取材・文 佐々木 千恵美  


フランス産クリームチーズの代名詞‘Kiri(キリ)’の味わいをスイーツで表現する大会「キリ クリームチーズコンクール」の最終審査発表・表彰式が8月3日、ウェスティンホテル東京にて行われました。

今回で13回目を迎える同コンクールは、スイーツ界を代表する日本最大級のプロ向けコンクールのひとつ。全国から寄せられた応募作品の中から、6月28日の書類選考による一次審査を通過した4部門の合計20作品20人が、8月3日、日本菓子専門学校における最終審査会で実技、プレゼンで競い、同日の夜、各賞が発表されたのです。

ジュニア 長谷川千将(左)、生菓子 田中裕子(右):日本菓子専門学校にて行われた実技審査の様子


結果をお伝えする前に、「キリ クリームチーズコンクール」のあゆみをおさらいしましょう。

同コンクールは、「キリ クリームチーズ」の幅広い可能性と魅力を、より多くの人に広めるとともに、業界の活性化と次世代パティシエの育成という目的で、お菓子に携わるプロフェッショナルを対象に、2000年からスタートしました。ミレニアムと呼ばれたこの年は主催のアルカンが、キリ クリームチーズを取り扱って20周年を迎えた記念の年でもありました。そのような節目を出発点に、より広くキリの美味しさが生きる使い方を模索していこうと、開催されてきたのです。

その後2007年までは毎年、以降は2年に一度の開催となり、2017年の今年は13回目。部門については、当初「生菓子」「ギフト菓子(焼菓子)」の2部門だけだったのが、2002年からは「ベーカリー部門」「アシェット部門」が追加され、2009年には「和菓子部門」、2011年にはコンビニエンスストアを意識した「ファクトリー部門」が設けられました。さらに2013年には、キリが日本で発売されて30周年を迎え、次世代の育成のためにと「ジュニア部門」が創設されることに。

こうして発展してきた同コンクールは、年を追うごとに順調に応募作品が増加、2004年には488作品にもなりました。しかし2011年の震災後、応募作品数は半数に減少。それから6年が経った今年は258作品の応募があり、再び増加へと転じました。

回を重ねるごとに様々な分野への認知度が上がり、コンクール入賞作品がパティスリー、コンビニエンスストアで商品化され、消費者の注目度も高くなってきています。

前回2015年からは、ファクトリー部門に光文社「Mart」の読者が選ぶ「Mart読者審査員特別賞」を特設し、主婦層を中心とする消費者目線で作品が選ばれ、より一般の消費者に近いコンクールへと歩みを進めています。

コンクールも時代を読み取り、変化と進化をしていくのですね。

最終審査発表・表彰式は主催者である「株式会社アルカン」代表取締役社長 檜垣周作氏と、同じく「ベル ジャポン株式会社」代表取締役、大寛氏からの挨拶で始まりました。


今年は前回の2年前に比べ応募者数は35%増、特にジュニア部門は77%も増加したと大寛氏
キリ クリームチーズを通して家族みんなを笑顔にしたいと檜垣周作氏


続いて審査員の紹介。今回は「菓子工房 オークウッド」の横田秀夫シェフ、「ラ メール洋菓子店」の大関博之シェフ、「パティシエ エス コヤマ」の小山進シェフ、「アテスウェイ」の川村英樹シェフ、「菓子工房アントレ」の高木康裕シェフの5名。そして「Mart」の読者審査員を代表して「Mart」編集長の大給近憲氏が壇上に上りました。

読者ひとりひとりとの情報交換から得た情報がもとになった雑誌「Mart」編集長の大給近憲氏。主婦中心である読者審査員の目を通して、一般家庭にキリ クリームチーズの知名度がアップすることを期待。


さあ、結果発表と表彰式です。

はじめに「ジュニア部門」。ジュニア部門は、経験年数3年未満(年齢不問)、キリ クリームチーズの味が良く出ている生菓子であることが条件で、独創性、見た目、味などを総合的に審査します。

見事最優秀賞に輝いたのは、長谷川千将さん(浜名湖 ぬくもりの森 お菓子の森)の「Soleil Aveuglant(ソレイユ アブゥグラント)」。

ジュニア部門

最優秀賞
 長谷川千将

最優秀作品

「Soleil Aveuglant
(ソレイユ アブゥグラント)」





制限時間に焦りを感じたが、自分の思っていたケーキができ良かったと、喜びを語る長谷川千将さん。


銀賞は、坂翔さん((有)ラメール洋菓子店)の「まっちゃふろ和ーじゅ〜黒蜜クリームを添えて〜」。
銅賞は、森下希貴さん(ホテル日航姫路)の「“和音”」。

ジュニア部門

銀賞
 坂翔

銀賞作品

「まっちゃふろ和ーじゅ〜黒蜜クリームを添えて〜」




銅賞
 森下希貴

銅賞作品

「"和音"」




5人のファイナリストへ、表彰は審査員の大関博之シェフから。


続いて「生菓子部門」。キリ クリームチーズの味が良く出ている生菓子であることが条件で、独創性、見た目、味などを総合的に審査します。

最優秀賞を勝ち取ったのは、田中裕子さん((株)パティシエ エスコヤマ)の「Blanc Supreme(ブラン シュプリーム)」。

生菓子部門

最優秀賞
 田中裕子

最優秀作品

「Blanc Supreme(ブラン シュプリーム)」




「4年前ファイナルに残ったものの、力量不足で悔しかった。今回は結果が出せて良かった」と、賞品のフランス研修旅行の目録を手に小山シェフと記念撮影をする田中さん。奇しくも師弟が並んだ。


銀賞は、橋秀樹さん((株)リビエラ)の「Elégance(エレガンス)」。
銅賞は、土脇 元文さん(ザ・リッツカールトン東京)の「Fromage Japon(フロマージュ ジャポン)」。

生菓子部門

銀賞
 橋秀樹

銀賞作品

「Elégance(エレガンス)」




銅賞
 土脇元文

銅賞作品

「Fromage Japon(フロマージュ ジャポン)」




審査員の小山進シェフから表彰された5人。


次に「焼菓子部門」。キリ クリームチーズの味が良く出ていることと、常温保存、常温販売が可能で、賞味期限14日以上が条件。独創性、見た目、味などを総合的に審査します。

最優秀賞を受賞したのは、伊藤忠重さん((有)ラメール洋菓子店)の、「ゴマ味噌香る芳醇チーズ〜山椒の辛味をピリッと利かせて〜」。

焼菓子部門

最優秀賞
 伊藤忠重

最優秀作品

「ゴマ味噌香る芳醇チーズ〜山椒の辛味をピリッと利かせて〜」




審査員の高木シェフも美味しいと絶賛した伊藤さんの作品。「4年前に銀賞を取った時はうれしかったが、後々トップになれなかったことが悔しく、再チャレンジした。シェフの指導の下で日に日にコンクールへの思いが強くなった」とフランス研修旅行の目録を手に喜び溢れる表情で記念撮影。


銀賞は、濱田智陽さん((株)ミリアルリゾートホテルズ)の「洒落たクリームチーズのスコーン」。
銅賞は、寺山直樹さん(プラス・オ・ソレイユ)の「Kouglof George(クグロフ ジョルジュ)」。

焼菓子部門

銀賞
 濱田智陽

銀賞作品

「洒落たクリームチーズのスコーン」




銅賞
 寺山直樹

銅賞作品

「Kouglof George(クグロフ ジョルジュ)」




「焼菓子でキリ クリームチーズの味を表現するのは自分の経験からもとても難しい。その中でがんばった、励みにしてほしい」と語る審査員の高木康裕シェフとファイナリスト5人。


最後に「ファクトリー部門」。この部門に限り「ご褒美」というテーマが設けられ、キリ クリームチーズの使用量が総重量の20%以上あり、大量生産用工場ライン生産可能な製品であることを条件に、最終審査プレゼンテーションでは、販売時のパッケージも併せて審査の対象となります。

最優秀賞を受賞したのは、渡辺ひろ子さん((株)柏屋)の「カッサータ風 ケーキバー」。

ファクトリー部門

最優秀賞
 渡辺ひろ子

最優秀作品

「カッサータ風 ケーキバー」




「ご褒美というテーマだったので、子供たちのことを考えて作った」とフランス研修旅行の目録を手に笑顔の記念撮影。


銀賞は、今伸五さん((株)もりもと)の「しあわせスフレ」。
銅賞は、本田美幸さん((株)柏屋)の「チーズ大福〜山遊〜」。

ファクトリー部門

銀賞
 今伸五

銀賞作品

「しあわせスフレ」




銅賞
 本田美幸

銅賞作品

「チーズ大福〜山遊〜」




そして、「Mart読者審査員特別賞」には、ファクトリー部門でも銅賞に選ばれた本田美幸さんの「チーズ大福〜山遊〜」が選ばれました。

「読者審査員のみなさんにかわいいと言ってもらえ良かった。会社の応援もあって頑張ることができた。これからもおいしいお菓子を作りたい」と受賞の喜びを語る本田さん。

「実技のない分、プレゼン力が鍵。原価率、配送できるか、お客さんのニーズにこたえているかなどで判断した。」と審査員の川村英樹シェフ。「主婦層の読者審査員は、見た目のかわいさはもちろん、ご褒美というテーマの中に、自分と家族である子供や両親のことも想定している。そういう意味で新しい味の取り合わせ、発見ができる作品を選んだのでは」と「Mart」編集長の大給近憲氏。


全ての結果発表の後、「内海会」会長でもある審査員の横田秀夫シェフから審査総評が語られました。

「コンクールで成績がすごい人は、書類選考で見ると、キリ クリームチーズでどんなことができるのかじっくり考えています。そして本選に、時間内に作業ができるかどうか、考えて使っています。本当に僅差でした。」と述べられました。

普段の菓子作りに加え、キリ クリームチーズに特化して考え、普段とは違った味わいをたくさんの人に知ってもらうことが重要とコンクールの意義を語る横田秀夫シェフ。


そして「一般社団法人 日本洋菓子協会連合会」専務理事の石黒莞治氏からの乾杯のご挨拶と、「協同組合 全日本洋菓子工業会」理事長の加藤信氏からの中締めのご挨拶をいただきながら、シャンパーニュで祝杯をあげ、会場に集まった関係者たちは、受賞作品やパーティー料理を手に写真撮影や会話が弾み、和気あいあいとした交流が繰り広げられました。



技術とアイディアを競い合うこの製菓コンクールは、応募作品の傾向からスイーツ界のトレンド予測も注目されています。過去の受賞者には、須藤秀男シェフ、伊原靖友シェフ、コ永純司シェフなど現在第一線で活躍されているシェフや、今大会審査員を務めた大関博之シェフ、何年ものキャリアを持ちながら果敢に挑戦を続けられた冨田和彦シェフなど、私の知る限りでも、素晴らしいプロフェッショナルがたくさんエントリーされていたことに改めて関心を抱きました。

一度挑戦し頂点を逃した者は、悔しさをばねに、何年後かに成長した姿で戻ってくる。今回もそんな挑戦者が最優秀賞を受賞しています。プロになって間もないあなたも、長年歩んできたベテランも、自分の可能性と向き合う、世界が広がるチャンスです。家族みんなを笑顔にするスイーツを、次回もぜひ私たちに届けてください。


株式会社アルカン
 http://www.arcane.co.jp/

ベル ジャポン株式会社
 http://www.bel-japon.com/
*「キリ クリームチーズコンクール」については以下の「プロフェッショナルの方へ」ページ参照
 http://www.bel-japon.com/professional/

光文社Mart
 http://mart-magazine.com/contents/index.shtml




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