取材・文 佐々木 千恵美  


世界には学校に行けず、過酷な労働を強いられている子どもがたくさんいる。
家族が食べていくために、病気の親の代わりに、戦争のため等々、テレビ番組で知るその状況にやるせない思いをした経験はないでしょうか?

しかし児童労働の最も著しい現場のひとつが、私たち日本人も大好きなチョコレートの原料、カカオ豆の生産国ガーナで行われていることを知る人はどれくらいいるでしょうか?

アフリカ西部にあるガーナ共和国は、世界第二位のカカオ生産国。そして日本のカカオ豆輸入先としては断トツの一番、8割がガーナ産です。

とすると、私たちは普段、子どもたちが学校にも行けず働き生産されたカカオを口にしていることになる…。心が痛いですね。

そんな状況を変えていきたい。質の良いカカオ豆を生産する農家を応援したい。みんなが笑顔で食べられるチョコレートが作りたい。

思いをひとつに、それぞれの専門家がバトンを渡し、新しいチョコレートが産声をあげました。


それが「ガーナスマイルカカオプレミアム」。

世界の子どもを児童労働から守るために活動する認定NPO法人ACE(エース)と、長年カカオ原料の卸に携わり、近年は何度もガーナに足を運び原料調達、販売を行っている株式会社立花商店、そしてショコラティエであり、カカオ豆からチョコレートを作る職人でもある ショコラティエ パレ ド オールの三枝俊介氏によって実現した、100%チャイルドレイバーフリーカカオ豆のチョコレートです。


ガーナスマイルカカオプレミアム ビーントゥーバ― 45g 税込1,064円

ガーナスマイルカカオプレミアム ボンボンショコラ 4個入 税込1,496円


一口にコラボレーションといっても、製品化に至る道のりは平坦ではなかったと言います。

先日行われたプレス発表会では、その経緯がトークセッションで紹介されました。

プレス発表会は、東京丸の内・新丸の内ビルディング内にあるショコラティエ パレド オール店内で行われた


「実は世界の子どもの9人にひとりが児童労働を強いられています。ガーナのあるアフリカはもっとひどいのが現実です。私たちACEは、2009年からガーナのカカオ生産地で児童労働や人身売買から子どもたちを救出し、子どもの教育や貧困農家の収入向上を支援する活動を、継続的にモニタリングをする仕組みを作りながら続けてきました。そしてこの度チャイルドレイバーフリーのカカオ豆を生産することに成功しました」と、認定NPO法人ACEの白木事務局長。

認定NPO法人ACE 白木朋子 事務局長。子どもが学校へ行ける環境を作れば、栽培技術を学び生産性をあげることにつながる。そうなれば、良質のカカオ生産が増えていくだろうと話す。


立花商店の生田渉支店長からは
「ガーナのカカオ産地には頻繁に行くが、一日だけ見学しても現実は見えない。今後世界的なカカオ不足が予測されることから、生産性をアップさせる支援の点でも、チャイルドレイバーを社会問題として考えなければならなくなってきた。ガーナは国がカカオ豆を動かし価格も管理しているので、統制がとれている反面、生産者を選べない不自由があった。そのため個性が出にくいカカオとなり、ミルクチョコレートにされることが多い。それが規制緩和によって、ようやく地域指定ができようになって、初めて100%チャイルドレイバーフリーのカカオ豆を持ってくることが出来た。味わいにもいい特徴がでるようになったと思う」

株式会社 立花商店 生田渉 東京支店長。ようやくガーナの規制緩和が実現したおかげで、100%レイバーフリーのカカオ豆を輸入することができた。しかし依然価格は自由に決められないので、生産性をアップするしかない。継続するためのモニタリングにもコストがかかる。カカオ取引はソーシャルプロジェクトになっているのだという。


そしてパレ ド オールの三枝俊介氏は
「2年前にビーントゥーバーチョコレートを始めた直後にACEさんからお話しがあり、その時点でお受けする返事をしていました。みんなが食べやすく、しかもガーナのフォラステロ種カカオの個性であるビター感を強めのロースト加減で引き出すことを目指し、カカオ分65%の割合でタブレットを作りました。パッケージデザインには、ガーナの民族衣装布ケンテの柄をモチーフに、布の質感が出るようなエンボス紙を使用し、袋のカラーはガーナの小学校の制服から発想を得ました。また、ボンボンショコラでは、ビターガナッシュにガーナ国旗のイメージを、ミルクガナッシュにはガーナのカラーイメージをデザインし、転写シートにして仕上げました」と述べられました。

ショコラティエ パレ ド オール 三枝俊介オーナーシェフ。ガーナのフォラステロ種の特徴は酸味ではない。だからローストは強めにした。皮付きのままローストし、香りを逃さないようにした。100%レイバーフリーカカオ豆が入る限り継続していくつもりで、ヴァレンタインに向けてさらに商品を強化する方向とのこと。


お話しを聞きながら出来立ての「ガーナスマイルカカオ プレミアム」、タブレットとビターのボンボンショコラを試食。

そのルックスと味わいはとてもピュア。ローストのほのかなスモーキーさ、ナッツやほうじ茶のような香ばしさ、ほろ苦さの中にかすかな酸味も感じます。また、ボンボンショコラはコーヒーキャンディのような味わいと滑らかでさらりとした口どけが印象的でした。

試食したガーナスマイルカカオ プレミアム ボンボンショコラビター(手前)とビーントゥバー(奥、試食用)。


「ガーナスマイルカカオプレミアム ビーントゥバー」と、ボンボンショコラのセット「ガーナスマイルカカオプレミアム ボンボンシショコラ」は9月22日(木)から、アルチザン パレドオール、ショコラティエ パレ ド オール全店で販売されます。

この100%チャイルドレイバーフリーチョコレートをひとつ買うごとに、児童労働をなくすための活動支援として200円がACEに寄付される仕組みになっています。

ショコラコーディネーターの市川歩美さんはこう言います。

「先日訪ねたトリノのチョコレートメーカー2社でも、なるべくチャイルドレイバーフリーのカカオ豆を使っているというお話しを聞いてはっとしました。私もその活動がもっと身近に気軽に応援できたらと思っていたので、このチョコレートを買って食べることで、少しでも貢献できるようになってうれしいです」

ショコラコーディネーター 市川歩美さん。2011年に読んだ本「チョコレートの真実」の中で、大好きなチョコレートの裏側で行われている児童労働に衝撃を受けた。ACEの活動を知り、今回のスペシャリストをつないだ。


大好きなチョコレートを、ずっとおいしく幸せに食べ続けていきたいから、カカオの国の人々にも幸せになって欲しい。今度は私たち食べ手がバトンをつなぐ番ですね。


ガーナ、アシャンティ州タノ地区で収穫された100%チャイルドレイバーフリーカカオから作られた「ガーナスマイルカカオプレミアム」は、アルチザン パレドオール、ショコラティエ パレ ド オール全店で9月22日から販売スタート。詳しくはお店のサイトをご覧ください。



ショコラティエ パレドオール
  http://www.palet-dor.com/

認定NPO法人 ACE(エース)
  http://acejapan.org/



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