取材・文 佐々木 千恵美  


残暑も厳しい8月下旬、西新宿にあるハイアット リージェンシー 東京の‘ハロウィンと秋・冬スイーツ’‘クリスマスケーキ’発表試食会に伺いました。

今や夏にクリスマスケーキを発表するのが当たり前のご時世。パティシエのみなさんは、当然その前から構想を練り試作するわけですから、夏といえどゆっくり休んでもいられないのでは。

でも逆に心に余裕のある時期だから、豊かな創作ができるっていうものでしょうか!?

そんな風に思ったのは、会場を飾るファンタジーいっぱいのスイーツ&クリスマスケーキに、心をきゅんと掴まれたからです。


会場に並べられたクリスマス&秋冬ケーキの数々。


まず目に飛び込んだのは巨大なチョコレートのクリスマスツリー。

昨年の切り株型ケーキ「ブッシュロン」の迫力をさらに上回る「クリスマスツリー」。そびえ立つ姿は高さ約40cm。佐藤浩一ペストリー・ベーカー料理長渾身の新作です。

モミの木をイメージしたツリーは、イタリア・ドモーリ社製のアリバ56%で一枚一枚丁寧に仕上げた枝葉と、白、赤、緑のオーナメントで彩られています。

「クリスマスツリー」(高さ約40cm・最大径約18cm) ¥17,000(18,360) 限定10個
運び方、切り方、食べ方まですべてがわくわくするツリー。チョコレートの枝葉は、パキパキと剥がしとりながらいただきます。

一体どうやって切り分けるのでしょう? 木こりさんのいないパーティーでは、食べやすい‘小さな薪’にする手順が知りたいところ。

「解体マニュアルをつけましょうか?」と佐藤料理長。

「ぜひそうしてください。あれこれ会話も盛り上がるに違いないですから」

こんなやり取りをした後、会がスタートしました。

各テーブルには、テタンジェのシャンパーニュと一緒に、クリスマスの新作4種のうち3種のケーキが、試食用にカットされ一皿に盛られ供されると、佐藤料理長から簡単な説明がありました。

試食用のクリスマスケーキ3種。奥が「クリスマスツリー」右が「スノーマン」左が「ノエル・ショコラ」

「今年のクリスマスは‘大人かわいい’をテーマに、新作4種を含む全7種類のケーキと、昨年に続きフランス・アルザス地方のクリスマススイーツを数種ご用意しました。特に目玉となるチョコレート系のケーキには、ドモーリ社のチョコレートを使い、それぞれ特徴のある味わいに仕立てました。ご家族、お友達とのパーティーに、お子様から大人までそれぞれ楽しんでいただけると思います」


なるほど、はじめの胸きゅんは、‘大人かわいい’仕掛けのせいだったのか!

席でくすっとなりながら、お皿のケーキを口に運びました。

まずは冒頭で紹介のクリスマスツリー、モミの木の枝葉に隠れた幹部分は、アリバ・オ・レを使ったマロン風味のガナッシュに、マロンやチェリーの酸味、軽く弾けるナッツのアクセント、シンプルな生地を重ねた4層のケーキが3段重なっているそう。外観からは、中にそんなケーキが隠れているなんて想像もつきませんが、風味はしっかりしているのに食感は軽く、口どけ良く夢心地。見た目とのギャップがとにかく楽しく、思い出に残ること間違いなしでしょう。

「クリスマスツリー」の幹にあたる部分がケーキになっている。実際はこの4層が3段重なっているというのだから、まさにパーティー向け。室温に置いておけるのも魅力です。


「実は箱をまだ考えてなくて(笑)」と佐藤氏。
持ち運びもだけれど、冷蔵庫には入らない高さでは!?

その点はご安心あれ。クリスマスツリーは常温品だそうです。暖房の直接あたらないお部屋で、パーティーが始まるまでずっと眺めていられるなんて、ちょっと幸せじゃないですか。


2つ目は、こちらを見つめる赤い鼻が可愛い「スノーマン」。
アントルメには7体のスノーマン(雪だるま)が、動きのある表情で並んでいます。ピスタチオクリームのマフラーをして、ホワイトショコラの頭を持ったスノーマンの胴体は、マスカルポーネのムースとイチゴムース、イチゴジュレにアーモンドビスキュイの誰もがほほ笑む組み合わせ。バニラ風味のビスキュイの土台に雪の積もったレンガ、ホワイトクリスマスの朝を描いた品は見ているだけでわくわくします。
食べてみると食感まで雪!? マシュマロのようなふんわり滑らかなムースに、イチゴジュレの隠し味〜ルバーブがきゅっとミルキーさを引き締め、調和のとれた味わい。さらに頭の中にはイチゴクリームがたっぷり。これぞ大人かわいい仕掛け! 参りました。

「スノーマン」(幅約10cm・長さ約20cm) ¥4,000(4,320) 限定80個
白、赤、緑の色調は永遠のもてケーキ。レンガや石に見立てたサブレもおいしそう。


3つ目は「ノエル・ショコラ」。
一歩進化させたブッシュ・ド・ノエル・ショコラ、ともいえるこちらのクリスマスケーキは100%ショコラで作られた、チョコレート好きの大人に向けた一品。ドモーリ社のアリバ独特の、濃厚でありながらくどさのない薫香を、ムースショコラ、クレムー、ガナッシュ、クルスティアンと重ねたそれぞれが、身体に沁みわたっていきます。すっと口の中で溶ける切れの良いムースと、ハラハラサラサラと崩れる土台のサブレが、雪の結晶を噛む心地にさせてくれました。深いです。ひとり分ずつが連なった切り分けやすいデザインも新しい。

「ノエル・ショコラ」(幅約8.5cm・長さ約29cm) ¥3,900(4,212) 限定50個
サンタクロースを待つ聖夜の街を描いたデコレーションも、一枚一枚カードのようになっている。さあ、どれを選びましょうか?


もうひとつの新作は、ビュッフェのコーナーにありました。「ブール・ド・ノエル」という名の、ツリーのオーナメントでもお馴染みの、ガラス玉に見立てたクリスマスケーキ。昨年のものからデザイン、内容を一新しリニューアルしたものです。

3つのブールには、ドモーリ社のチョコレートを産地別に使い、それぞれにマッチングする素材を合わせたもの。
その内容は、
左: “スル デル ラゴ”にトンカ豆のブリュレ、オレンジ風味のガナッシュ、ビスキュイショコラ・サンファリーヌ。
中央: “アリバ”にヘーゼルナッツのムースショコラとババロアにクルスティアン、ビスキュイノワゼット。
右: “サンビラーノ”にラズベリーのクリームとジュレ、ビスキュイショコラ・サンファリーヌ。
スパイシー、ナッティ、フルーティーな酸味と、それぞれのチョコレートのキャラクターを引き出す味とテクスチャーの構成はお見事。チョコレートを得意とする佐藤氏のエスプリが伝わってきます。

「ブール・ド・ノエル」(幅約8.5cm・長さ約27cm) ¥3,600(3,888) 限定80個
昨年の人気ものをリニューアル。3つのブールにすべて異なるチョコレートと素材の組み合わせは、食べ比べできるのが楽しい。


一人ひとつとすると大き目のボール、どうせなら3つとも味を全部楽しみたいのでは?

「そうなんです。実は隠れたテーマがありまして、‘シェアする’ことを前提で考えました。ブール・ド・ノエルは、みんなで取り分けてちょっとずつ違う味を楽しんで、あれこれとおしゃべりを楽しんで欲しくて」と仲村ペストリーシェフ。

「スノーマン」も「ノエル・ショコラ」もプティガトーを並べたようなデザインにしているのは、シェアする場面を含んでいるからだとか。味や食べ手の好みだけでなく、食べるシーンまでを盛り込んだハイアット リージェンシー 東京のクリスマスケーキ、流石おもてなしのプロです。

「クリスマスショートケーキ」(縦約8cm・横約12cm) ¥2,400(2,592)
定番いちごのショートケーキはカップルサイズ。

「モンブラン」(ドーム型 直径約15cm) ¥3,800(4,104)
マロンをたっぷり使った人気の味。

「ノワール」(幅約5cm・長さ約17cm) ¥2,700(2,916)
レミーマルタンV.S.O.P.とドモーリ社のチョコレートを贅沢に使った日持ちのする大人のケーキ。
ONLINE SHOP取扱商品



そしてもうひとつのテーマであるアルザスのクリスマススイーツも昨年に引き続き登場。陶器の型で焼いたお祝いの発酵菓子クグロフや、洋梨をはじめ多種多様なドライフルーツとナッツ、スパイスを、少しのパン生地でつなぎ焼いたベラベッカ、蜂蜜とスパイス、ライ麦をベースにした歴史ある焼き菓子パン・ド・エピスは日本人の口にもあうようにしっとり仕上げたオリジナルレシピによるもの。
アルザスのクリスマスに欠かせないクッキー、その中から今年登場するのがバニラキプフェル。キプフェル(ドイツ語)の意味通り、普通は三日月型に形作るところを、四角くカット成形しています。これは、ホロホロの食感を出すために、できるだけ生地をいじくり捏ねたくない理由から工夫されたもの。食べればこの儚さの虜です。

ブリオッシュ生地の中にレーズンを混ぜ込み、陶器のクグロフ型で焼き、グラニュー糖を塗したパティスリーならではのリッチな「クグロフ」。ぜひスパークリングワインと一緒に。

日本人には柚餅子を思わせるアルザスのクリスマスの伝統菓子ベラベッカ「パン・ド・ノエル」(左)は、薄く切ってホットワインと共に。またはフォアグラやチーズをのせてもおいしい。「シュトレン」(右)は、おくるみの形の他、雪玉のスタイルも登場。
いずれも ONLINE SHOP取扱商品

バニラキプフェル(手前)と新年のガレット・デ・ロワは共にスクエア型が斬新。


それからシュトレン。洋酒に漬け込んだドライフルーツやナッツを練り込んだ生地は、シナモン等スパイスの香り高くホロホロの食感。クリスマスを待つ期間、一切れずつゆっくり味の変化を楽しみたいものです。今年は雪玉のような小さめのシュトレンも登場予定とのこと。2種類を味比べするのも面白いですね。

コンフィチュール・ノエルを入れたホットワインや紅茶で、これらの焼き菓子と一緒に頂くのもおいしそう。焼き菓子は一部を除いて日持ちするので、クリスマス前のギフトやパーティーの持ち帰り菓子にもおすすめです。

コンフィチュール・ノエルは、セミドライのアンズ、レーズン、イチジク、オレンジとレモンのコンフィ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、くるみをりんごと一緒にスパイスで炊いた、風味豊かな冬の味。そのまま、またはパンにのせたり、フォアグラやお肉料理にも合うパーティーの名わき役。


ケーキの予約受付は10月20日から。受け取りは12月20日〜25日まで。
アルザス地方のクリスマススイーツは11月20日から、シュトレンは12月1日から販売です。

一部の品はオンラインショップでの販売もあるので、遠方の方もお楽しみのチャンスありですよ。

佐藤料理長(左)と仲村ペストリーシェフ(右)。今年も表現力の豊かさに一足早く酔わせていただいた。


いかがでしたか? 予約日が待ち遠しいですが、その前にやってくるハロウィンと秋・冬スイーツも見逃せません。

近頃奇抜な仮装で盛り上がりを見せるハロウィンも、佐藤料理長の手にかかれば、可愛くなりすぎず、派手すぎず、でも遊び心は忘れない大人のケーキに。

こうもり、ウィスパー、リトルデビルの3種です。


夏に人気だったジャースイーツ(蓋付きガラス容器に入ったスイーツ)も、秋冬向けのスパイステイストものが登場。クリスマスケーキの予約を待つ間、ちょっとずつ足を運んで楽しんではいかが。

ティラミス、ミルフィーユ ポム、フィグ エピセの3種です。




クリスマスケーキ概要

場所:「ペストリーショップ」(ロビーフロア・2F)
営業時間: 10:00〜21:00

<クリスマスケーキ>
ご予約期間: 2016年10月20日(木)〜12月19日(月)
お渡し期間: 2016年12月20日(火)〜12月25日(日) 11:00〜20:00

<アルザス地方のクリスマススイーツ>〈シュトレン〉
販売期間: 2016年11月20日(日)〜12月25日(日)
シュトレンは12月1日(木)より販売

の商品はONLINE SHOPでも販売いたします。
 URL: http://goo.gl/Huq6NK

詳しくはハイアット リージェンシー 東京のサイトをご覧ください。
(現在はまだクリスマスケーキなどの情報は載っていません)
 http://tokyo.regency.hyatt.com/ja/hotel/home.html




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