取材・文 下園 昌江  


ホテル雅叙園東京に、新しいパティスリーショップ「栞杏1928」が2017年9月1日にオープンしました。
店名の「栞杏」は、フランス語で「つなぐ」「絆」を意味するLien(リアン)に由来します。「栞」は道標の意味があり、ギフトを通じて大切な人に気持ちを伝えてほしいという願い、「杏」は「木」の下に「口」といいう組み合わせから、美味しいものが実るという意味を持ちます。その2つに雅叙園の創業年である1928を併せ、伝統に敬意を払いながら新たな菓子作りを心掛けるパティシエの想いが表現されています。


和モダンな雰囲気の店舗

生野剛哉(しょうの たけや)シェフ

ペストリー料理長を務めるのは生野剛哉(しょうの たけや)氏。川崎日航ホテルやパンパシフィックホテル横浜(現・横浜ベイホテル東急)などを経て2006年にパティスリー葉山庵統括パティシエに就任。その後、ラヴィマーナ神戸やホテル日航東京(現・ヒルトン東京お台場)にてペストリーシェフに就任。2016年5月よりホテル雅叙園東京ペストリー料理長に就任し、「シンプルに素材を生かしたスイーツ作り」をモットーに活躍しています。


栞杏1928では、様々なお菓子が揃います。今回は特に注目したいお菓子を種類別にご紹介していきたいと思います。


【生菓子】

シシリアン

プティガトーは約15種類をそろえ、生野シェフが20年以上変わらず作り続けているシシリー産ピスタチオが主役の「シシリアン」をはじめ、季節や和を意識したお菓子が並びます。シシリアンはアーモンドとピスタチオを組み合わせた7層にもなるお菓子で、ナッツの香ばしさとコクを感じるケーキです。定番ケーキですがこれからの季節に更に美味しく感じる味わいです。


紅葉 左から和栗モンブラン、紅葉、抹茶ほのか

秋らしいお菓子で注目したいのが、まるで和菓子のような佇まいの「紅葉」。生野シェフが神戸に住んでいた際に、六甲山の美しい紅葉に感動し、それをイメージしたお菓子を作りたいとかたちにしたものです。本物の紅葉の様な美しいグラデーションは、えびすカボチャを使用しています。かぼちゃの自然な甘みをほんのりシナモンと甘さをおさえた白餡で引き出しています。

この他にも、和栗モンブランや抹茶ほのかなどの和を感じさせるお菓子が印象的です。



【ショコラ】

ボンボンショコラ 生チョコレート

パティスリー栞杏1928で、特徴的なのはショコラのバリエーションが豊富なこと。
見た目にも美しいボンボンショコラは、フランス産クーベルチュールを使用し、柚子や紫蘇、生姜などの和素材のものと合わせて個性的な味を揃えています。

生チョコレートは、「枯山水シリーズ」として、3種類の展開があります。
「枯山水・薄墨(黒胡麻和三盆)」は、ホワイトチョコレートをベースに黒胡麻のペーストを練り合わせ、黒胡麻の香ばしさと濃厚な風味が広がります。
「枯山水・新緑(東京抹茶)」は、見た目通り抹茶が主役ですがそれを引き立てるために酒粕を入れているので後味の余韻が強く残ります。
「枯山水・赤銅(モルトウイスキー)」は、チョコレートにウイスキーを加えるほかに、ウイスキーオークのチップをスモークし、ココアに香りを移しているため、ウイスキーの芳醇な香りが鼻に抜けていきます。この手法は初めて伺いましたがとてもユニークですね!


欄間の「孔雀」 天井画の「烏帽子・花髪飾りの女」

ホテル雅叙園東京内には、数々の伝統美術が現在も残されていますが、それをモチーフにしたボンボンショコラが、天井画ショコラ「竹林」です。ホテル内4階和室宴会場の「竹林」の天井や欄間を飾る日本画5つをボンボンショコラで表現しています。


天井画ショコラ「竹林」 手毬チョコ

天井画の独特の色彩を転写シートで表現するのは非常に大変で、メーカーさんに協力してもらいながら何度も何度も試作を繰り返して完成したそうです。

また、リアルな造形に驚くのがチョコレートで作られた「手毬チョコ」。本物の手毬をじっくり観察して作り上げたという手の混んだ1品。大きな手毬はヘーゼルナッツのガナッシュ、小さな手毬は抹茶のガナッシュ入りです。

天井画ショコラ「竹林」も手毬ショコラも、どちらも日本の伝統を感じるもので、海外のお客様への贈り物としても喜ばれそうですね。


【焼き菓子】

パウンドケーキ3種類

焼き菓子は、パウンドケーキをはじめ、クッキーやマドレーヌ、フィナンシェなどがありますが、是非おすすめしたいのがギフトにピッタリのパウンドケーキです。

定番のパウンドケーキは3種類。北欧紅茶のセーデルブレンドを使用した「北欧紅茶のパウンドケーキ」、ほんのりスパイシーな「胡桃シナモンのパウンドケーキ」、東京青梅の抹茶を使用した「東京抹茶とかのこ豆のパウンドケーキ」があります。

特におすすめなのが、北欧紅茶のパウンドケーキ。ノーベル賞授賞式の晩餐会でもふるまわれるというセーデルブレンドを使用し、華やかで上品な香りが広がります。

栞杏1928は、ホテル雅叙園東京の歴史や伝統文化を感じられるお菓子が非常に印象的でした。シェフ曰く、「この建物の中にいると勝手にインスピレーションが生まれてくるんです。ふっと思いついたことはすぐ記録してお菓子作りに活かしています。」とのことでした。やはり歴史や素晴らしい芸術が作り出す環境というのはモノづくりをする人にとって大きな影響を与えるのだな、と感じました。

今まで、雅叙園というと結婚式会場としてのイメージが強かった方も多いと思いますが、最近はレストランのオープンや展示会も多く気軽にふらっと立ち寄れるホテルとして新たな歴史を刻みつつあります。是非新しく誕生したパティスリーにも立ち寄ってみてはいかがでしょうか?



ショップ概要
名称  PATISSERIE 「栞杏1928」(パティスリー リアン1928)
住所  東京都目黒区下目黒1-8-1
営業時間 10:00〜20:00
Tel   03-5434-5230(直通)




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