメープルの相性が良く、もう一度食べたいと思った。実技中焦がしてしまったり、時間がなかった残念な人もいた。コンクールで終わってしまうのではなく、その後にメープルで美味しいスイーツを広めたい気持ちが大事。入賞しなかった人はそこを考えて作ってほしい。」

審査員がおかわりするほどのグランプリ作品「Patate douce d'erable(パタートドゥースデラブル)」、お店で販売されたらぜひいただいてみたいですね。

9月25日に行われた書類審査(一次審査)の様子。氏名、所属等を伏せた状態で、並べられた写真とレシピから8作品が選ばれた。





10月30日の実技審査(最終審査)の様子  



プレゼンテーションと試食審査


表彰式の後は恒例の懇親会。会場にはメープルを使ったお料理とカナダワインやカナダビールの他に、審査員シェフによるオリジナルメープルスイーツとパンが並び、参加者の目と口を楽しませてくれました。

柳シェフのパレ ド レラブル。きめ細かな生地に花豆のほっこり感がアクセント。

梶山シェフの和菓子。秋時雨、秋姿、楓餅。メープルの香りで秋を味わう。

須藤シェフのメープル スコーン クロテッドクリーム添え。シンプルながらダイレクトにメープル風味が楽しめる。



及川シェフのクレーム デラブル。なめらかなプリンにメープルの香りでコクのある味わいに。

藤森シェフのメープルづくし。ラスクやフレンチトーストなど、5種類のバリエーション。



メープルを使ったお料理の数々。アルバータ産ビーフロイン肉串カツ メープルバルサミコソース、ケベック産鴨の胸肉のメープルシロップ焼き黒コショウ風味、アルバータ産大麦とアヴォカドのサラダ メープルシロップマスタードで‥。食材もカナダ産にこだわって仕上げられたメープル料理の数々。



今回の式で一番多くゲストの話題にあがったのがメープルの栄養と健康面。メープルシロップは、カルシウムやカリウムなどのミネラル成分が多く、その中には食事を美味しくいただくために必要な亜鉛やマグネシウムも含まれています。カロリーも、摂取時の血糖値の上昇度を示すGI値も砂糖類と比べて低く、健康面でも注目すべき点がたくさんある甘味料といえます。今後はこのあたりにスポットを当てた作品が期待されるのではと感じました。健康を気にしながら美味しいものをいつまでも食べ続けたい、そんなニーズが増えている時代です。ぜひ来年もメープルの特性を生かしたすばらしい作品が生まれますように。

カナダ大使はじめ、来賓の方々を交え表彰式後の記念撮影。


クインビーガーデン
 http://www.qbg.co.jp/





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