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今年も、「パティシエ エス コヤマ」の小山進シェフがやってくれました!
 ショコラ好きならもう皆さんご存知の、パリで開催される世界のショコラコンテスト「C.C.C.(Club de Croqueurs de Chocolat)」で、最高位「ゴールドタブレット+☆」を獲得。さらに、「サロン・デュ・ショコラ・アワード」の外国人ショコラティエとして最も栄誉ある「Excellence chocolatier etranger (エクセレンス ショコラティエ エトランジェ)」とのW受賞を果たしました。後者は、昨年までの外国人部門最優秀ショコラティエ賞にあたり、審査員8人全てが20点満点をつけたものだけに与えられるというから、本当にすごいことです!!

「パティシエ エス コヤマ」小山進シェフ


さて、小山さんが今年C.C.C.に出品したのはどんなショコラなのでしょうか。審査員をうならせたその作品についてまずお伝えします。
おっと、その前に。今年からC.C.C.のコンクール規定が、「自由作品4種類」にかわりました。いままでは、プレーンガナッシュを入れる、ミルクガナッシュを入れる、などの規定がありましたが、今年は4粒の構成までも作り手にゆだねられることになったのです。

「ゴールドタブレット+☆」を獲得した4粒のショコラ


では早速!


1粒目は、「2colombie」(ドゥ・コロンビー)、二つのコロンビアというタイトルのショコラでした。

「自由作品になっても、一つ目は必ずプレーンガナッシュにし、カカオそのものの味で勝負しようと決めていました」と小山さん。シエラネバダ67%と、トゥマコ66%という2つのコロンビア産のカカオを使って作った一粒がこれです。
シエラネバダは、2011年に出会ったカカオで、2012年に単独でプレーンガナッシュを作りC.C.C.の一粒目として出展しています。ただ、今回使用したものは、当時とはビンテージが異なるため、味わいも違うとのことでした。まるでワインのようですね。カカオが農産物なのだなと感じる一言でした。トゥマコは、ショコラハンターの小方真弓さんに依頼し、オリジナルクーベルチュールを作ってもらったそうです。二つのカカオとも、発酵や焙煎を指定し、小山さんのところにしかないクーベルチュールになっています。
シエラネバダは、「生まれながらに奔放でわがままな女」、トゥマコは「人生を重ねた包容力のある男」と小山さんは例えます。エレガントで華やか、赤ワインやレーズンを感じるシエラネバダを、スパイシーでスモーキーなトゥマコと合わせることでお互いの良さを引き立て合わせたとのこと。試行錯誤の末に誕生した、思い入れも強い一粒です。
実際食べてみると、赤ワインとレーズンが弾けるような華やかさ、そして薫香とブランデーのような香り(ブランデーは実際は使っていません)を感じました。それを伝えると、「ブランデーを感じたのはトゥマコから来る香りですよ」と小山さん。ブランデーが香るカカオなんて、確かに包容力を感じる男性の味です(笑)
プレーンガナッシュからこんなにも複雑な味わいがするなんて、ショコラはまだまだ奥が深いと感じさせてくれる一粒でした。

2粒目は、「桜の葉&フランボワーズ」

ありそうでない組み合わせ。面白いのは、満開の桜ではなく、花も見ごろを終え、散り始めた頃の新芽の鮮やかな緋色に目をつけているところでしょうか。小山さんがその風景から連想したのは、美しくもはかなげな着物姿の女性。それをショコラのひと粒に表現しています。桜の葉を使ったお菓子はたくさんありますが、それらはたいてい塩漬けですよね。小山さんは乾燥させたものを生クリームでアンフュゼ。香りを移し、カカオ分40%のショコラオレのガナッシュにしています。二層構造になっていて、下の層は、マダガスカル産クリオロ種のカカオ64%で作ったフランボワーズの甘酸っぱいガナッシュ。桜という日本の味と、西洋を感じさせるフランボワーズの華やかさを合わせた斬新な味です。

3粒目は「こがし醤油」

タイトルを聞くだけで、香ばしさが想像できて、思わずおなかがすいてしまう……。鉄板焼きの鉄板の上に落とされ、ジュッと焦げる醤油を見て、「これだ!」と思ったそうです。醤油の中の糖分が熱に反応して香ばしさを出す「メイラード反応」のからくりをそのままショコラに応用したとのこと。熱した醤油がキャラメル化する直前に生クリームと合わせて、その香ばしさをカカオ40%のショコラオレに閉じ込めています。さらにアクセントとして、小山薫堂氏から紹介されたという粉醤油を使っています。
このひと粒、食べるとどこか懐かしさを感じました。日本で育ち、醤油になじみのあるわれわれが食べるとそう感じるのでしょうか。ならば外国人はこの味をどんな風に感じ、どこを評価して高得点をつけたのかな、なんて、海外の審査員の方に一度聞いてみたくなりました。

4粒目は「抹茶&パッションのプラリネ」でした。

「これは完全に料理の感覚で作っています」と小山さん。小山さんが美味しいと思う料理は「苦み、酸味、甘みのバランスの取れた料理」とのことで、このひと粒にもそれを表現しています。3種の宇治の茶葉を石臼でなめらかにひいた抹茶の苦み。パッションフルーツの酸味。そして南アフリカ産クリオロ種カカオのショコラオレ38%のまろやかな甘みとへーゼルナッツのコクのある甘み。口にすると、水溶性の抹茶ガナッシュがまず溶け、油性のへーゼルナッツのプラリネがシャリシャリと食感を楽しませてから溶けて味を広げる。小山さんお得意の時間差の味です。以前から話していましたが、「水分がないプラリネとショコラを合わせることでいろいろなことができる」と、この日もプラリネへの興味と可能性を口にしていました。まさに料理のような一粒!

この4粒が入ったボックスが、バレンタインに向けて一足先に登場します。アーティストの内田江美さんとコラボレーションしたパッケージも2月には登場予定。
そしてもうひとつ面白いのは、この4粒が3セット入ったセットも発売されること。なぜ同じものが3セット入ったセットが? これは、小山さんがご自身でショコラセミナーをやる中で思いついたことだそうなのですが、たとえば、いまこの記事を読んでいるショコラ好きのあなたが、このセットを前に先生になって、友達や家族などに小山さんのショコラの説明をする。そしてみんなに味わってもらう、といったことをやってもらっても楽しいのではと。なるほど。みなさん、いかがですか?

内田江美さんデザインのボックスも魅力


さて、今年は「インターナショナル チョコレート アワーズ2014」に出品した作品も詰め合わせになって登場します。こちらも4粒入りで、 「Genesis (いちじくの葉&枝スモーク)」 「コブミカンの葉」 「インドネシアンカフェ&ライチラズベリー」 「柚子味噌」という個性的な味が揃いました。

審査員8人全てが20点満点をつけた4粒。ぜひ、試してみたいですよね


いちじくの作品は、あるときレストランで、いちじくの葉の上に焼き魚が出てきたことがきっかけで思い浮かんだそう。葉と枝を乾燥させ、枝はチップにしてチョコレートに薫香をつけ、葉は生クリームで香りを移したそうです。いちじくの実を使っていないのにいちじくの香りのする不思議な一粒です。
コブミカンの葉は、フレッシュのまま使って香りをショコラにうつしています。小山さん自身が、アゲハの幼虫のような気分になって作ったんだとか(笑)! 山椒のような香りがありますが、刺激は穏やかでエレガント。ショコラオレがその香りを引き立てます。 (ちなみに最近“葉”は小山さんの中でブームのようですよ)
インドネシアのコーヒーは、飲んだ時にライチのような香りを感じて発想。ベリーとコーヒーはあまり組み合わせることがないので、これまた新鮮な味です。
柚子味噌は、子どもの頃から親しんだ素材。
小山さんが、「審査員は、そのショコラが誰の作ったものか知らされていなくても、“これはコヤマのだな”とそろそろわかっているのでは」とC.C.C.について話していたのですが、小山さんらしいアプローチで和の素材をとりこむこの柚子味噌も、C.C.C.の作品でこそないけれど、皆さんが食べても小山さんを強く感じる一品だと思います。

スプレッドや、タブレットなど、他にも新作はいろいろありました。
「C.C.C.のおかげで、毎年情熱を持って仕事に取り組める。一回出場しなかったら戻れない気もするので、このまま80歳くらいまで頑張りたい。そして年と共にいい味を作りたい」と言う姿が印象的な小山さん。
これからも「人に言いたくなる自慢話」(本人談)を語り続けてほしいなと思います。

会場にはたくさんのコレクションが並べられました。2012年から今年まで3年間のC.C.C.受賞作品をいっぺんに楽しめる「THE BEST」も見逃せない一箱です


パティシエ エス コヤマのサイトはこちらから
 http://www.es-koyama.com/





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