取材・文 佐々木 千恵美  


フランス産クリームチーズの代名詞‘Kiri(キリ)’の味わいをスイーツで表現する2年に一度の大会「キリ クリームチーズコンクール」の最終審査発表・表彰式が8月7日、ウェスティンホテル東京にて行われました。

スイーツ界を代表する日本最大級のプロ向けの同コンクールも今年で14回目。「生菓子部門」、「焼菓子部門」、経験3年未満の「ジュニア部門」、「ファクトリー部門」の4部門に、全国から寄せられた総数213の応募作品がありました。その中から6月26日、3時間に及ぶ書類選考で一次審査を通過した各部門5作品、合計20作品を考案したプロ20人が、8月7日、日本菓子専門学校(東京都世田谷区上野毛)における最終審査会で実技、プレゼンで競い、同日の夜、各賞が発表されたのです。


同コンクールは、「キリ クリームチーズ」の幅広い可能性と魅力を、より多くの人に広めるとともに、業界の活性化と次世代パティシエの育成という目的で、お菓子に携わるプロフェッショナルを対象に、2000年からスタートしました。ミレニアムと呼ばれたこの年は主催のアルカンが、キリ クリームチーズを取り扱って20周年を迎えた記念の年でもありました。そのような節目を出発点に、より広くキリの美味しさが活きる使い方を模索していこうと開催されてきたのです。

審査の条件は「『キリ クリームチーズ』の味がよく出ていること」。「より多くの方に『キリ』のおいしさが伝わるような」これまでの受賞作品はレベルも高く、実際の商品化につながった作品も多く存在します。


最終審査発表・表彰式は主催者である「株式会社アルカン」代表取締役社長 檜垣周作氏と、同じく「ベル ジャポン株式会社」代表取締役、フランソワ-グザビエ・モロー氏からの挨拶で始まりました。

キリ クリームチーズが日本で発売されてから今年で39年目。今後もキリ クリームチーズを通して家族みんなを笑顔にしたいと檜垣周作氏

2000年にスタートしたキリ クリームチーズコンクールには延べ4000人以上、約4500ものレシピが作成された。日本ほどキリ クリームチーズでレベルの高いケーキを作る国はないとグザビエ・モロー氏。


続いて審査員の紹介です。今回は内海会会長で「菓子工房 オークウッド」の横田秀夫シェフ、「ラ メール洋菓子店」の大関博之シェフ、「パティシエ エス コヤマ」の小山進シェフ、「パティスリー アテスウェイ」の川村英樹シェフ、「菓子工房アントレ」の木康裕シェフ、「ブロンディール」の藤原和彦シェフの6名で審査を行いました。

さあ、結果発表と表彰式です。最優秀賞受賞者4名には、副賞としてフランス研修旅行が贈呈されます。また、各賞受賞者には作品販売時に使用可能な「キリ クリームチーズコンクール」認定ロゴが贈呈されます。

はじめに「ジュニア部門」。今年で4回目のジュニア部門は、経験年数3年未満(年齢不問)キリ ク リームチーズの味が良く出ている生菓子であることが条件で、独創性、見た目、味などを総合に審査 します。


発表と表彰は大関シェフが行いました。
「若手にとっての登竜門。これを機にますますがんばってほしい。すべておいしく本当に僅差だった。」

見事最優秀賞に輝いたのは、新妻春佳さん(パティスリー アテスウェイ)の「Petits bijoux(プティ ビジュー)」。

ジュニア 最優秀賞 新妻春佳さん(パティスリー アテスウェイ)
最優秀賞作品「Petits bijoux(プティ ビジュー)」

最終審査での作業の様子

フランス研修旅行目録を手に大関シェフと並んで。「自分にとって初めてのコンクールで緊張もあったが、このような賞がいただけたのは職場の先輩や周りの方のおかげ。」


銀賞は、下釜沙紀さん(パティスリー アテスウェイ)の「le bourgeon(ル ブルジョン)」。
銅賞は、鈴木玖季さん(アマン東京)の「habataki(ハバタキ)」。

銀賞作品「le bourgeon(ル ブルジョン)」
下釜沙紀さん(パティスリー アテスウェイ)

銅賞作品「habataki(ハバタキ)」
鈴木玖季さん(アマン東京)


続いて「生菓子部門」。キリ クリームチーズの味が良く出ている生菓子であることが条件で、独創性、見た目、味などを総合的に審査します。

発表と表彰は小山シェフが行いました。
「ずっとこのコンクールを審査させていただいているが、今年は120の生菓子の応募数があり、5名が最終審査に残った。レシピを読み取りながら選考したが、特に今年の5名はジュニア部門に見せたいほど落ち着いて衛生的に堂々と競技してくれた。生菓子部門はレアチーズ的なものになるが、合わせる素材も年々進化していて今年は特にマリアージュがすてきだった。」

最優秀賞を勝ち取ったのは、阿部由香さん(パティスリー アテスウェイ)の「Fleurette(フルレット)」。

生菓子 最優秀賞 阿部由香さん(パティスリー アテスウェイ)
最優秀賞作品「Fleurette(フルレット)」

最終審査での作業の様子

小山シェフから表彰されて。「今までコンクールでなかなかいい結果を出すことができなかったので、今、(川村)シェフを目の前にして報告できることがうれしいです。」


銀賞は、逸見達哉さん(株式会社アンシャーリー)の「Caprice(カプリス)」。
銅賞は、森下希貴さん(ホテル日航姫路)の「fromage exotique menthe(フロマージュ エキゾチックマント)」。

銀賞作品「Caprice(カプリス)」
逸見達哉さん(株式会社アンシャーリー)

銅賞作品「fromage exotique menthe(フロマージュ エキゾチック マント)」
森下希貴さん(ホテル日航姫路)


次に「焼菓子部門」。キリ クリームチーズの味が良く出ていることと、常温保存、常温販売が可能で、賞味期限14日以上が条件。独創性、見た目、味などを総合的に審査します。

発表と表彰は川村シェフが行いました。
「今回から焼き菓子の実技審査が2時間半から2時間に変更され、非常にタイトな中で行われました。5名とも2時間以内に終わって非常にレベルの高い内容で、審査員の中でも意見が分かれ難しかった。その中で評価されたのはクリームチーズをどう活かすか、焼いたときに油脂をどのように軽くして食感に反映できるのかが焦点だった。あとは仕事の流れなどで経験の違いが出た。」


最優秀賞を受賞したのは、向慶一さん(ハイアット リージェンシー東京)の、「Stollen ARIMA(シュトーレン アリマ)」。

焼菓子 最優秀賞 向慶一さん(ハイアット リージェンシー東京)
最優秀賞作品「Stollen ARIMA(シュトーレン アリマ)」

最終審査での作業の様子

川村シェフと並んで。「送りだしてくれたホテルのスタッフの方に報告したい。」


銀賞は、塩川貴文さん(東日本製菓技術専門学校)の「desir(デジール)」。
銅賞は、内田圭祐さん(ローフベーカリー (株)バルニバービオーガスト)の「大人のチーズカステラ」。

銀賞作品「desir(デジール)」
塩川貴文さん(東日本製菓技術専門学校)

銅賞作品「大人のチーズカステラ」
内田圭祐さん(ローフベーカリー (株)バルニバービオーガスト)

最後に「ファクトリー部門」。この部門に限り「シンプルなしあわせ」というテーマが設けられ、キリ クリームチーズの使用量が総重量の20%以上あり、大量生産用工場ライン生産可能な製品であることを条件に会場に完成品を持参し、審査員に試食していただきプレゼンテーションを行いました。

発表と表彰は木シェフが行いました。
「実際の制作現場を見ているわけではないが、レシピを見て、商業ベースでこれから世に出てどれだけ消費者に届けていけるかどうか、いろんな意味合いから判断した。」

最優秀賞を受賞したのは、清水将之さん(山崎製パン株式会社)の「DOUBLE CHEESE CAKE(ダブルチーズケーキ)」。

ファクトリー 最優秀賞 清水将之さん(山崎製パン株式会社)
最優秀賞作品「DOUBLE CHEESE CAKE(ダブルチーズケーキ)」

最終審査でプレゼンテーションをする清水将之さん

木シェフから表彰されて。「たくさんの協力なしでは、私一人では作れなかった。協力してくれた方々に報告したい。」

銀賞は、横山聡昭さん(株式会社久月総本舗)の「Baked Souffle(ベイクド スフレ)」。
銅賞は、門典代さん(株式会社ロマンライフ)の「しあわせの鈴カステラ〜京都、柚子の香り〜」。

銀賞作品(一般審査員特別賞)「Baked Souffle(ベイクド スフレ)」
横山聡昭さん(株式会社久月総本舗)

銅賞作品「しあわせの鈴カステラ〜京都、柚子の香り〜」
門典代さん(株式会社ロマンライフ)


さらに「ファクトリー部門」には、食品情報ポータルサイト「もぐナビ」の会員より選定の11名が審査に参加し、消費者目線で作品を選ぶ「一般審査員特別賞」を設定。藤原シェフが発表と表彰を行いました。

今回選ばれたのは銀賞を受賞した横山聡昭さん(株式会社久月総本舗)の「Baked Souffle(ベイクド スフレ)」。


一般審査員のコメントとして
「濃厚なキリのおいしさがストレートに味わえる」
「お客様目線で考えていてこだわりがすごい」
「クリーム、ベイクドスフレ、ジェノワーズと様々な食感の味を楽しめてとてもよかった」
「キリのクリームチーズの味わいがしっかり感じられてとても美味しかった」
「3層な点も新しくて買いたくなります」
といった声が寄せられました。


受賞した横山聡昭さんのコメントです。
「日々お客様のためにこつこつ積み重ねをしています。昨日よりももっと美味しく、これからもその思いで続けていこうと思います。」


全ての結果発表の後、「内海会」会長でもある審査員の横田秀夫シェフから審査総評が語られました。

「素晴らしい戦いを見させていただいた。結果として順番がつきましたが、審査員によっても意見は分かれた。実技審査でこれだけの応募があるコンクールは他にはないと思う。書類選考に残るために、キリのクリームチーズを活かし、自分のオリジナリティをどこに出そうと考えに没頭したのだと思う。普段仕事の中で自分が味を作る作業のない人がほとんどだろうから、キリのクリームチーズと真剣に向き合って考えたことは、本当にこれからの人生の中で大事な1ページになるだろう。大会は終わったけれど今回得たことはこれから職場に帰っても活かせる。今日作ったものがもっとこうしたほうが良かったと思うことがあったら必ず完成させて、パティシエ人生の中で数か月費やしたことをずっと大事に持ち続けて欲しい。自分がやりたいことを支えてくれる人達があって機会をいただいたことを大切にしてほしい。懇親会では戦った仲間と交流してステップアップしてほしい。」

励ましともいえる言葉に心打たれました。

コンテストを通して、パティシエとしての人生に大切なことを語る横田秀夫シェフ。


「一般社団法人 日本洋菓子協会連合会」会長の島田進氏による乾杯の挨拶の後、出場者と会場に集まった関係者たちは受賞作品に目を凝らし、試食とホテルこだわりのパーティー料理を堪能しながら交流が繰り広げられ、「協同組合 全日本洋菓子工業会」理事長の小澤俊文氏の三本締めでお開きとなりました。


出場者のみなさん、本当にお疲れ様でした。受賞されたみなさん、おめでとうございます。


次回はあなたもキリ クリームチーズコンクールを通して自分の可能性と向き合う時間を過ごしませんか。家族みんなを笑顔にするスイーツを、ぜひ私たちに届けてください。



主催株式会社アルカン
 http://www.arcane.co.jp/

主催ベル ジャポン株式会社
 http://www.bel-japon.com/

*「キリ クリームチーズコンクール」については以下の「プロフェッショナルの方へ」ページ参照
 http://www.bel-japon.com/professional/

後援協同組合 全日本洋菓子工業会/一般社団法人 日本洋菓子協会連合会
協力日本菓子専門学校




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