取材・文 佐々木 千恵美  


夏休みもそろそろ終わりに差し掛かる8月23日、秋冬に向けた重要な素材、カレボーのチョコレート展示会が、代々木上原のドーバー洋酒貿易セミナー会場で行われました。

ベルギーのNo1.グルメチョコレートブランドとして知られるカレボー® CALLEBAUT®は、日本のパティスリー、ショコラティエ等プロにとっては、使い勝手のよい親しみやすいチョコレートとして昔から馴染がありますが、この展示会ではカレボーの良さを再発見してもらえるようにと、様々に提案されたアプリケーションの試食とレシピ公開に加え、カレボーアンバサダーである和泉光一シェフ、水野直己シェフによるデモンストレーション&トークセッションが行われたのです。東西きっての人気店の秘密をさぐろうと会場はプロたちでいっぱい。水曜日開催ということで、定休日を使って勉強に来た若い職人たちも多く、興味深そうな目線で試食する姿が見受けられました。

セミナー会場に入ると、まず壁沿いにずらりと並べられたアプリケーションが目に入りました。ボンボンショコラ、焼き菓子、ギフト、パティスリー、ベーカリー、アイスクリーム、チョコレートドリンクetc. どれを試すか迷ってしまうほど、種類の多さに目をみはってしまいます。チョコレートの汎用性が改めてわかりますね。そこで受付でいただいたレシピ集を見て、どのチョコレートが使われているか、他にどんな材料が使われているかをチェック。面白そうな製法かも気になります。

ほとんどのアプリケーションはチョコレートアカデミーセンター東京責任者兼テクニカルサポートの尾形剛平シェフによるもの。尾形シェフは、サロン・デュ・ショコラでも大人気の、あの「アンリ・ルルー ジャポン」のシェフ・パティシエを7年間務めていた方。それだけにチョコレートを深く多様に表現されています。



カレボーを使った様々なアプリケーションが並ぶ。


ボンボンショコラはプレーンなガナッシュ入りから、オリジンコレクションを使い、フレーバーを掛け合わせたユニークなものまで。


チョコレートプリン・アラモード・サントメ(左)、ムース・オ・ショコラ(右) エクレールショコラ(左)、タルトショコラinモエル―フランボワーズ(右)

シュトーレン・ショコラには、ガルニチュールにもマジパンにもカカオ入り。

前田商店によるショコラ・エテ クランチ(ダーク、ミルク、ホワイト)の焼成前と焼成後の食べ比べ。焼成後はいわゆる焼きチョコで、夏に指で持っても溶けにくく、食べ口もさっぱりしている。

グラインド ダーク チョコレートとタカナシ低温殺菌牛乳でショコラショー。粉状で溶けやすく、低温殺菌の甘みと後口のスッキリ感がひきたつ。


アプリケーションの中に混じってカレボーの新商品も並べられていました。新しいキャラメルチョコレート「GOLD」です。色素や香料無添加で暖かな琥珀色(ゴールドカラー)のキャラメルチョコレート「GOLD」は、食べるとキャラメルトフィーのような香り、ゆっくり溶けてほんのり塩味を感じる、それだけでも美味しいチョコレート。溶かしてアイスクリームにかけたり、パンケーキのソースにしてもおいしそうです。

新商品「GOLD」


一息ついたところで和泉シェフと水野シェフのデモンストレーション&トークセッションが始まりました。紹介するまでもないでしょうが、お二人とも「ワールド チョコレート マスターズ」受賞歴を持ち、現在はオーナーシェフとしてお店を切り盛りしながら、コンサルティング、技術指導も行うエキスパート。そしてカレボーアンバサダーでもあります。
そんなお二人にはそれぞれテーマが設けられました。和泉シェフには繁盛店の秘密として、トレンドを取り入れた焼き菓子の作り方を。水野シェフには、夏のビジネスにつなげた大人気のソフトクリームの秘密を披露していただきました。

「アステリスク」和泉光一シェフ。 「洋菓子マウンテン」の水野直己シェフ。

アプリケーションを手掛け、デモンストレーション&トークセッションのMCを務めたチョコレートアカデミーセンター東京責任者兼テクニカルサポートの尾形剛平シェフ。


はじめに和泉シェフの登場です。ご紹介いただいたのは「アマンディーヌ・オ・ショコラ・エ・フィグ」というケーク。ケークと言っても和泉シェフの場合、日持ちする焼き菓子という概念はなく、フレッシュ感を大事にした生菓子に近い焼き菓子。どういうことかというと、糖分比率やアルコールなど常温保存のためのお決まりは考えず、要冷蔵で見た目にもオシャレな焼き菓子を目指しているのです。
その構成は、パートダマンドクリュと中力粉、卵、カレボーのブラジル等を使い、レミーマルタンコニャックでマリネしたフィグを入れて焼きあげた生地を、横3枚にスライスしてアンビバージュした上に、カレボーブラジルのガナッシュを挟んで組み立てパータグラッセでコーティングデコレーションしたもの。

和泉シェフ。今回のケークにはシングルオリジンのブラジル(カカオ66.8%)を使用。融点が低いので口どけがよく濃厚なカカオ感とトロピカルフルーツのフレッシュ感を持つ。


「ケーク生地のパータショコラにはお砂糖は配合していません。チョコレートやパートダマンドクリュに含まれる糖分だけで十分に味を引き出すことができます。」と和泉シェフ。
その分、ひとつひとつの素材を混ぜる温度、プロセスに気を配り乳化をさせるところがポイント。ふわっとさせて混ぜるけれど、焼き上がりの口当たりはふんわりではない、むしろ羊羹のようにずっしりとした食感になるこのケークの工程の肝を教えていだたきました。

パートダマンドクリュと卵を合わせながら、チョコレートを溶かし…あれこれ同時進行のケーク仕込み。


「このアマンディーヌは最初なかなか売れなかったけれど、1年作り続けてようやく出るようになった。自分のお菓子が売れるようになるには自分の信念を貫くことが大事だと思う。今は他店にはないスピード感で新商品を回転させています。」

一見型破りのケーク、でもち密に作られたそれは、時間をかけて受け入れられていったのですね。

パータグラッセで三段重ねにしたケークをコーティング。

「アマンディーヌ・オ・ショコラ・エ・フィグ」と試食用のスライス。


今度は水野シェフの出番です。「洋菓子マウンテン」のオリジナルソフトクリームは、東京のサロン・デュ・ショコラ会場で召上ったことのある方も多いのでは? その人気ソフトクリームを、夏向きに配合を変えて教えてくれました。

ソフトクリーム自体はマシンに入れて冷やし固めるだけなので、大もととなる自家製チョコレートミックスの紹介です。材料はとてもシンプルで、カレボーの70-30-38、ハローデックス、ココアパウダーをお湯で溶かしてベースを作り、タカナシのオリジナルミックスを混ぜてマシンへ。お店ではこれにカカオマスも加えカカオ感を強く出しているそうです。

お湯に材料を溶かしてオリジナルソフトクリームのチョコレートミックスを仕込む。


「カレボーとの出会いは、フランスの地方にある店で修業しているとき。家庭的な親しみやすさ、使いやすさがありました。」と水野シェフ。味も安定しているし食べるとほっとするといいます。

カレボーの商品名はとても分かりやすく、70-30-38の数字は、左がカカオ分、真ん中が砂糖、右が脂肪分の比率。1911年の創業以来、様々なレシピが生み出され、811、823、W2は今でも世界中の定番となっています。また、カレットという粒状チョコレートを世界で初めて作ったのもカレボー。ベルギーをチョコレート大国と言わしめた理由がこんなところにもあったのですね。

「サロン・デュ・ショコラに出店しても最初は全然売れなかった。そんな時、和泉シェフから試食を出したり内容を語ったりするようアドヴァイスを貰った。語ると15分位かかってしまうけれど真剣に聞いてくれたお客さんは毎年来てくれるようになった。自分のスタイルを貫くことで売り上げはどんどん伸びて、今年はソフトクリームだけで1日1000個出ました。」

そうなると自店での仕込みが追いつかないので、今ではタカナシさんにレシピを託してオリジナルソフトクリームミックスを仕込んでもらっているそうです。

和泉シェフの助言を励みにしたという水野シェフ。作業は協力しあって、掛け合いは東西の落ちが交差し、笑いが巻き起こった。


カルピジャーノのマシンでできたソフトクリームはなめらか。カカオの風味を感じながらもミルクのさっぱりした後味で夏にはもってこいのおいしさ。トッピングされたカレボーミニクリスパール(チョコレートコーティングのパフ)のサクッとクリスピーな食感も楽しい。

出来立てのオリジナルソフトクリームにカレボーミニクリスパールをトッピング。 カレボーミニクリスパールはミックス色がそのままでもかわいい。

展示された「洋菓子マウンテン」のボンボンショコラ。


今後の展開にトレンドであるヘルシーなお菓子は考えているかという主催者からの質問には、お二人とも今は全く考えていない、お菓子は非日常的な気分を楽しんで欲しいからと返答しました。自分のスタイルを貫き成功したお二人らしいコメントが印象的でした。

展示会では、求めるテイストのチョコレートが見つかるタッチパネル式アプリ、CHOCOLIZER™チョコライザーの紹介も。


本格的なシーズンに向けて、自分のテイストに合ったチョコレートで、自分らしい表現を試してみてはいかがでしょうか。



カレボー® ウェブサイト
 http://www.callebaut.com/ja-JP/

カレボー® フェイスブック
 https://www.facebook.com/Callebaut.jp/

バリーカレボージャパン株式会社チョコレートアカデミーセンター
 http://www.chocolate-academy.com/jp/jp/

バリーカレボージャパン株式会社
 https://www.barry-callebaut.com/




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