取材・文 佐々木 千恵美  


11月某日、青山のおしゃれなイベント会場で、ラ・メゾン・デュ・ショコラの新作発表会「NEW COLLECTION PREVIEW CAVIAR&VODKA, 2016CHRISTMAS, 2017VALENTINE」が行われました。

入り口でテタンジェのシャンパーニュを受け取り見渡すと、テーブルはテーマ別にCAVIAR&VODKA, 2016CHRISTMAS, 2017VALENTINEの3つの島に分かれていました。ショコラはもちろん、パッケージから演出まで、そのどれもが美しく、しばしうっとり。チョコレートは食べるアート! ラ・メゾン・デュ・ショコラほどこの言葉がぴったりなショコラティエはないのでは。


CAVIAR&VODKA

2016CHRISTMAS のディスプレイ

2017VALENTINEのディスプレイ


会場の照明が落とされいよいよお披露目会のスタート。ジャパン・ディレクターのフレデリック・ジェダ氏からお話しがありました。

「ショコラ界では昨今Bean to barが世界的に騒がれていますが、ラ・メゾン・デュ・ショコラがずっと大事にしているのはチョコレートのブレンディングです。例えば新しいフレーバーのガナッシュにふさわしいクーヴェルチュールを作るには、どのカカオをどんな割合で配合していけばいいのか、そのブレンドのノウハウと技術こそ私たちの宝なのです。」

ラ・メゾン・デュ・ショコラ ジャパン・ディレクターのフレデリック・ジェダ氏


なるほど、味覚の着地点を頭に描きつつ配合をする点は、様々なストックワインをブレンドしてメゾン独自の味を毎年作り続けるシャンパーニュや、コーヒー、紅茶のブレンド術にも通じます。ブレンディングとは、カカオ豆を加工してあるがままを受け入れることと違い、熟練とセンスと時間がとてつもなく要求されることなのです。

「そしてこの度、シェフ・パティシエ・ショコラティエ、二コラ・クロワゾーと私どもは1年という歳月をかけて、今までありそうでなかったショコラを創りあげました。それがキャビアとウォッカのショコラです。」

今回のショコラのために手を組んだのがフランス流キャビアの老舗「メゾン・ペトロシアン」。それだけで貴重なチョウザメの卵は、最上の卵だからといってそのまま最上のキャビアになるわけではなく、熟練のキャビアロローグ(キャビア専門家)の手がかけられ、はじめて最高級のキャビアとなるそうです。

高みを極めた2つのクラフトマンシップが、意表をつく美味しさ、ショコラの豊かな表現力を一層広げた作品〜それが、11月3日〜限定販売の「キャビア&ウォッカ」。ガルーシャ仕立てのパッケージがノーブルな質感。パーティーにひと箱あるだけで、テーブルが華やかになりますね。

キャビア&ウォッカ 20粒入り  6856円
ペトロシアンのキャビアをドライにして生クリームに抽出したガナッシュは、粒がなくてもしっかりキャビアを感じる官能的な一粒。まずはドライなプレミアムウォッカの一粒で舌の準備をして。各10粒 計20粒入り


「まずはウォッカのショコラで舌の準備を整えてからキャビアのショコラを召上ってください。」

おすすめ通りウォッカショコラの次に、指先のキャビアショコラを半分口に運んでみました。するとどうでしょう。口のなかに潮がゆっくり満ちてくるではないですか。キャビアを思い切り食べる経験はそうないですから、身近な例えでいうと生牡蠣の殻をすすったときのようなミネラル感。ちょっぴりエロティックな滴り。その背後にヘーゼルナッツ&アーモンドプラリネのナッティな旨みとカカオがあらわれます。ほんの10数年前まで塩入りショコラが珍しかったのに、それが遠い昔のように感じさせる余韻。そして今、キャビアとショコラに共通する香りがあることを知るとは! このショコラはスイーツなのか、料理なのか、そんな括りを超え、新しい扉が開いた瞬間でした。

昨年の野菜ショコラ「エスプリ サレ」に続く、ラ・メゾン・デュ・ショコラのありそうでなかったショコラ。革新が伝統を継いでいく、食べながらそんなことが頭に浮かんだのでした。


今年のクリスマスコレクションはモミのツリーに見立てた「サパン エクストラヴァガンス ショコラ」、5つの新作レシピからなるボンボン ドゥ ショコラコレクションの「フランボワイヤン」。

金箔やサテンなどをふんだんに使い、一枚のコントラストを考えた貼り付け、技巧にため息が出る「エクストラヴァガンス」。長年メゾンでデコレーション部門の責任者を務めた二コラ・クロワゾー氏ならではのアートピースです。その「サパン エクストラヴァガンス ショコラ」をデザインしたパッケージ入りの「フランボワイヤン」には、ライム&ジンジャー、パッションフルーツやライチ、スパイシーなグレナダ産カカオのガナッシュ、スペキュロススパイスのプラリネといった、いきいきとした香りが封じ込められています。フランボワイヤン(炎)を連想するフレーバーが年の瀬にぴったりですね。



ヴェルティージュ  4320円
4種類のカカオの特徴がもたらすアロマをツリーの形で

フランボワイヤン 15粒入5562円/ 32粒入9612円/ 66粒入16038円
ガナッシュ グルナッド、ノアール パッション&リチ、ガーナ シトロン、ペタル クルスティヤン、プラリネ スペキュロスの新作5種類詰め合わせ

ショコラカレンダー2016  9180円
毎日一つずつ扉を開けてクリスマスをカウントダウン


会場を飾ったサパン エクストラヴァガンス ショコラは高さ75cm、重さ7.7kg。6種類の異なるクーヴェルチュールからなる厚さ3mmのチョコレートプレート25枚でできたツリーは非売品。緻密な細部を見るにつけ、きっと値段がつけられないのだろうと想像します。




アートと呼ぶにふさわしいサパン エクストラヴァガンス ショコラ(非売品)


そして、2017年ヴァレンタインコレクションのテーマは、「ランデヴー ア パリ」。パリでのデートを一日のストーリーに見立て、4つのシーンをショコラに描いたもの。朝の「アン キャフェ」(コーヒーをひとつ)、午前中は「フルール プレズィール」(お花を、ただ楽しむために)、午後は「パリ スクレ」(秘密のパリ)、最後は夜の「コクテル シック」(一日の終わりのカクテル)といったネーミングで、それぞれに‘ハワイアン・コーヒーとクレープ・ダンテルの朝食’、‘フランボワーズとスミレの花、オールドローズのブーケ’、‘祭日の公園でおなじみのリンゴ飴’、‘アプリコットペーストにローズマリーとレモンバジル、レモンピール’の風味が閉じ込められています。


Rendez-vous a Paris2017_アン キャフェ
ハワイアン・コーヒー風味のアーモンドプラリネとクレープ・ダンテル

Rendez-vous a Paris2017_フルール プレズィール
バラとスミレ、フランボワーズ風味のダークガナッシュ。花束をプレゼントされた喜びが口いっぱいに広がります

Rendez-vous a Paris2017_パリ スクレ
甘酸っぱいリンゴのコンポートのミルクチョコレート。ありそうでなかったりんごそのものの質感がうれしい

Rendez-vous a Paris2017_コクテル シック
アプリコットのペーストに重ねた、レモンとローズマリー、レモンバジル風味のダークガナッシュ。一日の終わりに食べたいドライ&スィートなカクテル


いずれも時間差で現れるフレーバーと食感が二重奏、三重奏となり、いつまでも心に残ります。特にリンゴ飴をイメージしたパリ スクレのコンポートは、日本人にとって幸せなひと時を描くことができる味。ああ、なんて楽しいデートなんでしょう!


屋台のリンゴ飴を頬張る幸せなひとときをショコラで


パリの街がシルエットで描かれた真っ赤なパッケージ。それを留める白い帯は愛の南京錠のかけられた橋。物語は箱を受け取ったときから始まるのです。ランデヴー ア パリは2017年1月中旬から販売予定。店頭に登場するのが待ち遠しいですね。


ランデヴー ア パリ  5粒入 2187円/ 9粒入 3510円/ 18粒入 5400円/ 30粒入 8208円
パリのデートをイメージした心憎いパッケージ。2017年1月中旬販売予定


口の中でとけると同時に心をとかしていくラ・メゾン・デュ・ショコラ、二コラ・クロワゾーの新しいコレクションたち。ショコラの枠を超えたクリエイションに恍惚とせずにはいられません。




ラ・メゾン・デュ・ショコラ
 http://www.lamaisonduchocolat.co.jp




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