取材・文 佐々木 千恵美  


秋の気配を感じ始めた10月はじめ。フレデリック・カッセル氏がフランスから来日し、恒例の新作発表会を開催しました。
今年の会場はフレデリック・カッセルの広尾アトリエ。明治通りに面したビルの地下1階に位置し、広尾駅からも徒歩5分程とアクセスしやすい場所です。

フレデリック・カッセル 広尾アトリエ。ビルの地下1階、エントランスを飾る新作コレクション。

実はこの秋から、このアトリエで予約の上、直接お客様がケーキを受け取れるように改装したため、そのお披露目も兼ねてだそう。今までデパートや催事会場でしか買えなかったフレデリック・カッセルのケーキが、出来たてを手にできるとあればありがたい。自慢のミルフイユなどは特にうれしいですね。パティシエさんたちも、お客様の顔が見えることで、いい刺激となるはずです。


月替わりの提案、インスピレーション。今季は素材をテーマに、10月カフェ、11月ポワール、(12月はお休み)、1月ノワゼット、2月カカオ、3月アナナス(パイナップル)で展開。

1月のノワゼット

2月のカカオ

3月のアナナス



そしてこの日、カッセル氏がプレゼンテーションのテーマにしたのは‘カカオ・フォレスト’活動のこと。
良質なカカオの在来種を脅かすハイブリッド種への植え替えからカカオの森を守り、カカオの質を維持し、フェアトレードによる生産者への還元。生産者の生活向上、子供たちへの教育。さらには私たち消費者への認知度を高めていくというライフワークを、カッセル氏は2016年から精力的に参加、活動を続けています。
「活動を始めてから2年経ち、少しずつ成果がでてきました。栽培が楽で収穫量が多いCCN51というハイブリッド種カカオでも使いたい人達はいるでしょう。けれどパティシエである私たちが望んでいるカカオは、香り豊かな在来種。そのためには農家の生活を安定させなければなりません。そこでカカオ以外のフルーツの平行栽培を指導し、地元ホテルへ卸したり、ジュース、ピュレを販売するなど、二次的な収入源の確保を試みています。小学校を作り、教育環境を整えるなど将来を担う子供たちも支援しています。」

ドミニカ共和国のロマ・ソタヴェント農園で行われている‘カカオ・フォレスト’活動の現状を説明するフレデリック・カッセル氏は、パティスリー界のエリート集団ルレ・デセールの会長を長年務め、カカオ・フォレスト活動ではリーダーとして現地にも赴いている。


人間だれでも暮らしは楽な方がいい。だから栽培が容易で収量が4倍、収入が2倍にもなるハイブリッド種を植えたがる。けれど、それと引き換えに、風雨や虫からカカオを守るために植えていたヤシの木も抜かれてしまって、森の生態系まで脅かすことに。

「そのために栽培システムの共同設計をしています。農家、農業技術者、専門家が集まり、理想のカカオの木とは? 区画を構成するには? 等々の議題について話し合いやワークショップを行って、お互い専門的な理解を深めているのです。」

カッセル氏は画像を見せながら熱心に語り続けます。

伝達手段として子供たちにカカオの木をデッサンしてもらったことからも発見があったと語る。


「パティシエとして大切なのは、自分たちが現実を知り、食べている人達にもチョコレートを通じてカカオの現状を伝えていくこと。それがわれわれのミッションです。」

カカオのバトン、ぜひ受け取りたい。食べて知ることで活動に参加したい。

そんな私たちのために、カッセル氏はバレンタイン向けの新作「DÉCOUVERTE」(デクヴェルト:「発見」の意味)を届けてくれました。カカオ産地ドミニカへの思い、‘カカオ・フォレスト’活動を通じて改めて見つけられたこと、チョコレートの未来など、カッセル氏の様々な「発見」がこめられたコフレの6粒は、香料不使用のオリジナルカカオで作った2粒を含め、全てドミニカ共和国産の良質なカカオを使ったもの。ナチュールの他に、カカオ農園の生活向上にも貢献しているマンゴー、パッションフルーツ入りのガナッシュも加わって、カカオ産地の様子を思い浮かべながら味わう形になっています。



「DÉCOUVERTE」(デクヴェルト)6個入り 3024円(税込み)
2019年1月18日〜発売開始予定。
‘カカオ・フォレスト’をイメージさせるやわらかなグリーンのデザインパッケージ。蓋にはカカオの未来のために参加とメッセージが。
左から右に、タイノリ・ナチュール、ロマ・ソタヴェント・ナチュール、デクヴェルト・ナチュール、デクヴェルト・パッションフルーツ、バイベ・ナチュール、バイベ・マンゴー。オリジナルカカオは、カッセル氏だけのために作られた香料不使用のチョコレート。


中南米、カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島の東部に位置するドミニカ共和国で栽培されたカカオ豆の、さらに細かい種類に分けられた、ちょっぴりマニアックな「DÉCOUVERTE」。カカオポッドをデザインした色別の6粒はこんな感じです。

タイノリ・ナチュール <ドミニカ共和国国産カカオ64%>
 柑橘系の酸味の爽やかさとローストアーモンドのような香ばしさ。

ロマ・ソタヴェント・ナチュール <ドミニカ共和国国産カカオ64%>
 ドミニカ共和国北東部のロマ・ソタヴェント農園で採れたカカオを使ったガナッシュは、熟したフルーツのアロマから酸味へと、余韻が長く続きます。

デクヴェルト・ナチュール <ドミニカ共和国国産カカオ66%>オリジナルカカオ使用
 クリーミーな口あたりとアプリコットのような酸味、後から心地よい苦味が印象的なガナッシュ。

デクヴェルト・パッションフルーツ <ドミニカ共和国国産カカオ66% × パッションフルーツ>オリジナルカカオ使用
 口に入れるとすぐにパッションフルーツの香りと酸味が広がり、カカオとの心地よいハーモニーが続きます。

バイベ・ナチュール <ドミニカ共和国国産カカオ46%>
 キャラメルを思わせるミルクチョコレートの柔らかなテクスチャーとフルーティーな酸味のガナッシュ。

バイベ・マンゴー <ドミニカ共和国国産カカオ46% × マンゴー>
 マンゴーのフルーツ感がカカオの味わいにマッチし、お互いが南国のフルーツであることを語っているガナッシュ。

香りも余韻もそれぞれに違い、同じ国のカカオでも、こんなに味わいの個性が感じられるなんて驚き。カッセル氏の「発見」が共有できた気がします。

なぜドミニカ共和国で活動を? 有機栽培を最初に始めた国であり、改善すべき、かつ伝統的な栽培をしていたため、ケーススタディに最適と考えたそうです。


さらにカッセル氏のオリジナルカカオ‘デクヴェルト’は、「サロン・デュ・ショコラ東京2019」会場限定の「ミルフイユ・フィンガー・デクヴェルト」としても登場します。
スペシャリテであるミルフイユの新作を、毎年心待ちにしているファンにとっても、発見の詰まった逸品になりそうです。

カカオそのままの味わいを追及した「ミルフイユ・フィンガー・デクヴェルト」 756円(税込み)。


カッセル氏は、次のカカオ産地への同様の取り組みのためにクラウドファウンディングを開始予定とのこと。今まで一番遠かったお菓子の材料〜チョコレートが、今後は携わった人の暮らしや畑まで見えるようになっていく。発見はまだまだ続きそうです。

プレゼンテーションが終わり試食タイム、いつもの笑顔を見せてくれた。



忘れてならないのがクリスマス。
コレクション・ド・ノエル2018は、フレデリック・カッセルのお店のある三越銀座店での店頭販売ほか、伊勢丹新宿店、日本橋三越本店、西武池袋本店、そごう横浜店、名古屋三越栄店、あべのハルカス近鉄本店、他百貨店では、各限定のアントルメを予約にて販売します。

三越銀座店では、スペシャリテのミルフイユがいちごとピスタチオでドレスアップ。ベーシックなクリスマスカラーのいちごを使ったバニラムースの「プラニフォリア」や、マダガスカル産カカオとフランボワーズの酸味が大人っぽい「マンジャリ」はアントルメとミニサイズで登場。また11月7日からは、シャレ―(小屋)の小箱に入った「小さく焼き上げたブラウニー」が、その後にはクリスマス限定のボンボンショコラアソートが発売されます。アドヴェントのお楽しみに、贈り物にいかがでしょうか。

「ミルフイユ・フレイズ」 6,912円(税込み)銀座三越限定


「ガレット・デ・ロワ」 トラディショネル 2,160円とYUZU 2,592円(共に税込み、12月28日〜1月4日販売)は、オリジナルの王冠とアンティークの焼き型フェ―ヴ付き


「アントルメ マンジャリ」 3,564円(税込み 12月19日〜)三越銀座店限定。


赤鼻のトナカイをデザインした「ビッシュ・レンヌ」 6,480円(税込み)伊勢丹新宿店限定


ダークとミルク、ホワイトチョコレート、オレンジの組み合わせが、チョコレート好きにはたまらない「ショコラ・ロワイヤル」 5,400円(税込み)西武池袋本店、そごう横浜店限定

栗とミルクチョコレートを重ねたムースケーキ「テュラン・ショコラ」 5,400円(税込み)あべのハルカス近鉄本店 他

フランス本店創業当時から愛されている‘ジヴァラ’を進化させ生まれた「ビッシュ・ド・ノエル・ジュール」。ジュールはミルクチョコレート好きな愛息の名前。 5,400円(税込み)日本橋三越本店限定




詳細はフレデリック・カッセルのサイト、取り扱いの各百貨店にお問い合わせください。


フレデリック・カッセル

http://www.frederic-cassel.jp/




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