Text by Chieko Asazuma  


「フォンテーヌブローの森に来たみたい!」
参加した方からそんな声も聞こえたのは、フレデリック・カッセル氏の新作発表会。そう、ご自身のお店があるのは、まさにパリ郊外のフォンテーヌブローなのです。
この日、会場となった恵比寿のQ.E.D.クラブは、大きな窓の向こうに緑の広がる贅沢な空間。晴天に恵まれて、カッセル氏の挨拶は外で行われました。
パラソルの下でサーブされているのは、白ワインのサングリア。山椒のきいたクッキーなどをつまみながら、会が始まる前からみんなの気分は上々です。

にこやかに登場したカッセル氏は、
「今回の大きなテーマはプレジール(喜び)とコンビビアリティ(共に楽しむ)。今日はフォンテーヌブローの森に来た気分で、皆さんと友情と喜びを分かち合いたい」
と話し、日本、そして現地で働くスタッフの紹介もしました。フォンテーヌブローの店のスーシェフは日本人女性。そんな活躍を聞くと、なんだか嬉しくなってしまいます。

爽やかな秋の空の下、カッセル氏の挨拶で会は始まりました

さて、部屋の中に場所を移すと、まずはクリスマスのお菓子の説明が。
「今年のテーマは、ヘンゼルとグレーテルです」
ヘンゼルとグレーテルは、アルザスで生まれた話なのだそう。クリスマス限定のボンボンショコラは、パンデピス風味とカルダモン風味の2種類です。それぞれの風味とチョコレートの甘さ、ほろ苦さが重なり合い、複雑な香りが口の中で広がって、とても心地のいい、完成度の高いボンボンショコラでした。

ボンボンショコラのほかにも、ほんのりパンデピスが香るプティケークも登場するそう。プレーンの生地にオレンジピールが入ったものと、ショコラの生地にカカオニブが入ったものの2種類。こうした、気軽でシンプルなものも、カッセル氏が作るととびきり美味しいんだろうなあ……と想像。

※ ヘンゼル&グレーテル  11月11日より販売開始

クリスマス限定ボンボンショコラアソート プティケーク


クリスマスケーキの種類も豊富です。ただ、百貨店ごとの限定販売が基本なので、購入には注意してください。


フォレ ノワール <西武池袋本店限定販売> 5,400円

「クラシックなケーキをキューブ状にしました」というこちらは、フォンテーヌブローの森をイメージ。香り高いダークショコラのムースに、バニラの香るシャンティマスカルポーネとチェリーのコンポートを閉じ込めた、大人テイストのケーキです

ピスターシュ・フレーズ <三越銀座店店頭販売 期間限定12月18日〜25日> 3,564円

しっとりと焼き上げたビスキュイに合わせるのは、濃厚でコクのあるピスタチオクリーム、そしてイチゴのジュレ。ピスタチオのシリーズに定評のあるカッセル氏のこと、飛び切り香りのいいケーキに仕上げているはず。

タングラム <三越銀座店店頭販売 期間限定12月18日〜25日> 3,564円

フォンテーヌブローでも人気のケーキをクリスマスバージョンにしたというのがこちら。ショコラのムース、香ばしいプラリネ、ショコラビスキュイにカカオニブをあわせ、食感も楽しい。チョコレートを堪能できるケーキです。

ルージュ ピスターシュ <銀座三越限定販売> 5,400円

ピスタチオムース、イチゴジュレ、ビスキュイの組み合わせに、種入りのフランボワーズのコンフィチュールを合わせているのがこちら。コクと酸味、そして美しい色もしっかり味わいたい。

ミルフイユ イチゴ ノエル <伊勢丹新宿店限定販売> 6,480円

フレデリック・カッセルを代表するケーキといえば、「ミルフイユ」です。そのミルフイユがクリスマス用にドレスアップ。タヒチ産バニラが官能的に香る濃厚なクリームに、柔らかいイチゴのコンポート、バリッとキャラメリゼしたフィタージュのグラマラスなハーモニー。

フォレ ド ノエル <日本橋三越本店限定販売> 5,400円

キャラメルショコラのムースにヘーゼルナッツのクレームブリュレ、ビスキュイを合わせたショコラ好きに贈るブッシュドノエル。キャラメリゼしたノワゼットの歯触りがアクセント。

ブッシュ モンブラン ジュール <小田急百貨店限定販売> 5,400円

栗の風味を感じる柔らかいビスキュイに、ダックワース、バニラクリームを合わせています。カシスのコンポートの芳醇な酸味が全体を引き締め、メリハリのあるケーキに。ジュールはカッセル氏の息子さんのお名前。息子さんの大好きなモンブランへのオマージュを込めています。




さて、クリスマスのお菓子の隣のテーブルには、1月のお菓子、ガレット・デ・ロワが。トルコをイメージし、トルコのお菓子に欠かせないピスターシュとオレンジフラワーウオーターを使って作ったそう。フォンテーヌブロー城にある、トルコと縁のある部屋の修復が終わったことからインスピレーションを得ており、その城内にいる天使をモチーフにしたフェーヴも作ったそうです。

ガレット・デ・ロワ
期間限定販売(12/26〜1/11) ※王冠と2016年のフェーヴ付き


その隣は、ヴァレンタインのテーブルでした。
2016年のヴァレンタインにカッセル氏がモチーフにしたのは、パリにかかる愛の橋「ポン・デ・ザール」で行われる恋人たちのロマンチックな儀式。この橋に恋人たちが南京錠をかけ、その鍵をセーヌ川に投げ込むという「カデナ・ダムール(愛の南京錠)」と呼ばれるものですが、近年、その愛の重みならぬ南京錠の重みから、橋の崩壊を危惧したパリ市当局により撤去されてしまいました。日本でも話題になっていたので、記憶に新しいニュースかもしれません。橋からカデナは消えてしまいましたが、「恋人たちがその日その時に込めたあふれる想いをボンボンショコラに」と、作ったのがこちらなのです。

カデナ・ダムール 6個入り(各種×2)
1月下旬発売開始予定


カデナ・ノワールは、パッションフルーツと、ダークショコラ「ITAKUJA」を使っています。ITAKUJAはヴァローナの新作で、パッションフルーツとともにカカオを二次発酵させた希少なショコラ。同じ箱に入れて発酵させているので、ショコラそのものから、ナチュラルだけれどもしっかりとパッションフルーツの甘酸っぱい香りがしました。
カデナ・レは、ほのかにジンジャーが香るプラリネチョコレートにミルクチョコレートをコーティングしたもの。
この2種類のほかに、ヴァレンタイン限定の箱には、フランボワーズとダークショコラのガナッシュにブロンズチョコレートをコーティングしたものが、ホワイトデー限定の箱にはホワイトチョコレートをコーティングしたものが入ります。

また、「コクリコ」という限定商品を詰めたボックスも。フォンテーヌブロー近郊に広がるコクリコ畑からイメージした、コクリコの香りをフランボワーズと一緒にショコラに閉じ込めたもので、カデナ・ダムールと同じく鍵の刻印を表面にあしらっています。

コクリコ / ヴァレンタイン&ホワイトデー限定ボンボンショコラ
1月下旬発売開始予定



さて、最後に紹介したいのが、「ココット・トロンプ・ルイユ」というケーキです。
季節限定でいろいろなケーキを紹介しているカッセル氏ですが、彼のもとで商品開発をしているグレゴリー氏が開発し、11月25日から発売されるのがこちら。なんとココット入りケーキ? なるほど、寒くなる季節、ココットに入れて焼いたケーキなんて気が利いている……と思ったら、なんと、カッセル氏がココットをかじっているではないですか!その姿に全員がびっくり。ココットまでが食べられるケーキだったのです。

ココットをかじりだしたカッセル氏に、みんなびっくり!

ココット・トロンプ・ルイユ
アントルメとプチガトーがあり、アントルメは予約制となります。

しっとりと焼き上げたヘーゼルナッツのビスキュイに、ぶどう山椒の香りを移したオレンジのシロップを染み込ませ、フレッシュオレンジとコーヒーの香るマスカルポーネを絞っています。「お料理のようにデセールをシェアする喜びや、時間を共有できたら」というコンセプトから生まれたコレクション。トロンプ・ルイユ=だまし絵。ココットはショコラでできているんです。小さなサイズもあって、購入しやすいのも嬉しい。クリスマスやヴァレンタインまではまだ間がありますが、まずはこのココットのケーキで、驚きとおいしさを誰かと共有してみたい!


つい最近、初めてのレシピ本を日本で発売したカッセル氏。冬のお菓子、そして本の発表という喜びに、きっと充実した日本滞在になったことと思います。私たちにとっても、とても素敵な今回の発表会で、いつかフォンテーヌブローのお店にも行ってみたいなあとも思わされたのでした。

ルレ・デセールの会長でもあるフレデリック・カッセル氏の人気レシピが掲載された「フレデリック・カッセル 初めてのスイーツ・バイブル」





フレデリック・カッセル
URL:http://www.frederic-cassel.jp/




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