Text by Chiemi Sasaki  


東京の中のフランス〜神楽坂。坂道と小さな店が点在する路地裏と石畳、それらが入り組んだ小道に一軒のフランス料理店があります。リヨンスタイルのレストラン「ルグドゥノム・ブション・リヨネ」。リヨン生まれのクリストフ・ポコシェフが2007年、この温もりあふれる神楽坂に開いた故郷リヨンの料理屋です。お料理はもちろんのこと、店内を彩る螺旋階段、木製の錫トップのカウンター、エミール・ガレのアール・デコのライト、ポスターなど本場さながらの雰囲気は、日本人のみならず、故郷を懐かしむ日本在住フランス人たちの拠り所となっています。

フランスと日本の有名店やコルドンブルー講師など数々の経歴を持ち、活躍し続けるルグドゥノム・ブション・リヨネのクリストフ・ポコシェフ。


そんなルグドゥノム・ブション・リヨネで1月末日、スペシャルなディナー企画がありました。ポコシェフの友人でもある有名フランス人ショコラティエ5人を招き、「Lyon-Paris-Tokyo Chocolat Dinner」を開催するというものです。セバスチャン・ブイエ氏、フィリップ・ベルナション氏、ステファン・ボナ氏、アルノー・ラエール氏、ヴァンサン・ゲルレ氏がサロン・デュ・ショコラで来日中に、お店に招き、お店のスペシャル料理に彼らのレシピによるデザートやショコラがいただけるという夢のような一夜。数年前から開催され、毎年常連さんですぐに満席になるという席に、今年は運よく着くことが出来たので、その様子を紹介したいと思います。

「Lyon-Paris-Tokyo Chocolat Dinner」のメニュー。


まずは、お店自慢の冬のスペシャル料理をコース仕立てで…。

アミューズは豚の皮のパリパリのクルスティヤンとスプーンに一口のレンズ豆のサラダ。
豚皮はエアリーな食感。お酒が進みそうです。

豚の皮のパリパリのクルスティヤンとレンズ豆のサラダ。このワンプレートは3名分。


自家製リヨン風ソーセージのルグドゥノム・ブション・リヨネスタイル
厚さ1cmほどにスライスされたソーセージがかわいらしいバーガーに。旨みの凝縮したフルーツトマトと交互に、2つのバーガーもぺろり。

自家製リヨン風ソーセージのルグドゥノム・ブション・リヨネスタイル。直径3〜4cmほどのバンズで挟んだレタスとソーセージのコンビネーションがたまらない。この2つが一人分!


エスカルゴとキノコのフリカッセ 66℃の玉子 赤ワインソース
ぷりぷりのエスカルゴとキノコの食感に、絶妙な温度で仕上げられた半透明の卵が2つ目のソースとなって濃厚な味わいに。

エスカルゴとキノコのフリカッセ 66℃の玉子 赤ワインソース。ひとつひとつが丁寧に仕上げられた伝統料理は美しく癖になる。散りばめられたクルトンのカリカリも影の引き立て役。


ブーダン・ブラン トリュフ風味 栗とキノコ添えて
白身のお肉やミルク、玉ねぎなどをミンチにして腸詰にしたブーダン・ブランは、この栗とキノコのソースに相性抜群。ブーダンにも入っている黒トリュフを、オプションでさらに上からスライストッピングに。その官能的な香りといったら、付け合わせのじゃがいものピューレにまで及んでいました。

黒トリュフはお米の上で保存すると、お米に香りがつく。
ブーダンの上にトッピングするトリュフを計りながらスライスするポコシェフ。
トリュフで覆われ、一層香しくなったブーダン・ブラン トリュフ風味 栗とキノコ添えて。


セルベール・ド・カニュ(リヨン地方の白いチーズ)
かつてリヨンの主要産業である絹織物職人が好んで食べていたというチーズ。フロマージュ・ブランに香草やニンニク、塩コショウ、オイルなどを混ぜ調味したリヨンのビストロのマストアイテム。ほどよい酸味とスパイシーさでパンにのせていただくと癖になります。

セルベール・ド・カニュ(リヨン地方の白いチーズ)

時刻は21時過ぎ。サロン・デュ・ショコラ会場の仕事を終えたショコラティエたちが、お店にあらわれました。再びコックコートに着替えた彼らは、カウンターで仲良くグラスを傾けおしゃべり&リラックスな様子。そう、ここは講習会会場とかではなく、彼らにとってはアフター8を楽しむ場。こんなシーンを共有できることがかえって特別なことなのです。

到着したショコラティエ3人。左からヴァンサン・ゲルレ氏、セバスチャン・ブイエ氏、フィリップ・ベルナション氏。ラエール氏はこの後来店。


そしてお店は、彼らの用意したB.B.B.L.G.による、特別ショコラデザートをサーヴィスし始めました。

まずはセバスチャン・ブイエ氏の皿盛りデザート。ブイエ氏直々に書いていただいた名前はMousse chocolat Vietnam et Huile d'olive, Sorbet Mure, Sauce Caramel et Balsamique, Crumble chocolat, Croustillant Gianduja Framboise。
ミュールの紅茶風味の薄い筒生地の中にオリーブオイルで作ったヴェトナム産ショコラのムース。左側にはカシス、ブラックベリ―など赤いフルーツのソルベ、その間に散らしてあるのがショコラのクランブルとキャラメルバルサミコソース。ムースは口当たりが軽く繊細、すっと溶けてなくなった後、ほんのりオリーブオイルが香ります。それにフルーティーなヴェトナム産カカオに赤いフルーツやバルサミコの酸味が絡み合い、サクサク食感も加わってどんどん食べ進んでしまいます。それによく見ると、筒がカカオの花が咲く木、そしてソルベがカカオの実に見えます! 話を伺うと、ヴェトナムのカカオ農園を訪問されたこと、リヨンの本店で出しているオリヴィエ(L'olivier)というガトーをデザート仕立てにしたとのこと。南仏との境界リヨンでも、オリーブオイルで軽く仕立てるガトーはもう珍しくないのでしょうか? とにかく印象に残った一皿でした。

ブイエ氏考案のオリヴィエ(L'olivier)というガトーのデザート版。

次はボナ氏によるスワンシュー。メキシコ、ソコヌスコ産のカカオを使ったホイップクリームといちごとパッションフルーツのコンフィチュール、カスタードクリームが、サクッと焼かれたシュー生地に詰めてありました。残念ながらボナさんご本人は体調不良のため欠席でしたが、今どきのエクレールじゃなくて、ブラックスワンに仕上げるところがボナさん流!? 思わずにっこり、ごちそうさまです。

ボナ氏考案のソコヌスコ産のカカオクリームのスワン。

ミニャルディーズは、ラエール氏のマロンクリーム&フルーツのパート・ド・フリュイ入りショコラ「ボワット・モンブラン」から一人2種類。私たちのところはパッションフルーツ、柚子。モンブランをデザインしたトップがかわいいけれど、食べるとはっきり栗の味! 酸味のフルーツと合わせるモンブランのスタイルをそのままショコラにするなんて、モンブラン大好きな日本人の心を鷲掴みです。

アルノー氏のボンボンショコラ「ボワット・モンブラン」から、緑が柚子、イエローがパッションフルーツ。二人分をワンプレートで。

そしてベルナション氏からはパレドオールの3個入りBOX、ゲルレ氏からはプティブールの入ったコフレ‘Kawaii’をお土産にいただきました。いずれもこのディナーのために用意してくれた貴重品。

ベルナション氏のパレドオールの3個入りBOX、ゲルレ氏のコフレ‘Kawaii’。

デザートを食べ終えた頃になると、みなさん写真やサイン、お話しで世界のトップショコラティエとのひと時を楽しみました。気付けば時計は23時過ぎ。ほとんどのお客様はいなくなりましたが…寒いのに、お店の外では一部のお客様とショコラティエ達のおしゃべりが絶えません。やっと彼らにとって本当のプライヴェートタイムとなったようです。ボンヌニュイ(おやすみなさい)! 素敵なひとときをありがとう。

カウンターで飲みながらサインに応えるショコラティエ達。




この「Lyon-Paris-Tokyo Chocolat Dinner」は、サロン・デュ・ショコラとは関係なく、ルグドゥノム・ブション・リヨネ独自の企画です。

ルグドゥノム・ブション・リヨネの公式サイトとfacebook
 http://www.lyondelyon.com/
 https://www.facebook.com/LUGDUNUM-Bouchon-Lyonnais-320401239916/



Panaderia TOPへ戻る