皆さんは、日本チョコレート工業組合という組織をご存知ですか?

一般的には馴染みのない名前かもしれませんね。実は数十社の中小菓子メーカーが、共同で原料チョコレートを生産するために組織している組合なんです。組合員の中には「メリーチョコレートカンパニー」「モロゾフ」「ヨックモック」など、皆さんにお馴染みのメーカーも含まれています。今回は、板橋区にある組合の工場に伺いました!



都営三田線志村三丁目駅から歩くこと約10分。この辺りは多くの工場が立ち並んでいますが、現在では大規模な住宅地の開発のためマンションなども多く見かけるようになりました。そんな中地図を頼りに探していると、どこからともなくチョコレートの芳しい香りが・・・。そこが今回の目的地です。建物の中に入るとその香りは一層鮮明になり、まるでチョコレートのお風呂にでも浸かっているような感覚に。チョコレート好きにはたまりません!?!

私たちを迎えてくれたのは、専務理事の土方稔さんと開発担当の保坂さん。土方さんには何度もお世話になっているのでパナデリアでもお馴染みです。
(以前伺ったお話はこちら。パナデリア会員専用ページになっています)
早速お二人を囲んで取材が始まりました。




組合の仕事内容をざっと説明すると、原料であるカカオ豆の買い付けから、原料チョコレートの製造、組合員である菓子メーカーへの供給などを行っています。ここで作られた原料チョコレートが菓子メーカーの下で更に加工されて、ようやく皆さんが口にするチョコレートができあがります。

ひとくちに原料チョコレートといっても、風味や香り、食感は千差万別。その違いはどこから生まれてくるのでしょう?もちろん、カカオ豆の産地や品種の違いもありますが、それだけではありません。実は賠炒(ロースト)やコンチング(練り上げ)といった、チョコレートの製造方法の違いによるところも大きいのだそう。詳細は次回のパナデリア会報誌で取り上げる予定ですのでお楽しみに!

理解を深めた後は、いよいよお待ちかねの見学タイムです。工場内は、外部からの埃やごみを持ち込まないように細心の注意を払わなければいけません。そのため工場のスタッフ同様に、パナデリア一行も白衣に身を包みます。更にキャップで髪を覆って準備万端。チョコレートを安全に提供するためには徹底した衛生管理が欠かせないことなんですね。土方さんと保坂さんの後に続いていよいよ現場に足を踏み入れます。

大手メーカーでは広い敷地に大規模なラインが施されていますが、この工場は全体的にコンパクトにまとまっているのが特徴です。また、通常は見学者用の通路を別に設けていたり、一部だけを開放していたりする工場も多いのですが、ここでは間近で全ての機械に接することができるんです(残念ながら、一般の方は見学できません)カカオ豆が徐々に形を変えてチョコレートにいたるまでの様子を身近に体験できるのが魅力です。

中に入ると、何よりもまず工場の中に響く轟音に圧倒されてしまいました。特に、ホワイトチョコレートを作るマッキンタイヤシステムの機械の轟音はかなりのもの。そのため専用スペースが設けられ、その部屋の入り口には「耳栓を装着して入室すること」と貼り紙してあるほどです。それだけではありません。チョコレートを練り上げるコンチェの側まで来るとすごい熱気。何トンものチョコレートを高い温度で練るため強烈な匂いに酔ってしまいそうですが、なめらかな舌触りと口溶けのためには欠かせない工程なんです。こうして出来上がった原料チョコレートは、安定した品質を保持するためにその都度官能検査が行われています。




◆日本チョコレート工業協同組合工場内の様子◆

「ドラムセパレーター」・・選別


「ドラムセパレーター」


「シロッコロースター」・・焙煎(プレロースト)

「コンチニアスロースター」・・焙煎(ニブロースティング)

「コンチングマシン」・・精錬


「コンチングマシン」


「完成品」





大手メーカーなどに比べると小規模な工場ですが、チョコレートの生産には多くの機械や大型設備が必要なことがわかりました。中小の菓子メーカーが共同で事業を行うことで効率的な運営やきめ細かな対応が実現しているんですね。

パナデリアのために何時間もお付き合いくださった土方さん、保坂さん、本当にありがとうございました!