取材・文 佐々木 千恵美  


中学生だった頃、スーパーで働き新しいもの好きの母が、これはひと味違うと買って来たグリコのカフェオーレ。それまでの四角い紙パック入りの乳飲料を見慣れた目には、紙コップをひっくり返したようなデザインのパッケージと、コーヒーの風味が際だった甘いミルクコーヒーはちょっとした衝撃。ちょっと高いけれどおいしいねとくり返し、気付けば我が家の冷蔵庫の常連となっていました。
思い出せば同じ現象をグリコの商品からはたくさん受けていました。ふるふる食感にクリームシロップが高級感あふれるカフェゼリー、お皿に逆さに盛って食べる楽しさをくれたプッチンプリン、選べる楽しさセブンティーンアイスetc.…。それまでのものとはちょっと違う、きらりとセンスが光るものばかり。あの頃の商品開発ってどんな感じだったのだろうと、想像するだけでも興奮します。

そのグリコから、2020年9月28日〜期間限定販売されるのが「カフェオーレ×es koyama」。あのカフェオーレが、ショコラティエes koyamaの小山進シェフと初の共同開発に挑み、コーヒー、ミルクにカカオを加え、素材本来の甘さと奥深さで世代を超えた味わいを実現しました。

コーヒー、ミルクにカカオの風味が加わった「カフェオーレ×es koyama」。2020年9月28日〜期間限定販売中。


小山進氏について

1964年京都生まれ。2003年兵庫県三田市に「パティシエ エスコヤマ」を開業。フランスのショコラコンクールでは初出品以来8年連続最高位を獲得。また、パティシエ/ショコラティエとしての領域にとどまらず創作活動を行い、2015年には絵本『The LostTreasure』(作・小山進、絵・にしのあきひろ)を出版。その他著作には『あなたの「楽しい」はきっと誰かの役に立つ』(祥伝社)、『ショコラ・ジャポネ』、『エモーショナルなマジパン』(柴田書店)がある。


1979年に販売をスタートし、今年で41年目を迎えるカフェオーレ。当時コーヒーは喫茶店で飲むのが主流だったため、もっと気軽に飲めるコーヒー飲料をと、ミルクをたっぷり入れて子供から大人まで楽しめるフランス式のカフェ・オ・レに着目し考案されたロングセラー商品。
この春には大きくリニューアルを行い、砂糖から生乳の甘さへ。素材が引き出された美味しさと甘さに、パッケージはストライプのデザインを大きく変更。よりスタイリッシュに進化しました。

しかし、カフェオーレにはひとつの課題が残されていました。それはカフェオーレの特徴的な甘さ。甘すぎるという意見もあり、それをクリアしながら美味しいと思ってもらえる商品を作りたい。久しく飲んでいないという人にももう一度手にしてほしい、カフェオーレのベースとなる味わいを残しながらも、世代を超えた奥深い味わいが体感できる、カラダと心が受け入れたくなる甘さにしたいと、乳業マーケティング部の佐野有香さんは、この課題解決に動きました。

2019年冬、素材を大事にするものづくりを行う小山シェフを訪ね、思いの丈を伝えると、ほとんど企業とのコラボレーションをしない小山シェフに気持ちの変化が起こりました。

「佐野さんの熱いアプローチとものづくりの方向性も合致したが、自分自身中学3年から高校まで愛飲していた馴染みの深い商品ということもある。ただ、打ち合わせ前に飲んだらその甘さに驚いた。と同時に舌をダイレクトに刺激するドリンクの甘さに慣れてしまうと繊細な日本人の味覚センサーを鈍化させるという問題点を、カフェオーレを通して大人にも子供にも気づいてもらえるのではと思い引き受けた。カカオを使うことで身体にしみる甘さにできるのではという想いもあった。ただし自分が関わる意味がちゃんとある仕事でなければ引き受けないし、やるからには味はもちろん、パッケージのチェックやプロモーションまで関わらせてほしいと約束した。」

小山シェフと同じ世代、愛飲していた時代も同じだった私にとっては共感するばかり。こうして1年7カ月の期間、試作100回以上にも及ぶ苦難の共同開発ストーリーがはじまりました。


小山シェフ(左)と佐野さん(右)。小山シェフの探しに行く味作り。ベースの味を大切にする。素材本来の味わいを大事にする。砂糖の強い甘さに慣れて素材のおいしさに気づかない味覚をなんとかしたいという想いと、佐野さんの熱意、おいしさと健康の実現という江崎グリコの理念、方向性が同じ点でコラボレーションが実現した。


目指した味は大人から子供まで好む味。子供たちに少し背伸びをした本当においしいものを届けたい。小山ロール、小山チーズのショコラバージョンを作るのと同じ考えで、軸となるカフェオーレ味を残しながら、子供にもついてきてもらえるような、カカオの苦味酸味を含む立体的なおいしさを感じるところに着地したいと小山シェフ。

ところがシェフが作った味を流通の生産ラインに落とし込むとどうしても味が変わってしまう。殺菌の工程でこういうやり方をしたらこうなってしまったという報告をする度に、シェフからは次の提案が出されるという繰り返し。殺菌処理後は味が濃くなるし、液体だけれど口どけも変わることがわかり、それを想定したレシピのやりとりが延々と続いたのです。


試作、生産ライン、試飲の繰り返しは100回以上。酸味調整など、専門家がやらないと味の着地は生みだせない。そこをやらせてくれるのが最初の約束だから妥協はしない。こんなレベルだったら降りたいといったこともあるそうだ。


あるとき開発チームがやっとGOサインか、というものが出来た試飲の場で、小山シェフから待ったがかかりました。

「これだったら子供がついてこない。だからといって子供にだけ合わすところで着地はしたくない。子供は苦さに敏感。美味しい苦味として感じてもらうポイントがちょっとずれていた。4つの国のカカオを使用したが、木苺のような赤い酸味のカカオが勝っていたら子供は酸っぱくていやという、そのバランスが問題だった。試作品を常に家に持って帰り、自分が選んだのはどれかと聞きながら、当時8歳の息子に試飲させ反応をみていた。そして同じものを彼が選んだとき、これだと自信を持てた。立体的にバランスのとれた味で、自分自身も何度でも飲みたい仕上がりになった。」


カカオ感の強いエクアドル、フルーティーなマダガスカル、ドミニカ共和国、ガーナの4か国のカカオを使用し、立体的にバランスのとれた、カラダにしみる味作りに取り組んだ。


小山シェフは言います。
「カカオの産地まではわからなくていいけれど、なんかこれ病みつきになるなと思えるものが作りたい。世代を超えた味って、上質感があって普通味なんです。」

「カフェオーレにも小山シェフのもの作りの考え方を入れ込んでいただき、本物を使用したすてきな商品ができた。キャッチコピーにあるように、カカオ華やぐというところを感じてほしい。」と佐野さん
「妥協を許さない姿勢はやっぱりプロ。我々もここまで細部にわたって味づくりをしていかないといけないことを学んだ。」と商品開発研究所林直輝さん。

私も昔を思い出しながら飲んでみましたが、舌にのるとろみとカカオのほろ苦さと甘さ、後からフルーティーな酸味がかすかに余韻として残り、ついもうひと口と進んでしまいます。それでいて後味すっきり。風味豊かなコクと甘みはカフェオーレを初めて飲んだときの驚きに通じ、うれしくなりました。

カカオ華やぐコク深い味わい「カフェオーレ×es koyama」と、砂糖から生乳の甘さへ、新しくなった「カフェオーレ」。お近くのお店で手に取ってベースの味わい、違いを飲み比べてみてはいかが。


商品開発ムービー「カフェオーレ×es koyama〜味探しの旅〜」
 https://www.youtube.com/watch?v=yJ8ZFxCALgE&feature=emb_title
もぜひご覧ください。

商品名:カフェオーレ×es koyama
パッケージ内容量:180ml
希望小売価格:158円(税別)
商品特長:世界的なショコラティエであるes koyamaの小山進シェフと共同開発。4カ国産のカカオを使用したチョコレートを独自の配合で巧妙にブレンドし、カフェオーレに合わせ、華やかなカカオ感が感じられる味わいを表現しました。
発売日:2020年9月28日(月)
 https://cp.glico.com/cafeore-2020cp/mov/



江崎グリコ
 https://www.glico.com/jp/





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