Text by Chieko Asazuma  


いま、日本で最も輝いているショコラティエ、「パティシエ エス コヤマ」の小山進さん。
毎年秋に、「サロン デュ ショコラ パリ」で結果が発表される世界的コンクール「C.C.C.」で、このところずっと最高の成績をあげているのはご存知の通りです。
そして2015年も最高位・ゴールドタブレットを獲得! 2011年に初出展して以来、5年連続という快挙を成し遂げました。
さらに、ほぼ同時期に発表される「インターナショナル チョコレート アワーズ 2015 ワールド ファイナル」においても、4部門で金賞を受賞。その他5部門で銀、1部門で銅賞を受賞するという、華やかな成績をおさめました。

「パティシエ エス コヤマ」小山進シェフ。ショコラティエとしても世界から注目を集めている


これらの作品が、バレンタイン向けの新作コレクションとして発売になります。
ショコラ好きなら、世界的なショコラの「いま」を知るためにも、コレクションでの入賞作はぜひチェックしたいところ!

11月24日、東京プリンスホテルで、小山シェフ自身が今年のC.C.C.に出展した作品に込めた想いや、その他の新作について、コンクールの様子や今の気持ちなどとともに語ってくれました。

お披露目会では、新作ショコラ7種が用意された。飲み物には玉露の茎ほうじ茶が添えられ、この心遣いもエスコヤマならではという感じがしました。ちなみに、この茎ほうじ茶は、ショコラに合うと考え、エスコヤマ内で開催しているセミナーでも出しているそうです


会場につめかけたお客さんの中を歩いて登場した小山シェフ。
「真ん中を歩いてくるのって恥ずかしいですねえ」
と、いつもの笑顔でみんなを和ませてくれました。

C.C.C.に関しては、5月頭までに出品を終えていたそうです。大手だけでなく、小さなところが作るクーベルチュールを食べたりしていた話を聞くと、ほかの素材との組み合わせよりもカカオそのものの個性を表現したい気持ちが伝わりました。
「“ショコラティエ”ではなく、今自分は“カカオティエ”だと胸を張って言えるよう、日々精進したい」
 という言葉も。
さらに、小山シェフは「インターナショナル カカオ アワーズ」(ショコラではなく、原料のカカオ)の審査員を務めたそうですが、
「一昨年初めてやって、日本人は味を繊細に感じることができるのに、それを表現することが苦手だということに気付けました。このコンクールの審査を引き受けると、世界中から出品された中から予選を勝ち抜いた50種のカカオをカカオ分70%の小さなタブレットに仕立てたものが送られてきます。
“酸味”や“フレッシュフルーツ感”“渋味”など、様々な項目について10段階で評価していくのですが、今回、特に“ウッディー”と“スパイシー”の概念が面白かった。
自分が『結構強く感じるな』と8や9をつけていたら、結果発表後に審査結果を照らし合わせると、0や0.5、最高でも3ぐらいなんです。“カカオ感”などは、9や10もあるのですが。その加減が今回、なんとなく見えてきました。
年々、カカオの奥深さも感じます。もっとカカオありきの面白さを表現したいけれど、まだ世界は、僕たち日本人に、ほうじ茶、抹茶、柚子など日本の素材を使ったショコラを期待していますね。ホワイトチョコがはやっている理由も実はそこにあります。そういう素材が映えるんですよ」

 そんな小山シェフが、今年のC.C.C.に出品したのは以下の4点でした。テーマは「DESTINY」(運命)。エスコヤマのカカオセラーにある90種類を超えるクーベルチュールから、様々な想いで選び抜き、出来上がったものは、結果的に、出会うべくして出会ったかのように運命的なつながりを持つ4品だったそうなのです。


SUSUMU KOYAMA'S CHOCOLOGY 2015


アルアコ72% & カカオフルーツ

カカオフルーツはカカオのピュレ。カカオの果肉の甘酸っぱいフレッシュ感と、ショコラの持つ酸味を合わせた一粒。コロンビア・アルアコのインパクトある酸味が印象的。コロンビアを旅して運命的に出会ったアルアコというカカオを一粒の中に表現したかったのだなと、気合と思い入れを感じる味。


カモミール & ダブルベリー

草原の少女というサブタイトルがついています。上層はカモミールとエクアドル産カカオの華やかで甘いガナッシュ。カモミールは12歳くらいの少女が草原で遊んでいるイメージだそう。下層はイチゴとグロゼイユ、マダガスカル産カカオのガナッシュ。イチゴだけだと少し幼いイメージですが、グロゼイユと合わせると、大人の女性に憧れている12歳くらいの雰囲気に…。口の中でそんな広がりを見せてくれます。


プラリネ日向夏

ピエモンテ産のヘーゼルナッツをできるだけ優しくキャラメリゼしてプラリネノワゼットに。宮崎産日向夏は、皮、身、種すべてを加工したフレークに。酸味も甘みも苦みも閉じ込めています。口にすると、その繊細な香りと味が徐々に厚みのあるプラリネと合わさっていく……。ちなみに、すべての香りを閉じこめたこのフレーク作りには非常に高い技術が必要だそうで、そこにも運命的な人との出会いがあったそう。出来上がったものを食べ、「日本の中小企業の力はすごい」と小山シェフは強く感じたのだそうです。


エルダーフラワー & カシス

使っているのは、ペルー・チャンチャマイヨのカカオ。これを食べたときに、エルダーフラワー(にわとこの木の花)と合わせたいとひらめいたのだとか。口にすると、下層のカシスのガナッシュが上層のエルダーフラワーのガナッシュを引き立てます。

この4品で、最高位を受賞した小山シェフ。少し話がそれますが、フランスのC.C.C.のガイドブックでは、小山シェフはこんな風に評価されています。
「“味覚の錬金術”の大家、小山進は究極の洗練をもって香りを繊細に“配合”する。優雅で完璧なボンボンショコラは“秘数”を伝え、分かち合う強い意志によって創り上げられた結果である」
なんだか難しい訳です(笑)、でも、非常に繊細に作られたエレガントなボンボンショコラであると、高く評価されていることはわかりますよね。


ほかの新作を紹介すると、インターナショナル チョコレート アワーズ2015での受賞作には、「バニラ味噌」や「抹茶&金木犀」「金柑ノワゼット」といった和のテイストの強いものが。


インターナショナル チョコレート アワーズ 2015の受賞作



「UNKNOWN!!」という“世界中のまだ見ぬ魅力的なカカオとの出会いを楽しむ”シリーズには、ベネズエラとペルーの、3つの産地のカカオの味わいを比べられる、ボンボンショコラとミニタブレットのアソートや、ガストロバックを用いて抽出したコーヒーと、産地を越えて合うカカオをマリアージュさせた4粒が楽しめる「UNKNOWN!! CAFÉ」も。

UNKNOWN!! Venezuela UNKNOWN!! Peru UNKNOWN!! CAFÉ



「DNA京都2015」というセットには、日本、京都を感じるユニークな味わいがずらりと並びます。

「DNA 京都 2015」には、8個入りと12個入りのボックスが揃います。このアソートには、これまで「C.C.C.」やICAで受賞した作品が数多く入っており、実はコンクール受賞作を存分に楽しめるアソートでもあります


14種類あったタブレットにも、ベネズエラのオクマレ70%、ペルーのパブリノ70%、ベトナムのベトナム71%、メキシコのソコヌスコ63%という新作4種類が加わります。

“カカオの故郷の大地に眠る ショコラのクリエイション”「SPIRIT OF CACAO」は、新作4種を含め、全18種類のラインナップに


そのほかにもまだまだ紹介しきれない新作がいろいろ。販売までまだ少し時間がかかるものもあるので、HPやお店でのチェックを忘れずに。

そして、今年の新作「SUSUMU KOYAMA'S CHOCOLOGY 2015」の4粒のショコラから、小山シェフ原案による一つの物語『The Lost Treasure〜失われたアルアコの秘宝〜』が生まれ、その物語から、SING LIKE TALKINGの佐藤竹善さんによって組曲が生まれたそうです。
また、バレンタイン直前の2月10日には、キングコング西野亮廣さんの原画の絵本へも変身を遂げるとのこと。こちらも楽しみですね。

この会で、最後に言葉にした小山シェフの想いは、こんな言葉でした。
「まだまだ世界からは日本の素材が求められたりしていますが、日常の中で気づいたこと・出会ったものを自然に作品にする、その感性を大事にしていきたいです。和素材を使っているから日本人の物創りだというのではなく、私が自然に形にした作品が、まっすぐに評価されるようになれば、その時にはもう世界で発表する、ということはしなくてもよいのかな、と思っています」
スイーツや料理、鋭い味覚と技術を持つ日本人がこれだけ世界で活躍していることを見ると、それはもう遠いことではない気が。どんなタイミングでその時が訪れるのか、これからも小山シェフの動きからは目が離せないのでした。

世界各地のカカオ産地を巡り、さまざまなカカオと出会ってきた小山シェフ。そんな出会いの中から辿り着いた、今回の4つの新作ショコラを手に。少年のような探究心に溢れた目は、いつも私たちに小山シェフの“次のステージ”を期待させてくれる



パティシエ エス コヤマ
 URL:http://www.es-koyama.com/index.html





Panaderia TOPへ戻る