4月30日から5月6日まで、伊勢丹新宿店にて開催中のブラジルフェア。「アブラッソス・ド・ブラジル 〜ブラジルの抱擁〜」と題し、ブラジル本国より多彩なアイテムが展開されています。
その中のひとつとして、ひと足先に4月23日から、地下1Fのキッチンステージで開催している「ビア&ワインバル」。ブラジルの家庭料理ならこの方にお願いするのが一番と、大使からのお墨付き、陽気な日系3世、ヒラタ マリさんを招いて、ブラジルの“ほんもの”の美味しさが紹介されています。


「ここに並べたもの、全部キャッサバ芋とその粉類なのよ」。

ガラスボウルの中には、解凍された芋と、白やアイボリー色の粉粒が7種類。

右下の白い棒状のものが、キャッサバ芋の皮を剥いて冷凍したもの。白っぽいものがタピオカ粉、アイボリー色はキャッサバ粉。さらに細かく分類するとこれだけの種類に。


「ブラジルは暑いから、保存の食文化なのね。キャッサバ芋はどこでも掘れば出てくるの。でも暑いから冷蔵庫のなかった昔は3日で腐ってしまった。そこで考えたね。でんぷんを取ってタピオカ粉に、さらに乾燥させてキャッサバ粉にして・・・と」

軽快なリズムでしゃべり出す女性は、ブラジル生まれの日系3世、ヒラタ マリさん。このブラジルフェア ビア&ワインバルで、ブラジル家庭料理の数々を監修された、日本とブラジルを行き来する料理研究家&フードコーディーネーター。
およそ1時間のセミナー中、本物のブラジル食文化を熱く、わかりやすく教えてくださった笑顔の素敵な女性です。

ヒラタ マリさん。ブラジル生まれの日系3世。パリのコルドンブルーで学び、アランパッサールのもとで研鑽を積む。帰国後、サンパウロの有名ホテルでパティシエに。日本の「とらや」で和菓子を学んだ経験も。


「ブラジルには唐辛子もいっぱい種類があるのよ。もとは南米原産だもの。それがコロンブス以降世界各地に広まったの。南米原産の食べ物は他にもたくさん」と、市場の写真を見せながらブラジルの食文化を語り続けるマリさん。

野菜や果物、香辛料が世界に広まったのと反対に、新天地を求め、人々はブラジルに移民した。16世紀のポルトガル人からはじまり、農園の労働力として連れてこられた西アフリカ人、内戦を逃れてたどり着いたアラブ、イスラム系の人。イタリア人、ドイツ人、そして日本人! ごちゃまぜの国ブラジルのお料理は、これら移民が祖国から持ち込んだ食文化が、土地の食べ物と入り混じり変化していったものなのだとか。

ブラジルの唐辛子のひとつ。丸くて小さい。辛いのと辛くないものがある。

ブラジル料理に欠かせないパルミットは、ヤシの芯の部分で、タケノコとアスパラガスを合わせたような味。日本では瓶詰めが手に入る。


ブラジル料理といえば、すぐに思い浮かぶのがシュハスコ。でも、「あれは焼肉のこと!家庭料理じゃないわ」と、マリさん。

では普段親しまれているブラジルのお料理って何があるの? 今回のメニュー紹介が始まりました。

パオ・デ・ケージョ(手前)とクスクス・パウリスタ(ブラジル風クスクス)。

クスクス・パウリスタは、とうもろこしの粉とキャッサバ粉でパルミットなど野菜や鶏肉をあえ、型に入れて冷やし固めたもの。ケーキのように鮮やかな見た目が食欲をそそる。いわゆるアラブのパラパラなクスクスとは違い、プディングのような食感。

手前がエンパーダ(チキンミートパイ)。鶏もも肉、玉ねぎやピーマン、トマト、黒オリーブ、パルミットがたっぷり入った、皮がサクサクのブラジル式ミートパイ。



まずはアペタイザー・・・。
数年前に、そのもちもち感とチーズのこくで日本でも大ヒットしたパオ・デ・ケージョ。作り方を見るとシュー生地と同じ。そう、パオ・デ・ケージョは、シュー生地を作ろうとしたヨーロッパ移民が、ブラジルにはなかった小麦粉の代わりにタピオカ粉を使って焼いたのがはじまりなのだそう。

アラブ人が伝えたクスクス料理も同様、とうもろこし粉とキャッサバ粉の粒々がクスクスっぽいことからブラジルのクスクスという名前に。


サラダミスタ。パルミットやフレッシュな野菜に南国のフルーツも添え、彩りよくマンゴードレッシングであえて。

フェイジョアーダ(豆と肉の煮込み)。ブラジルで一番有名な料理、黒豆のシチュー、ブラジル人のパワーの素。玉ねぎと油で炒め炊いたブラジル風ライス、ケール炒め、フレッシュサルサ、キャッサバ粉を炒めて作るファロファー、オレンジを一皿に盛り、唐辛子をお好みでアクセントに。

別盛りで供されるフェイジョアーダは、黒豆(大豆の仲間の日本の黒豆とは違い、こちらはいんげんの仲間)とベーコン、豚足、ソーセージ、玉ねぎ、にんにくなどと煮込んだボリューム満点のシチュー。

フェイジョアーダは全部のっけてまぜて食べること。



そしてメインは・・・
レストランのカレーのように、ライスと別に盛られてきたフェイジョアーダ。ブラジルで最もポピュラーなこの料理は、例えるならカスレのような、お豆と様々な肉類のごった煮。ちなみにいんげん豆は中南米原産。南米人は無類の豆食い、豆が食卓にのぼらない日はないらしい。肉と野菜の旨みをぎゅっと吸いこみ、とろとろになったお豆をご飯とおかずのように、日本式にちょっとずつ食べようとすると、

「それじゃだめ。一度に全部、ご飯の上にかけてお皿全部を混ぜて食べるのよ!」。

マリさんの食べ方指導が入りました。あらら、なんだかビビンバを食べるような雰囲気。でもこれが美味しいのなんのって! ケールの歯ごたえ、サルサの酸味とフレッシュ感、おからのような、ふりかけのような香ばしいファロファー、こってりした味の口直しにオレンジと、ひと口掬う度に違ったごちゃ混ぜ味が楽しい、病みつき。そして気付けばお腹がパンパンに。

「だから、どっしり胃に残るフェイジョアーダはお休みの前、土曜に食べるの」。

マリさん曰く、ブラジル人はこの3倍は普通に平らげるとのこと。さすが太っていることが「健康的」と表現される国だけありますね!


アサイー・ナ・ティジェラ(アサイーボウル)。アマゾンのスーパーフルーツ、アサイーをバナナとはちみつで食べやすく、さらに自家製グラノーラのトッピングで、とろとろカリカリが楽しめる。

プジン・デ・マラクジャ(パッションフルーツプリン)。パッションフルーツ、牛乳とコンデンスミルクを混ぜ、蒸し焼きしたプリンは、甘みと酸味が交差するブラジルの家庭の味。


デザートは、サッカー選手の強さの源として日本でもすっかり有名になった紫色のフルーツ、アサイーを、これまた話題のグラノーラと合わせたアサイー・ナ・ティジェラ(アサイーボウル)。一見ベリーのようですが、実は椰子の実の一種。酸味はほとんど感じずトロピカルムード満点。懐かしさを好むなら、コンデンスミルクとパッションフルーツで作った固めのプリンがおすすめ。ちなみに南米の家庭にはコンデンスミルクのストックが不可欠なほど、頻繁に使うそう。

6月にはサッカー・ワールドカップがいよいよ開幕する。縁があるのに遠い国・ブラジルの食文化に触れ、身近に感じ、ぜひとも両国の戦いを盛り上げたいですね。


*ブラジルの衣・食・住を様々に紹介する催事「アブラッソス・ド・ブラジル 〜ブラジルの抱擁〜」は、2014年4月30日から5月6日までの開催となります。

 ■ 伊勢丹新宿店公式サイト
 http://www.isetan.co.jp/icm2/jsp/store/shinjuku/index.jsp





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