取材・文 佐々木 千恵美  


ユニークな食のイベントが始まりました。
神戸牛やトリュフなどを使った高級ハンバーガーが原価990円で食べられる。
しかも監修は人気レストラン「sio」の鳥羽周作シェフ。
製菓・カフェ・調理の専門校「レコールバンタン」、中目黒駅近くの東京校レーヴ校舎が会場。
2022年1月22日(土)〜2022年3月27日(日)の毎週土日のみの営業で、調理やサービス、運営を担うのは同校の生徒たち11人。
お店の名前は「GENKAI BURGER」(ゲンカイバーガー)。

「GENKAI BURGER」で提供される「神戸牛 “GENKAI” チーズバーガー」、北海道産「フライドポテト」、「クラフトコーラ」


オープン前の試食発表会でいただいてみると、想像以上にボリューミーで豪華な内容に驚かされます。バンズに高く盛られた具材のトップを飾る黒トリュフが、運ばれてきた瞬間にかぐわしい香りを放ちます。

とろけるチーズのかかった神戸牛のパティは、ナイフを入れるとごろり大きなチャンクになり、口に頬張ればうまみののった肉汁が広がります。ああ、なんて口福な! ハンバーガーってこんなにご馳走になるものなんですね。


ハンバーガーの断面



ランチョンマットには、GENKAI BURGERの使用食材と5味プラス1、原価が記載されている

「峰屋」の天然酵母バンズ、82円
 酒種の天然酵母種を使い、焼き目が濃く、 苦味と少しの酸味を持つのが特徴のバンズ。程よい照りとコクがバーガー全体を包みまとめます。

チベット産黒トリュフ、285円 +1(香り)
 食材全体のバランスを整えながらトリュフの香りを際立たせるために 厳選した特別なチベット産の黒トリュフ。

「高知県四万十市いちえん農場」の土佐ジロー卵、101円 5味(旨)
 自然に近い形で飼育された卵は、一口で分かる黄身の濃さと旨味が5味の中で旨味を構成しています。

イタリア産チーズ、70円 5味(塩)
 パルミジャーノチーズの濃厚さとモッツアレラチーズの新鮮さをオリジナルブレンドで配合。5味の中で塩味を構成しています。

赤ワイン&国産キノコのミックスソース、54円 5味(甘)(旨)
 フレッシュな赤ワインをベースとした華やかな味わいと全て国産にこだわった「千葉県産マッシュルーム」「新潟県産エリンギ」「長野県産えのき」を使用した旨味高い3種のキノコソースを贅沢に使用。

最高級神戸牛100%パティ、300円 5味(旨)
 きめ細かな霜降りが成す口どけの良い脂肪分と牛肉本来の味わいが極まる、最高級ビーフの代名詞「神戸牛」を惜しみなく使用。

「茨城県土浦市いのちの郷」のつくばレンコン、34円 5味(酸)+1(食感)
 白く肉厚でやわらかく、シャキシャキした食感で 甘みがあるのが特徴。

「島根県浜田市TC浜田農場」の桃太郎トマト、30円 5味(甘)
果肉がしっかりとしていて酸味と甘みのバランスが絶妙。

「茨城県つくば市上郷有機農園モアーク」の有機セルバチコ、25円 5味(苦)
昔ながらの有機農法で育成されゴマに似た香りと自然な苦味と辛味の調和が特徴。


これが原価990円なら、一般のお店で食べるとしたらいくらくらい? そんな価格設定に関する意見と感じたことをフィードバックするシートがハンバーガーと一緒に添えられてくる。原価でいただいたせめてものお礼?


鳥羽シェフの笑顔挨拶入りフィードバックシート。今回は教育の一環として開催するので、「未来のシェフへ、皆様からのメッセージをお願いします!」


実はこれこそがイベントの狙い。そもそも普段利用する飲食店のメニュー原価を、気にして食べたことはありますか?
すべてとはいいませんが大概は30%ほど。それ以上の原価率だと、家賃や光熱費などの固定費、人件費をまかなえません。自分でお店をやることを踏まえたメニュー作りや価格設定、宣伝の仕方、実践などは、一般に学校では教えてくれません。学校で調理技術だけを学んで卒業しても、お店の経営のことを考えるとなるとなかなか難しいのが現実。まして今はコロナ禍で、生徒たちがアルバイトで実践経験を積む機会もほとんど奪われ、卒業後の道は決して明るくはありません。


駒沢通り沿いに建つレコールバンタン東京校レーヴ校舎内の店内


未来の飲食業界を担う生徒たちに何とか機会の場を作りたい。
この問題に、「おいしいだけがゴールじゃない。」をコンセプトとする同校が、元小学校の先生で現在は複数のレストランを運営し、メディアでも活躍する鳥羽周作シェフの協力を得て立ち上がりました。


GENKAI BURGER試食会でトークする鳥羽周作シェフ


「GENKAI BURGER」の運営メンバーは同校の生徒11人。鳥羽シェフの提唱する5味プラス1という味の構成(「甘味、塩味、酸味、苦味、旨味」5味に辛味、食感、香りが加わることで立体的で奥行きがある料理」のこと。)のレクチャーを受けた後、メンバーはハンバーガーを題材に味の構成を設計し素材を選んでいったそうです。


「GENKAI BURGER」の運営メンバー11人


もちろん原価も考慮しなければなりません。
鳥羽シェフ曰く「原価990円は生徒がわかって作らないといけないが、食べ手側も適正価格を知ってもらう価値もある。ちなみに「Hotel's」というレストランで3000円のハンバーガーを出しているが、原価はこれくらい。安くてうまいのを食べたいよねと、原価990円のところを1500円で売ったら儲からなくて、おいしいバーガーを出したいけれど運営はできなくなってしまう。
これからの食の世界は、作る側働く側、雇用会社側、食べる側の3者のリテラシーが高くなって、そのうえで飲食業界をどうやって応援していくかわかってもらわないと、お客さん都合だけでやっていくと持続できないというのを知ってもらういい機会。」


実施背景と意気込みを語る鳥羽シェフとメンバーの2人


私たち食べ手も、これからの飲食業界を担う若手を応援する意味でも、食べ物の原価や素材のこと、働き手についての理解を深める機会となるイベントなんですね


調理だけでなくお客様に提供するのもメンバーたち


「おいしい料理を作るところからそれを届けるところまで教える、責任をもってサポートしていく。シェフにならないとできない経験を、学校に通いながらできるのはものすごい価値。コロナ禍で、未来の食の価値を担う若者に、我々が何を残していけるのか、何を作っていけるのか。教育の一環としての実店舗運営は価値があることだと、ちゃんと伝わるといいなと思う。」

鳥羽シェフの言葉に胸が熱くなりました。

発表会ではメンバーの生徒からこんなコメントがありました。
「私たちは将来自分の店を持って、作ったものを食べてもらう夢を持っているので、レコールバンタンに在籍しながら貴重な機会をいただけたので、できるだけたくさんの人に食べてもらってたくさんの人を笑顔にしたい。」

ハンバーグを包む紙にはプロジェクトにかかわった生徒の将来の夢が入っています。行かれたら見てみてください。


メンバーの夢が描かれたハンバーグを包む紙


ハンバーガーの他、ドリンクもすべて原価での提供です。
バーガー、ポテトと合うようにすっきり飲めるように味を作りこんでいるというクラフトコーラは、鳥羽シェフのお店のレシピをそのまま再現。
鍋に唐辛子、しょうがを入れ仕込むのですが、コーラやジンジャエールの作り方は意外と知られていないため、プロのレシピを作れるまたとない経験になったといいます。確かに、一般に流通しているコーラとは別物。スパイスティーソーダのような感覚で、普段甘い飲み物が苦手な方でもさっぱりおいしくいただけそうです。


店舗の入り口。コロナ対策のため、イートインのみでなく、テイクアウトにも対応することになった


その他、詳しい内容はwebサイトをご覧いただきたいのですが、そのページ制作はバンタンの卒業生に依頼したもの。おいしいものを届けるためには、SNSでの発信力も求められますからね。
HP:https://www.lecole.jp/genkai/burger


GENKAI BURGER試食会にて記念撮影


未来のシェフを応援する仕組みとなるGENKAIシリーズは、今後、“GENKAIコーヒー” “GENKAI ケーキ”のような展開も考えられているとのこと。おいしいを楽しむとともに、未来のシェフの応援をしていきたいですね。
GENKAI BURGERセットやレシピ、GENKAI BURGER Tシャツなどの返礼品が選べるクラウドファンディングも続行中なので、ぜひ若いシェフの力で、コロナ禍の飲食業界を盛り上げていってほしいと思います。



クラウドファンディング プロジェクト概要

 実施期間:2022年1月11日(火) 14:00〜 2022年2月27日(日) 23:59
 目標金額:100,000円
 実施方式:All-in方式
 購入型クラウドファンディングとなりますので、ご購入金額は寄附控除の対象にはなりません。
 購入ページURL:https://ubgoe.com/projects/121


店舗概要

 販売期間:2022年1月22日(土)〜2022年3月27日(日)
 営業時間:11時〜17時(L.O 16時30分)
 営業日:毎週土日のみ 2月14日現在、入店が整理券配布制になっているので、詳細はwebサイトをご確認ください。
 場所:レコールバンタン東京校レーヴ校舎(東京都目黒区上目黒1-3-3)
 駐車場はありません。路上パーキングをご利用下さい
 お支払い:交通系IC、クレジット、現金
 HP:https://www.lecole.jp/genkai/burger
 Instagram:@genkai_burger
 Twitter:@GENKAIBURGER

メニュー

 フード
 神戸牛 “GENKAI” チーズバーガー:990円(原価981円)
 北海道産フライドポテト:110円(原価108円)
 ドリンク
 クラフトコーラ:150円(原価142円)
 クラフトレモネード:150円(原価142円)
 クラフトレモンジュース:100円(原価93円)
 クラフトジンジャーエール:150円(原価146円)
 志賀高原ペールエール:460円(原価460円)
 ブリュードッグパンクIPA:360円(原価360円)
 常陸野ホワイトエール:370円(原価370円)


sio 鳥羽周作シェフ

鳥羽 周作(とば しゅうさく)氏
sio株式会社代表取締役 | シズる株式会社代表取締役
1978年生まれ、埼玉県出身。Jリーグの練習生、小学校の教員を経て、32歳で料理人の世界へ。2018年、代々木上原にレストラン「sio」をオープンし、オーナーシェフとしてミシュランガイド東京で2年連続星を獲得。また、業態の異なる6つの飲食店(「sio」「o/sio」「純洋食とスイーツパーラー大箸」「ザ・ニューワールド」「㐂つね」「Hotel's」)も運営。TV、書籍、YouTube、SNSなどでレシピを公開し、レストランの枠を超えて「おいしい」を届けている。モットーは『幸せの分母を増やす』。

L'ecole Vantan (レコールバンタン)

レコールバンタン:https://www.lecole.jp/
レコールバンタン 高等部:https://www.lecole-hs.jp

製菓・カフェ・調理と、「食」の分野に特化した人材を育成する専門スクール(東京校・大阪校)。「おいしいだけが、ゴールじゃない。」をコンセプトに、技術だけでなく、将来お店を持つ方法を、自分のお店を立ち上げて成功したプロ講師から、実体験に基づいたケーススタディを通して学ぶ。また、在学中から独立開業にチャレンジする機会や、卒業後も利用できる開業サポートがあり、卒業生の開業実績は300店舗以上。日本のトップパティスリー鎧塚俊彦オーナーシェフが監修するコースや、“パティスリー界のピカソ”と呼ばれるピエール・エルメ氏のブランド「ピエール・エルメ・パリ」とのタイアッププログラムなど、ここでしか学べない実践授業を用意している。




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